------------あたりは、夕闇にうっすらと隠れようとしていた。



「・・・・・・・さっ。そろそろ帰るか。
現役高校生を、あんまり遅く帰せないからな・・・・・・。」

「うん・・・・・。」


「・・・・・大丈夫だよ?・・・まお。俺がついてるし。ちゃんと、フォローする。
・・・誰だって、初めての経験があるんだから。

緊張しないほうが、おかしいし、
緊張してるってことは、役に一生懸命取り組んでるってことだろ??」



-------------さすが、部長。
ぼくの不安なんて、全てお見通しなんだね。



「大丈夫だよ・・・。こんな、一生懸命のまお、嫌うやつなんて絶対にいないから。
まおは、まおらしく、精一杯タクミを演じればいいんだから。

・・・・・・・・どんなタクミでも、ギイの俺が受け止めてやる。」



ううっわあ~~~。なんか、プロポーズみたい。


・・・・・・でも、うれしい。


そうやって、こんな新人の僕のことを、気遣ってくれて。


-------------なんだか、照れてしまって、近くにあった大きな木に寄りかかった。



--------------------途端。


・・・・・流れてくる、キラキラしたイメージ。

あの日の、トキメキ。

触れ合った手からの、安心感。

初夏の木漏れ日に輝く笑顔・・・・・・。


ワタナベサン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



衝撃が、全身をかけめぐる。


・・・・・・・・・・・・もしかして、ワタナベサンって・・・・・。


僕は、震える声で、問う。


「ねえ・・・。部長。
この木の声・・・・・・・、聞いて?」

部長が、驚きの表情で、僕をじっと見つめる。

「まお。もしかしてお前・・・・・・・・。」



二人で大きな大木を、しっかりと抱きしめる。手の先が、触れ合う・・・・。



コポ。コポ。コポ・・・・・・・・・。


水の流れる音。

この木の、息遣い。

たくさんの、流れてくるイメージ・・・・・。

そして、あの日のワタナベサンと僕・・・・・・・・・・。