わたしの妹の なもちゃんが
保育園へ通っていた ある夏のお話です。
(わたしは12歳、妹は6歳)
ハガキが一枚自宅に届きました。
保育園で行われる夏祭りのご招待という内容で
来る時には
そのハガキと花火のお土産を貰う為に
300円をお持ちくださいと記載されていました。
当時、我が家は生活に困窮していました。
父親は長期間の入院を数年繰り返し、
なかなか退院出来ない事から仕事を自主辞職をしていました。
食べるもの、飲むもの、に困り
水道、電気、ガス、電話などのライフラインも止まり、
借金取立ての電話や訪問は 何人も毎日やってきます。
Iはコミュニケーションが取れない母親に苛立ち暴れます。
家の中はどんなに片付けても家財道具はひっくり返り
ガラスが割れ、傷だらけになる毎日を過ごしていました。
わたしは登校前に片付けてから学校へ行き、
帰宅後、車に避難した血まみれの母を見て話しを聞き
鼻の骨が折れ ぐったりとした頰を 窓越しに触り 泣きました。
病院へ行くよう促しますが、そんなお金はないと 変わった顔を両手で抑えています。
妹が帰って来る前に ケガをしたり ショックを受けないように、また ごちゃごちゃの家の中を片付け、割れたガラスを片付け、
iの話を聞きます。
これはわたしの日常でした。
iを理解出来るのは 全てを知ってる わたししかいないと思っていました。
iは本当はとっても 心の優しい人です。
「こんな生活やったらりもと なもが可哀想やろうが!
施設へ入れろ!!」
そう叫んで訴えている事もよくありました。
わたしは iが辛いのもよくわかっていましたし
母と意思疎通が出来ない事もよくわかっていました。
わたしは
どっちの味方にもならず
どっちにも 訴え続けます。
いつか大きな間違いが
家庭に起きる恐怖が常にありました。
このような生活だった事から
母親は300円を払う事が出来ず
なもちゃんに言います。
なもちゃん ごめんね。
行きたかろうけど、 ただじゃないとよ。
夏祭りいくのも お金がかかると。
行かせてあげたいけど ごめんね。
まだ6歳の なもちゃん。
こどもは受け止める事しか出来ません。
ひとしきり泣いた後は
しょんぼりしていました。
ピンポーン
家のベルが鳴りました。
弟の保育園の夏祭りがあるけど
一緒に行かない?ママも出店しとるとよ。
下階に住んでいる 二つ下の友達が
子守要員でわたしを誘ってくれました。
※その保育園と 妹の保育園は別の保育園です。
なもちゃんも一緒にいく?
行かん。
なもちゃんが行きたいのは そこじゃないけん。
ごもっともだと思い
わたしは お金を持たずに
友人の弟の子守をする為に
誘われた保育園へ行きました。
保育園の夏祭りへ行くと
みんなにクジが配られました。
みんなクジが貰えるなら
なもちゃんを今から連れてくれば良かったかな…
今からでも呼ぼうかな…
わたしは 置いてきた妹を想い
ソワソワとしていました。
友人のお母さんが
保育園の役員の仕事がひと段落して
こちらにやってきました。
クジみた?
あそこに書いてあるから自分の見ておいで。
友人のお母さんに言われ クジを見に行くと
わたしはデラックス花火セットが当たっていました。
心臓がトントンとリズムがなるのを感じます。
わたしは友人のお母さんに話し掛けます。
あの…まだ役員のお仕事あるんですか?
もうないよ。終わった。
そしたら……とっくん(子守をした友人の弟)
見なくても 大丈夫ですか?
うん。もういいよ。ありがとうね。
あの…今日 妹が花火したいって泣いてたんです。
さっきのクジで 丁度当たって…
なもちゃんに渡したいから 帰ってもいいですか?
いいよ。いいよ。
もってってあげな。
りもちゃん 良かったね!
