「・・・・・・・いえ。迷子じゃありません。
兄のテニスの試合を見に来てたんです。

3試合目だったから、空き時間、遊んできてもいいよ。
と言われたんだけど、一人じゃつまらなくて。

どうしようかなあ・・・。と思って考えてたところ・・・・です。」


-----------丁寧な、言葉遣い。

きちんと教育されている、素直な子だと感じる。


好感を持った俺は、この少年をなんだか一人にしておけなくて。



「----------じゃあ。俺と遊ぶ??
俺も、あっちでやってるラグビーの試合に早く着き過ぎて、
時間をもてあましていたところ。
君のお兄さんの試合が始まるまで、一緒にいてあげるよ。」


「わあ!ほんとうですかぁ!!」


キラキラ瞳を輝かせて、向日葵のように、笑う。

--------------天使みたいな、子だな。




「お兄さんの名前は、なんて言うんですか?」

「ワタナベ。ワタナベダイスケ。」

「ワタナベサン・・・・。僕は、キョウスケって言います。」




「ねえねえ。ワタナベサン!!こっちこっち~~!!」


--------------腕を引っ張られ、あちこちに連れまわされる。


縄で編んだアスレチックに連れて行かれたり。

草むらで、虫を捕まえさせられたり。

砂場で、トンネル掘ったり・・・。

二人きりで、鬼ごっこをしたり・・・・・・・。

-------------途中から、どちらが遊んでいるのか、わからなくなる。

こんなに童心に戻って、心から遊んだのは、久しぶりだった。


「キョウスケのおかげ・・・。かな?」



「ねえ!!わたなべさん!!滑り台行こうよ~~!!」

手をしっかりとつながれ、その小さな手に愛しさを感じる。


「ほら~~!!ぼくが前で、ワタナベサンが、後ろ。
飛ばすからね~~!!しっかり、つかまっててね!!」


いつの間にか、敬語が消えている。


------------なつかれた、もんだなあ・・・・。


なんだか胸の奥がこそばゆい。

年の離れた弟がいたら、こんな感じなんだろうか・・・。

・・・・・・・頼られるのも、悪くない。


キョウスケを後ろからしっかりと抱きしめて、勢いよく滑り降りる。


「うっ・・・・!!わあ!!」

途中、バウンドするぐらいの急な傾斜。


「「あっははははは!!!!」」


「すごかったねえ!!」と二人で、笑い転げる。




・・・・・・・・あ。そろそろ、ラグビーの試合の時間・・・・・。


でも、キョウスケといる時間があまりにも楽しくて。

この少年が、あまりにも魅力的で。



なかなか、「もう、行かないと。」が言い出せずにいた・・・・・。