またもや長寿シリーズものに手を出してしまった今日この頃。
ミステリとSFの融合が魅力の作品です。

『機龍警察』月村了衛




機甲兵装という兵器が一般的に使用されている世界が舞台。

日本の警察も、特殊装備を施した機甲兵装、通称「龍機兵」を導入し、龍機兵を活用して犯罪捜査を担う特捜部を新設した。

龍機兵の搭乗要員として、3名の民間人と雇用契約を結び、特捜部付きの警部に任用している。

姿俊之、ユーリ・オズノフ、ライザ・ラードナー各警部と選抜された捜査員を率いるのは、特捜部長の沖津旬一郎警視長。

沖津の指揮の元、特捜部は密輸機甲兵装による地下鉄立て籠もり・爆破事件に挑む。


このシリーズの要である機甲兵装は、人型ロボットに人間が搭乗して戦闘行為を行うものです。
たぶんガンダムとかエヴァンゲリオンのようなものでしょうか。

龍機兵が登場するシーンではメカニカルな記述が多いので、その辺りが苦手な方はもしかしたら少々しんどいかもしれません。
ちなみにわたしは、ガンダムもエヴァも全然知らないし、ロボット系も特に好きというわけではないですが、全体的に楽しめました^ ^

でも、読まずに敬遠するのはモッタイナイ!ですよ。

確かに、龍機兵の存在が目を引きますが、なかなかどうして、本質はかなり濃密な警察小説なのです。

警察上層部の覇権争いや、現場捜査員の縄張り意識など、警察の内部事情がリアル。
それもそのはず、あとがきによると、元警察官の方に取材をされて執筆されたそうです。


主役であるはずの特捜部メンバーは、普通の警察官から敵対視されてしまう存在。
特に、龍機兵搭乗員の3名に寄せられる辛辣な声。

龍機兵を操るためだけに雇われた傭兵に警察官としての矜持はあるか。
事あるごとに現場捜査員から向けられる視線に彼らは何を思うのか。

事件の描写の合間に、この3名や沖津、その他特捜部捜査員の内面やバックグラウンドエピソードが挟まれます。
この先シリーズが進むにつれ、さらに掘り下げられて行くのかなと期待。


特捜部が相手にするのは、国際的な犯罪者集団。
中国、ベトナム、ロシアなどの犯罪集団が絡み合いスケールの大きな事件が展開します。

地下鉄爆破事件は一応の解決を見ますが、真の黒幕の存在は明らかにならないままの幕切れ。

この事件が今後のシリーズに影響するのかしないのか。
続きが気になってしまい、既に次作『自爆条項』がKindleに待機中なのです♪


【書誌情報】
『機龍警察[完全版]』月村了衛
ハヤカワ文庫JA、2017(初出2010)