三男が小学校を卒業する時に
私に語った『陸上』への思い… 



最初は妻との約束の3年間が終わったら
陸上クラブなどはさっさと見切りを付け
中学に入ったその折には
帰宅部を公言し、また昔の様に
部屋でゲーム三昧のはずだった。 



しかし、思うものが有ったらしく

 『父ちゃん、俺中学でも陸上続けるよ』


と、そこまでは良かったのだが
その発言には尾ひれが付いた。


 『で、今度は父ちゃんと約束がある』


これには、いきなりなんだなんだと構えると


 『俺が中学で全国行ったら父ちゃんも痩せてくれるか』


と、来たもんだ。


 
当時の私は体重120 kgほどの超肥満で
私の健康を心配してくれての話は
大いに嬉しかったし、
小学校時代の陸上練習への取組みも
それなりに頑張り、皆と同じ様に
遜色無く走れる様にはなっていたが
全国大会となると話は違って来る。



全国大会に出るとなると
努力だけで届くものでは無い。


能力、持って生まれた素質など
恵まれた物が無いとそこまでの高みは、
頑張ろうとしている息子には
申し訳ないが、
とても無理だと思った。



しかし、そんな息子の気持ちが嬉しく 
安請け合い。


 『よっしゃ、そん時は俺も痩せるな』




どこまでも無責任なバカ親父であったが、
三男は中学の3年間『陸上』に精進し、
そんなオヤジの予想をアッサリ裏切り   



3年の夏の県大会で誰もが予想し得なかった
ミラクルを起こし、2位入賞を果たして 
全国大会へと駒を進めたのだった。



で、例の約束の件は当然の事ながら
息子も覚えており、約束の責任追及は
されたものの、息子との交渉の末  
痩せる件についての約束は
三男のインターハイにまで
持越しされたのだった。 



私だって、痩せられるなら
痩せたい所ではある。




しかし、当時の私と言えば 
明日をも見えぬ自転車操業の真っ最中で
とても自身の健康に気を遣う所では無く
本来であれば貧乏な時こそ
健康でいなければならないのに
そんな心の余裕など微塵も無かった。


それでも頑張った息子が嬉しくて
頑張っている息子が嬉しくて
又々安請け合いをしてしまったが
全日中出場も難しいが
インターハイとなると更に
レベルが上がる。



まずは県高校総体で7位以内に入り
その上のブロック大会で6位入賞を 
果たさねばならない。



つまりはブロック4県全体で6位以内
に入らなければならず
インターハイ出場と言うのは
非常に狭き門なのである。


息子の成長は嬉しかったが

さすがにこればかりは届かないと思った。







自転車操業の殺伐とした暮らしの中で
三男の活躍だけが楽しみではあったが肥満児がここまど来れればそれで十分だとも思った。





続く…