わたしは夕焼けから薄暗くなった道を
足の指先をぎゅっと力を入れたサンダルで
思いっきり 家へ向かって走りました。
まだ泣いとるかな…
まだ落ち込んどるかな…
はやく!!
はやく!!家へ着け!!
この足 はやく動け!!
かみさま 有難う!
わたしに花火をくれて有難う!!
なもちゃん!
まっとってね。
起きとってね!
嬉しくって 嬉しくって
涙が風の中で走って行きました。
なもちゃんの笑顔を浮かべながら走りました。
ただいまーー!!
なもちゃん!!!
妹は勢いよく帰ってきたわたしに
きょとんとしています。
わたしは 大きな花火を背中に隠しながら
なもちゃんに話します。
なもちゃん 。
今日 保育園のお祭り
よく我慢できとったね。
うん。
あのね
なもちゃんがすっごく良い子やったけんね
お姉ちゃんから お土産があるとよ?
なに?
ジャーーーーン!!!!
わたしは誇らしげに
大きな 沢山入った花火セットを
なもちゃんの小さな手にドンッとのせました。
なもちゃんは 落ち込んだ顔が一気に
花が咲いたように笑顔になりました。
なもちゃんはね よく我慢しとったけん
かみさまが みとってくれたとよ。
お姉ちゃんね、さっきクジ当たったと。
これぜーーーんぶ なもちゃんのやけんね!
我慢して よかったね!!
うん!お姉ちゃん ありがとう😊
そう言って バケツとライターを準備して
花火をしました。
簡単に手に届かないからこそ
幸せを分かち合える。
花火が咲いた。
なもちゃんに咲いた。
笑顔になれる事は
奇跡なんだって事を
知る事が出来る。
問題なく 夏祭りに行けていたら
300円に苦労がなければ
それはそれで楽しかったかもしれませんが
妹の笑顔見たさに 嬉し涙で走った夜の事
わたしは忘れる事が出来ません。
お金の価値ってなんだろう。
物の価値ってなんだろう。
想いの価値って
あらゆるものを超越して幸福をもたらしてくれる。
想いを成長させてくれる環境は
苦しい時こそ育まれる。
こうして大人になって 振り返った時に
幸せな記憶になった。
わたしが
想いの価値のわかる人でありますように。
子ども達が
想いの価値に気付く人生を歩みますように。
※画像はお借りしました
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わたしがブログを書く理由は
子供達に残す為にあります。
いつ自分がどうなるかわからないという思いは
減る事はありません。
でもそれは 今のわたしの場合
不安とは違います。
縛りでもなければ
想いにとらわれているわけでもありません。
それは
自分の想いと目に見えない存在が繋がっている事へ感謝をする静寂な想いです。
子育ては
彼らが自分の考えを持ち
自立して生活する為に寄り添うもので
思いっきり失敗させて
そこから
突き進む勇気を応援する為にわたしがいるのだと信じています。
わたしに甘えん坊な長男に、
お母さんになんでも聞かない。
お母さんになんでも頼らない。
いつまでも あなたのそばにいるわけじゃないから
本当に困った時 以外は
自分で 想像してごらん?
ずっと見ているから
どうするか 見守ってるから
自分で考えて やってごらん?
思い通りにならないことこそ
沢山のヒントが詰まってるの。
すぐにヤダにならないで
冷静になってみて?
生きる事は面白い事だよ。
この言葉を毎日何度も何度も繰り返し伝えます。
答えを導くのは簡単。
グッと我慢して
本人の言葉や行動が出るまで待ちます。
わたしがいなくなっても
刻み込まれる勇気になるように。
自分の体を受け止め
生活力が身についているように。
一緒に眺める空や花や海や山を
あなたの感性で感謝を出来るように。
一緒にうたう歌や手話を
あなたの感性で表現出来るように。
想いの力をいつまでも
信じられるあなたでありますように。