先生から会わせたい人には連絡をしてくださいと言われていたので、夫の実の弟に電話や、ショートメールを入れました。なかなか連絡がつかなかったのですが、ようやく電話をくれて、「夜9時ごろになってしまうが、面会に来れる」とのことでした。
夫と弟が会うのは、実に10年ぶりくらいです。仕事や家族のことで忙しく、コロナ禍もあって、たまに電話で話すことがあっても、疎遠になっていました。
夕方、少し危ない状態になって、電話で弟の声を聴かせてあげました。
「もうすぐ行くからね、がんばれ!」
夫は目を開いて、しっかり聴いていました。それでまた少しまた持ち直した気がします。
私は今日、あわてて家を飛び出してきたので、今日泊まりになるとは思ってもみず、なんの用意もしていませんでした。スマホの充電も残り少なくなりました。
すると、普段そんなに気の利かない息子ですが、コンビニでスマホの充電コンセントとコード、夕食用のおにぎり、飲み物、お菓子などを買ってきてくれました。
6時過ぎに、母と兄が帰宅し、息子と私が残りました。
夫は少し落ち着いて、息をしていました。時々目を開けたり閉じたり。私は、髪や額をなでたり、手をさすったりして、「がんばって」と声をかけていました。
そして、弟君が来てくれました。
「兄貴、〇〇だよ。がんばれ!大丈夫だよ!また元気になるよ!」と声をかけてくれました。
夫は、声は出せないのですが、しっかり弟を見つめていました。
弟君は1時間くらいそばにいてくれました。
途中当直の先生も来て診てくれました。夫は口を動かして何かを言おうとしているのですが、声にならないので何を言っているのかわかりません。
たぶん、口の動きから、一人一人に「ありがとうございました」と言っている気がしました。
弟君が夜10時過ぎに帰ったあと、しばらくして息子も帰宅しました。
看護師さんが、簡易ベッドを部屋に用意してくれました。夫と夜を一緒に過ごすのは、コロナ禍に入る直前、2020年の1月に一時帰宅したとき以来です。実に4年ぶりでした。
ゆっくり二人きりで過ごせる貴重な夜となりました。若い頃の思い出話や、感謝のことば、楽しかったこと、大変だったこと、いろんなことを語りかけました。夫の反応はあまりなかったけど、時々私を見てくれました。
私は髪やおでこをさすり、手をさすってあげたりしました。もう夫には握り返す力はありませんでした。
時々簡易ベッドに横になり少しうとうとしては、心配になり、ベッドの横の椅子に座って語りかけたりして、一晩中すごしました。
看護師さんが時々来て、血糖値を測りました。もう刺せる血管がなく苦戦していました。血糖値が下がり、ブドウ糖を補給したり、酸素マスクの精製水を補充したりしてくれました。脈や心拍はモニターで監視しているとのことでした。