不幸なことは、常に突然訪れる様で、
俺達は、薮から蛇の様なお知らせを
ウィーゼル(金太鼬)から聴かされた。
夜間勤務をタイガー(白虎)と一緒に
してくれて、俺が少しながら、
楽に仕事をすることが出来るように
してくれたフォックス(藍素狐)が
急に仕事を辞めてしまったので、
余計に雑務が増えた。
例えば、トイレの掃除等がそうである
けれど、少し厄介な部分が有った。
問題は、シャワーヘッドであるが、
ウィーゼルとヘッジホッグ(金針鼠)、
兄弟は、排便する度に尻を拭いた後、
シャワーヘッドから出る水を利用し、
尻を洗ったりするのであった。
客の為にも早くウォッシュレットを
設置すれば良いだけのことである
というのに、金を惜しむ気持ちで、
設置もせずに兄弟揃って、汚い真似を
しているので、シャワーヘッドが、
奇麗である筈が無かった。
それ以外にも問題は大有りであった。
先ず、フォックスの抜け穴を誰かが
埋めなければならないというのに、
その人柱を受け持つのは、残念ながら
俺とタイガーであった。
基本的にトイレ掃除や後片付け等、
汚れ仕事は、タイガーが担っていて、
俺は、普段より1時間を延長して
勤務することになっているけれど、
タイガーが休む日は、汚れ仕事まで、
俺が担うことになるのが辛かった。
一番、苛々することは、他ならぬ、
ハーピー(紅人鳥)の一言であった。
詳しくは知らないけれど、確かに、
店の事等、者ともせず、自分の都合に
より、他の職員より休みを多く取ろう
とする我儘な態度をフォックスが
取ったことは、事実であるけれど、
元々、ハーピーの心の底には、
南乃山を次男のスロース(蒼樹懶)に
譲り渡す際に、スロースに小言を
言ったり、ちょっかいを出したりする
ことの出来る立場であるフォックスや
ヘッジホッグを真っ先に排除しようと
する気持ちが敷かれていたので、
凄まじい程の残酷で悪辣な言葉を
吹き出したのかも知れない。
結局、フォックスは、嘗て、
ウィーゼルの愛人であった女人、
ナインテール(銀九尾)がそうであった
かの様に、辞めさせられた。
それにも関わらず、俺に向かって、
ハーピーは、こうほざいたのである。
「ドラゴン(黄竜)が、苦労するわね!」
「スロースは、海外旅行をして、」
「戻って来たので、疲れると思うの!」
「それで、私と一緒に帰宅するのよ!」
俺は、12時間を、然も1時間は、
只働きとして、勤務しているという
のに、自分の家族ばかりを考えて、
俺達、職員3人に対しては、感謝して
いると口先ばかりのことを言って、
気に入らないと遠慮なく残酷な悪口を
言いまくるウィーゼルやハーピーを
見たら、虫唾が走るという次元を
通り越して、吐き気がしたのである。
最早、スロースは、言うまでもなく、
スロースの兄貴のセーブル(深黒貂)、
彼の娘であるフェレット(純白貂)、
彼の息子であるマートン(褐色貂)、
その全員のことが物凄く憎々しくて、
腸が煮え繰り返る気がしたのである。
俺がそう言うことを考えている時に、
ウィーゼルは、ゴルフと酒に夢中で、
タイガー、イーグル(紅鷲)、そして、
俺のこと等、すっかり忘れた儘、
楽しい時間を過ごしているであろう、
そして、スロースやハーピーも、
家でのんびりしているであろう。。。
怒りと悲しみで、眠れぬ夜の窓に、
美しい望月の明かりが染み込んで、
汚い南乃山の瘴気に穢れた俺の心に
銀白色のエーデルワイスを咲かせた。
