『八十日間世界一周』

ジュール・ヴェルヌ



革新クラブのメンバー、フィリアス・フォッグ氏は、毎日分刻みのスケジュールどおりの生活を送っている。

几帳面を絵に描いたような性格。
想定外の行動など決してするはずがない。
新たに下男として雇われたパスパルトゥーにとっては理想的な主人だ。

しかしある日、フォッグ氏はクラブのメンバーに対して無茶な賭けを挑んだらしい。
なんと世界一周するには80日間で十分だと言い張り、2万ポンドを賭けてしまった。

パスパルトゥーはフォッグ氏のお供で旅に出るハメに。
どんな時も沈着冷静、まるで人ごとのように旅を進めるフォッグ氏だが、果たして賭けの結果はいかに…


なんとな〜くのあらすじとオチは知っていたけど、ちゃんと読んだことはなかったなぁというこの作品。
文字通り80日間で世界一周できるかどうかの一発ネタなのに、なんとまぁワクワクする冒険物語に仕上がっていることでしょう!!

様々な乗り物を乗り継いで旅は続くけど、果たして乗り継ぎの時間に間に合うかどうか、、、
予期せぬハプニングであわや!の連続でハラハラアセアセ
上手いこといきすぎ〜と思う展開も多少ありますが、この綱渡り感覚のスリルで押し切る物語なので、ただ前を向いて突っ走るのみ。


気がつけば旅の道連れも増えているではありませんか。
この人間模様にどう決着をつけるのかも見どころのひとつ。

登場する乗り物は、移動日数も距離も船が一番。
その他、鉄道やソリ、象ゾウまで登場します。

飛行機が発明される前だからこそ成立する物語。
単に空港で飛行機を乗り継ぐだけでは味気ないですからね。

ただ欲を言えば、もう少し陸路であちこちに寄りながら進んでいく旅も見たかったような、、、
海路は比較的スムーズであまり時間が起きないので。
でもそれじゃあ80日では足りないか。


作者のジュール・ヴェルヌは、フランスが生んだSFの父と呼ばれる作家です。
フィクションでありながら、当時の科学技術の到達点を踏まえた内容が盛り込まれているので、リアリティがあります。
オチについても、現代のわたしたちにとっては常識的な知識ですが、当時としては誰もが知っているわけではなかったのかな。


映像化にうってつけの内容なので、何度も映画化、ドラマ化されています。
ヴィクター・ヤングのテーマ曲は、一度は聞いたことのあるメロディーだと思います。

わたしが観た映画は、なぜかパスパルトゥー役をジャッキー・チェンがやっていた。
当然、随所にアクション満載で、原作の空気はいずこへという感じだったけど、それはそれで面白かった笑
ジャッキーは無敵だ。


なかなかハードな旅なので、自分もやってみたい!という勇気はないけど、この物語を読んであれこれ妄想するのは楽しい。
そういえばアメリカの仲良しおばあちゃん2人組が81歳で80日間世界一周を成功させたってニュースがあったっけ。
冒険心を忘れずに年齢を重ねるって素敵!


【書誌情報】
『八十日間世界一周』
ジュール・ヴェルヌ
田辺貞之助訳
創元SF文庫、1976(原著1873)