つふたたび、すっかり汗だくになってしまったおれたちは、もう一度、シャワーを浴び、洗いあいっこする。

「もう~~。大ちゃんが、悪いんだからねっ!!お腹、空いてたのに・・・・・・。」

そう。飢えと、渇きで目が覚めたのだ。
結局、まだ水分補給しかしていなくて・・・・・。

窓の外は、とっぷりと、日が暮れ、星が瞬き始めていた。

「悪い、悪い・・・・・。ちゃんと、セーブ、しただろ??」

「した・・・・かなあ・・・・??」

なんだか、とってもエロティックな気分になったのに・・・・・。
水に濡れた大ちゃんが、きっと色っぽすぎたからだ。


「何はともあれ・・・・・。メシ、行こっ!!」

ルームキーを、かちゃりと人差し指に引っ掛け、腕を引っ張られる。

「そうだねっ。あの、レストランで夜ご飯、楽しみ~~~~!!!」


ビーチ際の屋根のない席に案内される。

テーブルには、蘭の花が、芳醇な甘い香りを放っていて、ゆらゆらとろうそくが揺らめいている。


「ん・・・・??メニューが、ない・・・・・・。」

ボーイさんが、お皿を二枚、持ってきてくれる。英語で、何やら説明してくれる。
・・・・・あ。バーベキューだけ、聞き取れた・・・・・。

お皿を持って、センターテーブルまで行くと・・・・・。


「うわあああっ!!びっくり、したあ・・・・・・。」


豚の、丸焼きが、テデーンと、テーブルの上に乗っかっている。

しっかり、お顔までついていて・・・・・・。ナイフで、自分で肉を削ぎとってどうぞ、ということらしい。

「いやあっ。こっち、みてるよお。だいちゃん、こわいい・・・・。」

だいちゃんの後ろに隠れ、でもちょっと怖いもの見たさで影からのぞく。

「大丈夫だよ。・・・・・むしろ、うまそう??」

背中にがっしりとしがみついたまま、スマートに肉を切り分けるだいちゃんの手つきに惚れ直す。
・・・・・・やっぱり、かっこいい・・・・・・。



テーブルに戻り、すっかりただの豚肉、になったしまったお肉たちを口に放りこむ。

「あ。外はカリカリ。中はじゅわ~~で、美味しいね。」

「・・・・・俺が、取ってきたからな。」

「うんっ!!大ちゃんが、切ってくれたから、美味しさ、倍増だね!!!」


-----------その時。

フッと・・・・・照明が落ちる。

明かりといえば、ゆらめくろうそくだけ・・・・・・。

「・・・・えっ?えっ?停電?・・・・・それとも、演出??」

ボーイさんたちは、カウンターに置いてあったランプを、各テーブルに配り出す。

「停電、みたいだな・・・・・。」

よくあることなのか、ボーイさんも、お客さんも慌てることなく当たり前のように過ごしている。

「見ろよ、まお・・・・・・。」

大ちゃんの指差す方向を見て、はっと息を呑む・・・・・・・。


星屑の海の中にいるような、満天の星空・・・・・・。

小さな光の粒を、ぶちまけたように、水平線の彼方まで続いていて・・・・・。

光が、海に反射してキラキラと光っていて。
いったい、どこまでが空なのか、どこからが、海なのか、わからないぐらい。

「す・ごい・・・・・・。」

あまりの感動に、声もでない。

す------っと、一筋の光が、はしる。

「あ。流れ星・・・・・・。」

初めて、見た。東京じゃ、そうそう見れないもんなあ・・・・・・。
あっ!!願い事、忘れてたっ!!

「だいちゃん、願い事っ・・・・!!」

「俺の願い事は、目の前にあるよ・・・・。まお・・・・・。」

ろうそくの光に、ゆらゆらと照らされるダイチャンの顔は、とろけそうに甘くて。
ほお杖をつきながら、愛しそうに、おれを見つめている。


「あいしてる・・・・。まお・・・・・。」

テーブル越しに、片手を伸ばされ、ほほを包み込まれ・・・・・・。
もう片方の手で、手首をすくいとられると、そっとその薬指にキスをされた・・・・・・。

「まおが、目の前にいてくれる。それだけで、十分だよ・・・・・・。」

「だいちゃん・・・・・・。」


・・・・あ。ダメだ・・・・・。うれしくって、涙腺が、ゆるむ・・・・・・。

「泣いて、いい・・・・・??」

我慢しきれず、テーブルの上に置いてあったナプキンで、そっと涙をぬぐった。