遊んで暮らすと決めた。




そうして迎えた日。

打ち合わせに向かった。と、その部屋の前に近づくと緊張してくる。

いつも、そう。

原稿を出したあとの打ち合わせは怖い。



今では態度に出さずにすむようになったけれど、新人のころは

「大学入試の合否を見にくる子供のようだ」とプロデユーサーに笑われたことがある。



書いた原稿は、生んだ子供のようなもの。

その子供をできのよいものにする為とはいえ、あれやこれや品評されるのは、時々、シンドイ。



私にはそこまでのことはなかったが、出来の悪い原稿をゴミ箱に捨てられた作家がいたり、「だからお前は結婚できないんだ」と男性Pに言われた女性作家がいたり。



そんな現場で仕事をしているので、いつも緊張して打ち合わせに行く。



で、部屋の前で、ハッとした。

そうだ、私、


「遊んで暮らすって決めたやん」



そうだ、打ち合わせも遊ぶツール。遊び場所!


遊びじゃなくなったらやめよう、そう思ったら、ルンルンしてきた。


そんな気分での打ち合わせは、楽しくて、いつもより、アイデアがバンバンでた。

監督やPが言う意見も素晴らしくて、ガンガンなおしの方向性が見えていく。

楽しい! これが遊びでなくてなんなんだ!




「遊びでなくなったらやめよう」


そう思ったとき、ちょっと、頑張りやさんの私が口をだした。

「そんないいかげんな! 命かけてもの書いてるのではなかったの!?」

その時、思った。

「あ、いつものパターンだ。ゆる~くいこう」

そして楽しい打ち合わせが終わった時、思った。



ちょっと前までの私なら「息子の学費を稼がないといけないから、かじりついてでも仕事しないと!」と思ったなぁ、と。

そして実際、そうしていた。

シングルマザーの私は、お金を稼がないと息子を育てられないと信じていた。

でも、わかっちゃったんだ。


息子を理由にしてただけなんだって。

「がんばらないことが怖いから」息子を理由にして頑張っていただけなんだって。


そうして、ふと、こんなことも思った。


息子がイジメで不登校だったころ、ドメスティックバイオレンスにまで家庭内が荒れていてころ、婚約していた男性は起業したばかりでお金に困っていた。

そのストレスをパチンコでまぎらわせていた。

私は、彼も息子も支えていたつもりだったけど、ただ、「私が役にたつのを証明したい」そのために、その現実を問題にみていたのかもしれないということ。





「遊んで暮らす」と決めた私。




でも、もう、今日は朝早くから、仕事のアイデアがあふれ出て、どう形にしていくか、ワクワクで眠れなくなって。

遊びの精神は、新しい生活をもたらしてくれそうです