ミステリ熱まだまだ継続中炎

今度は阿津川辰海さんの作品を読んでみました。


『紅蓮館の殺人』

綾辻行人さんの館シリーズを彷彿とさせるような、ザ・本格ミステリなタイトルですが、内容としては少し系統の違うミステリです上差し



まず、人里離れた山奥の一軒家に山火事が迫るという、パニックアクション的な設定


ミステリのお約束、外部との交信が遮断されるクローズドサークルの一種ですが、そこに火の手が迫るという時間的制約がかかることで緊迫感が増していますハッ



ミステリとして大事な「謎解き」については、大掛かりな物理トリックとロジックの合わせ技というところ。



そして特徴的なのは、探偵とはどうあるべきかという探偵論が全体的に展開されている点です。


探偵役の高校生葛城は、人がつく嘘に過剰な反応を示し、それが謎を解く原動力となっています。


目の前に提示された嘘を暴き、謎を解かなければならない、そんな使命感にも等しい思いで時に暴走する葛城。


ワトソン役で、作品の語り手でもある同級生の田所も、幼少期の体験から、探偵という存在に特別な思い入れを持っています。


「事件が起きて探偵が謎を解く」ことが推理小説の骨格ですが、謎を解く探偵の動機付けや、苦しみにスポットを当てているのは新しい視点だと思いますひらめき電球


今回の事件で、深く傷ついた葛城と田所が、この先どのように生きていくのか、続きが気になるところで『紅蓮館の殺人』は幕を下ろします。



先に続けて2冊市川憂人さんの作品を紹介したので、ちょっと比較してみると、

市川さんの作品が、綾辻行人さんの系譜を受け継いだ堅実なミステリであるのに対し、

阿津川さんの作品は色んな要素を取り込んだチャレンジングな作品という印象を受けました。

お二人とも東京大学の出身なんですねびっくり



わたしはどちらの作品も面白く読みました

その時どんなテイストの作品が読みたいかでどちらが好き、というのが分かれるかなぁ🤔



ひとまず複数の作品を読んでみて作家さんの雰囲気をつかもうというのがマイブームなので、早速第2作目『蒼海館の殺人』を読み始めていますウインク


レビューなどを見ると、こちらの方が面白いという評判です。

確かに、壮麗なお屋敷とそこに住む華麗なる一族が次々と登場してくる冒頭部分は、いかにもミステリな雰囲気が漂い、期待が高まっています爆笑



【書誌情報】

『紅蓮館の殺人』阿津川辰海

講談社タイガ、2019