--------------あれから、6年の月日が流れた。

僕は、新人俳優として、現役高校生として、忙しい毎日を送っている。


いつか、あの時に出逢ったワタナベサンと再会できる事を信じて・・・・。



「虹色の硝子」の相手役が、部長だと決まった。

二人で、「春風にささやいて」も一緒に見た。

たくみが、僕で。

ギイが、部長で・・・・・・。


なんか、まだ実感沸かないなあ・・・・。


部長が、恋人かあ・・・・・。しかも、あんな・・・・・こと、できるかなあ??



------------------オフの日の昼下がり。

僕はベッドにゴロゴロと寝そべりながら、そんなことをつらつらと考えていた。

-------突然、携帯が鳴る。


「もしもし?」

「おっ!!まお。お前、台本、全部読んだ??
お前、映画初めてで、主演初めてだろ??・・・・・・・大丈夫か?
俺、今から時間空くから、セリフ合わせ、つきあおっか??」

「わあ!いいんですか?」


やさしい、部長。

デビューして間もない、ただただ一生懸命なだけの僕をいつも、気遣ってくれる。

・・・・・・部長が相手役で、よかった・・・・。

人見知りの僕が、初対面の人と恋人同士なんて・・・・・考えられない。



「じゃあ、あそこの公園で待ち合わせでも、するか。」


午後からは、人気の少ない、近所の公園。
緑がいっぱいあって、落ち着く場所なので、一人で時々散歩に行っている。


木陰のベンチに並んで座って、台本を広げる。

たくみの・・・・とまどい。嫉妬。悲しみ。友への感謝。
・・・・・・・ギイへの、愛情・・・・・。


「ぼくはしあわせだよ?
・・・・・・こうやって、ギイと愛し合える。」


その時、大ちゃんの唇が、ぼくの唇に重なった・・・・・・。


----------------え?


ナニガ、オコッタンダロウ・・・・・・??


時間が、止まる。
風が、吹き抜ける。
木々の、ざわめきだけが、鼓膜をかすめてゆく・・・・。


「・・・・・・・・お。・・・・まお。・・・・・おーい!まおってば!!!」


部長の声に、はっと我に返る。


「・・・・・なに、かたまってんだ??」

顔をのぞきこまれ、ドキリとする。

「えっと・・・・。あ・・・・・。」


「もしかして・・・・・。まお。ファーストキスだった??
ごめん。ごめん。そんな貴重なもん、奪っちまって・・・・・。」


その割には、あまり悪びれていない、部長の声色。


「セリフ読んでたらさ。ギイに感情移入しちゃって・・・。
本当に、タクミが生きて、俺のそばにいてくれて、よかったなあ・・・。
って思ったら、つい・・・・・。
・・・・・・・・本当に、ごめんな。」


真面目な顔つきで、改まって謝ってくれる部長。


やっぱり、この人は・・・・・。すごい。


そんなに、感情移入できるなんて。尊敬するなあ・・・。