【きれいに修復されたセティ1世神殿】

 

恋人はファラオ8.魂のふるさと、アビドス
からの続きです。

 今回でドロシーとファラオの物語は終わりです。

 人は肉体を失っても生きている証です。最後の時にはすでに魂が肉体を抜け出ていることが多いと言われています。魂の存在を信じることで、愛する人に再会することもあります。

 

 ドロシーはアビドスに来てまもなく、アマチュア考古学者のハニー・エル・ゼイニ知り合いました。エジプト人の彼は製糖会社の社長でした。二人は考古学の話が合い無二の親友となりました。

 彼はドロシーが普通では知り得ない情報をどこから得ているのか、不思議に思っていました。それとなく訊ねても、いつもはぐらかされてしまいました。

ハニーの記録

 あるとき、私(ハニー)はオンム・セティと神殿の修復現場を歩いていた。私は神殿が以前よりずっときれいで快適なものになってよかったと言った。

「そうね。まるでセティ1世やラメセスの時代にとても近いものになったわ」
「どうして、これが当時の神殿の姿に似ているとわかるのですか」
彼女は少しためらってから言った。
「だって、この神殿が建てられたとき、私はここにいたのですもの。まだラメセスがあれこれ改築を行う前にね」

「では、あなたはこの神殿が建てられたとき生きていらしたのですね」
私は彼女のジョークを受けて答えた。ところが、彼女はきわめてまじめな顔をして言った。

「そうよ、生きていたのよ。それは私のもう一つの人生だったの。私は十代の少女だった。シュネト・エル・ゼビブの数百メートル東にある村で、とても貧しい夫婦の間に生まれたのが私だったのよ」

私はなんと答えてよいかわからなかった。いま彼女が口にした言葉を信じろというほうが無理だった。


その後、ドロシーの死後、まさに彼女が語った場所から古代の村の跡が発見されたのでした。


【こんな不思議なヒエログリフもあるセティ1世神殿の壁画】

1980年、英国放送協会が彼女のエジプトでの人生をテーマにしたドキュメント番組を制作しました。1981年には「ナショナル・ジオグラフィック」のドキュメント・フィルム「古代エジプト 永遠の命を求めての1章にドロシーのインタビューが納められました。その中には彼女の77回目の誕生パーティのシーンもありました。その48時間後、ドロシー、オンム・セティは眠るように亡くなりました。

 

【女神イシスと王妃ネフェルタリ】

 生前、ハニーは仕事に疲れたとき、ふと思いついてドロシーに会いに行こうとジープでアビドスへ向かいました。ドロシーはハニーを見たとき、「イシス様はなんて、思いがけない喜びをくださるのかしらと叫びました。二人はハニーが持参した紅茶やビスケットを黙々と食べました。

ハニーの記録

 しばらくして、オンム・セティが低い声で言った。「王様が今ここにいらしたら、どんなにすてきだったかしら。私、あなたに王様に会ってほしいと思っているの。きっと、あなたも楽しいはずよ」

 オンム・セティは以前にも、同じようなことを口にしたことがあった。けれども、私はさらりと受け流していた。しかし、この日は何かが違っていた。私たちは数分、何も言わなかった。それから、オンム・セティは私を見ると真剣な口調で言った。

「今までにちらっと話したことはあったけれど、あなたはとくに気にもとめなかったから、私もそれ以上何も言わなかった。以前、王様に、私たちの話をあなたにしてもよろしいですかと訊いたことがある。王様は「そなたが彼を信用しているなら、するがよい」とおっしゃった。私はあなたを信用している。だから、話をしたいの」

「私も伺いたいと思います」と私は言った。
 その瞬間、それまでオンム・セティと私の間を隔てていた目に見えない壁が突然、崩れ落ちたように
感じた。

 オンム・セティが私に自分の真実の物語を語ろうと決めたとき、私もまた彼女の話に耳を傾け、それを信じる準備ができていた。話を聞いた私は、彼女が三千年以上隔たった異なる二つの世界を、なんの矛盾もなく、ともに生きてきたことを理解した。彼女は努力してそうしていたのではなく、ごく自然にそれを行っていたのだ。



【女神ハトホル セティ1世神殿の壁画】

ドロシーの日記

 昨夜、約束どおり王様はいらっしゃった。・・・初めてのキスをしたあと、王様は椅子の背にもたれておっしゃった。「ここはとてもすばらしいところだ、かわいい人。扇で風を送ってくれる者までおるではないか」

 王様が指さした先には、そよ風で穏やかに揺れる椰子の葉があった。あたりは月の光で満たされていた。

 しばらくして王様がためいきをついておっしゃった。

「ベントレシャイトよ、私とそなたがメン・マアト・ラーの家の庭で月明かりの下で一緒に座り、初めてそなたを愛したあのときから、どれほど長い時がたったことか。今こうしてアビドスの月明かりの庭でふたたび、そなたとこうして座っている。私たちの愛にはいささかの揺るぎもない。おかしなことではないか。決して朽ちることのない石で作られた偉大な建造物がすっかり消え失せても、われわれの愛に変わりがないとは」

 私は答えた。「建物だけではありませんわ。私たちが初めて愛を知ってから、偉大な帝国が興っては滅んできました。一度、滅んだ国は決して元には戻りません」

 私はレスボス島出身の女流詩人サッポーの詩を読んで聞かせてあげた。


愛はとてもはかないもの
一目だけで、一つの言葉だけでも失われてしまう
恋人たちよ、愛をていねいに扱いなさい
愛はたいへん強いもの
揺るぎない真実によって愛はさらに強くなる
神々でさえ手が出せぬほどに


 王様はこの詩を気に入り、もっと聞かせてほしいとおっしゃった。私は覚えているかぎりのサッポーの詩を朗唱した。・・・

 王様は腕を回して私を引き寄せた。そのままじっと静かに満ち足りた気持ちでいた。しばらくして王様は満足そうなため息をつかれた。

「この瞬間を与えてくださった神々に感謝したい。ベントレシャイトよ、この平和こそ、われわれが許されたことの証なのだと思いたい。そなたは幸せか、かわいい人よ」

「幸せ以上ですわ」と私は言った。

 私たちはふたたび沈黙した。私は王様の腕の中で眠ってしまったのだろう。おぼろげに私は覚えている。王様が私を抱いてベッドに運び、毛布をかけ、それからいつまでもキスしてくれていたことを・・・


   完

 

【晩年のドロシー】

 ドロシーはイシスの魔術の研究もして、実際に使っていました。それはどんなものだったのでしょうか。ドロシーの研究が発見のきっかけになった遺跡、王様から聞いた古代エジプトの様子など、まだ、たくさんの興味深いことがあります。ぜひ、本を読んでみてください。


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