その、二日後の朝・・・・・・・・・・。


「ワタナベ部長。おはようございま~す。」

珍しく、髪が乱れ、目が充血して、あくびをかみ締めながら、挨拶をする馬場先生。

今日は、たしか馬場先生じゃなくて、まおが、当直だったのに・・・・・・。


-----------まおは、どうした??


「・・・・あれ?馬場先生、とまりだったの?
昨日は、浜尾先生が、当直じゃなかった??」

「・・・・・あれ?先生、知らないんだ?」

わざとらしい、問いかけ。


だって・・・・。あのまま、車で一緒に帰って。

仲直りの、濃密な夜を過ごして。

次の日の朝まで、この腕の中にいたのだ・・・・・・。

「休みだけど病院に行ってくる。気になる人が、いるから。」と笑顔のまおを送り出したところだ。

昨日の、朝のできごとなのに・・・・・・。

なんで、馬場先生が知っていて、俺が、知らないことがあるんだ??


「・・・・・知らないって・・・・・何を??」


「・・・・昨日、双子ちゃんが亡くなってね・・・・・。というか、もう、止められない状態だったから、
お腹の中で、死ぬのを待つより、人工的に産んであげようって話になって・・・・。

遅かれ、早かれ、の問題だったけど、
生まれた時には、まだ息があった・・・・・。それを、何もせずに見ているのが、浜尾先生は
耐えられなかったみたい・・・・・・・・。

-----------で、一日中、病院にいて。
そんな危なっかしい状態で、当直なんてさせられないから。
俺が、変わったんです。」

「じゃあ。先生、まる二日・・・・・・??」

「・・・・・まあ。教育係だから、しかたないですね。」


・・・・・・・・・どうしてだ。まお。

そんな辛いことがあったなら、俺を頼ってくれればいいのに。
仕事のことだから??

仕事と、プライベートは、使い分けてる、とでも、言うのか??
まおが、辛い時に、一番そばにいてやりたいのに・・・・・・・・・・・・。


「ほら。うわさをすれば・・・・・だ。」

結局、まおは昨日、家に帰っていないらしい。

表情のない顔。真っ赤に泣きはらした目。焦点の合わない、視線・・・・・・・。

「・・・・ま・・・・浜尾先生?大丈夫か・・・・・??
昨日は、ちゃんと眠れた・・・・・・?食事は・・・・・・・・・・??」

「いえ・・・・・・。ありがとう、ございます・・・・・・・。」

かすれている、声・・・・・。

まさに、心ここにあらずって感じで。


「ちょっと、向こうに行って、休もう?・・・・・な?」


医局前の、仮眠室まで、ふらふらした足取りのまおの脇をささえながら、歩いてゆく。


廊下で、滝口先生と、すれちがった。


「・・・・・・・あれ?浜尾先生、体調悪いんですか??」

俺と、まおを交互にみやりながら、滝口先生が、反対側の脇をささえてくれる。

「ん・・・・・ちょっとな・・・・・・。昨日、いろいろあったみたい・・・・・・。」