漫画好きの友人にオススメを聞いたところ、
くらもちふさこさんの名前が挙がりました。

そこで何かひとつ読んでみようと選んだのが、この『花に染む』。


弓道をテーマにした青春物語ですキラキラ

弓道、憧れますねぇ照れ
静の中の一瞬の動雷
メンタルがダイレクトに影響しそうで、心身共に鍛練するイメージ。
めちゃくちゃ憧れるけど、これまでの人生で全く触れたことのない領域です。

そんなわたくし憧れの弓道の世界を、余すところなくカッコよく描き切っている素敵な作品です爆笑


まずは、時系列に沿ってあらすじを。

主人公は倭舞(やまとまい)に住む曾我部花乃(かの)
小学6年生の時、比々羅木(ひいらぎ)神社のお祭りで行われた流鏑馬を見て弓道に惹かれます。

その時の射手は、神社の次男で、花乃よりひとつ年下の圓城陽大(えんじょうはると)でした。

花乃は、倭舞中学に進学し、念願の弓道部に入部。
1年先輩の陽大の兄、陽向(ひなた)、1年後輩の陽大と共に弓に打ち込みます。

花乃が中学2年の時、陽大、陽向とチームを組んで挑んだ関東大会の団体戦。

そこで3人は、完璧なチームワークを見せ優勝します。
それは、花乃の弓道人生最高の時。


その後、比々羅木神社が何者かに放火される事件が起きます。
その火事で、陽向と彼の両親は死亡、陽大も心神喪失状態になってしまいますタラー

花乃の懸命の看病の甲斐もなく回復しない陽大は、関西の療養所を経て、花染(はなぞめ)町に暮らす親戚の元へ引き取られて行きます。

陽大は、花染神社の実子として、いとこの圓城雛(すう)と暮らし始めます。


高校生になった花乃は次第に弓道から離れてしまいます。
高校卒業後、専門学校に通いながら花染町を訪れ、陽大と再会します。

再び弓道への想いが目覚めた花乃は、弓道の強豪校、茴香(ういきょう)女子大学に進学。

紆余曲折の末、雛が部長をつとめる弓道部に入部します。

そしてたどり着いた全国大会の舞台…


あえて、"出来事"だけを並べたあらすじにしてみました。
そうでないと、膨大になる、かつネタバレしていまいそうなので(^^;;
そのため、あえて触れなかった重要な登場人物もいます。


実際には、過去と現在が入り混じってストーリーが進んでいきます。
そうすることで、放火事件前後の対比が際立って切なさが増します。

放火事件をきっかけに花乃、陽大、雛それぞれの関係は複雑に歪んでしまいました。

陽大と雛との間にはピリピリした空気が流れます。
そして、倭舞での暮らしの全てを捨て去ろうとするような陽大の言動。

陽大が何を考え、何を目指しているのか。
その意図を図りかね、花乃は戸惑いながらも、陽大や雛と関わっていきます。

それぞれの"想い"が徐々に明かされていき、迎える結末は圧巻でした😌


この作品の魅力は、何より主人公の花乃がとにかくカッコいいこと爆笑
めったに笑わずぶっきらぼうで、怒ってる?と思われがち。
世の中で言ういわゆる"女子力"と呼ばれるものとは縁遠い言動でしょう。

しかし、彼女はぶれない芯を持っている。
どう見られるかではなく、自分がどうしたいかで行動できる人。

そうした表裏の無さが伝わるから、自ずから周りに人が集まってくる。
彼女なら信頼できると思えるんですね。


そんな花乃と陽大との関係は特別なものです。
陽大は花乃のことを「親友」と言い、
その言葉が花乃の心の支えになります。

花乃の陽大への想いは恋愛感情ではありません。

「そんなもんじゃない
そんな感情だったら
とっくに諦めている
惚れているんだ人として」

という花乃のモノローグ。

仲間とか同志といった感覚が近いのかな。
単純な恋愛物語にしなかったところがポイントだと思っています。
と言いつつも、やっぱりそれだけではないのかなーと思わせるところもあって、あぁフクザツラブラブ

だからこそ、最終巻終盤の展開からの

「負けたって思った……」

という最後の台詞が響きました😌


スポーツとしての弓道がしっかり描かれているのも魅力です。
初心者はこんな練習から始めるんだーとか、
試合はこういう風に進むんだーとか。
憧れの世界を少し垣間見れましたおねがい

弓道が単なる物語の雰囲気づくりの道具ではなく、
弓道だからこその物語に仕上がっていますキラキラ


ちなみに、タイトルの「花に染む」は、
西行法師の和歌に由来します。
このセンスがまた素敵すぎます!爆笑


【書誌情報】
『花に染む』くらもちふさこ
集英社、全8巻