おかげさまで、このブログもようやく100回目乙女のトキメキ
いつも読んでくださる皆さま、本当にありがとうございます!!

節目の記事はどんな本にしようかと大層悩みましたが…もといウソですてへぺろ

100回まではコレと決めていたので、ドロシー・ギルマンのミセスポリファックスシリーズを取り上げますニヤリ

「おばちゃま」ことアメリカのお上品なご婦人ミセスポリファックスが、型破りなスパイとして大活躍するシリーズですキラキラ


今回の舞台は、中東シリア。

ダマスカスの空港で、ハイジャック犯から乗客を救い一躍ヒロインとなったアメリカ人女性アマンダ・ピムが忽然と姿を消します。
白昼堂々、公衆の面前での誘拐ハッ

情報源から、アマンダがテロリスト集団に誘拐されたことを掴んだCIAは、彼女の行方を探す「叔母」と「いとこ」をシリアへ送り込みます😎


はい、出ましたおばちゃまの「叔母さん」設定😂
何かと便利笑
そして「いとこ」役は、このシリーズ準レギュラーのイケメンスパイ、ジョン・セバスチャン・ファレルですニヤリ
ファレル推しのわたくし、ファレルが登場する作品はポイント高めです爆笑


数々の修羅場を共に乗り越えてきたおばちゃまとファレルのコンビも、安定感バツグン。

シリアに乗り込んでからも、早速尾行が付く中、緊張感を保ちつつもベテランスパイの余裕が見られます。

「チェックインするとき、お決まりのトレンチコートを着た男が見てましたよ」
「またトレンチコートかい、ったく」
というやり取りがなんとも可笑しいゲラゲラ


しかし、そんな気分も束の間ガーン

2人に情報提供をしてくれた人物が殺害されてしまい、一気に緊迫感が高まります。

そしておばちゃまにも単独行動を余儀なくされる出来事が起きますアセアセ

しかし、ここはいつものおばちゃまスタイル。
地元の人たちの助けを借りて、CIAの協力者がいるらしい遺跡発掘現場までなんとかたどり着きます。


そこで出会った考古学者の卵、アメリカ人のジョー・フレミングこそCIAに情報をもたらした人物でした。
ジョーから情報を聞き出し、ついにアマンダの居場所を掴んだおばちゃま。

やがてファレルも合流して、後半はアマンダ救出とシリアからの脱出劇が繰り広げられます。


この後半部分は、アマンダを追うテロリスト集団をかわしながら隣国ヨルダンに亡命するというかなりスリリングな展開なのですが、どことなく安心感があります。
おばちゃま、ファレル、ジョー、アマンダと4人で行動を共にするチーム感が心強いのかな。

とはいえ、心身共に極限状態が続く中で、おばちゃまがこれまでのスパイ活動で出会ったある人物を思い返すシーンはとても印象的キラキラ


途中からガイド兼自身もヨルダンへの亡命をはかるアントゥンも加わり、ヨルダンとの国境を目指す一行。

あともう少しで国境という場面に、わたしの好きなやり取りがあります。

追手を自分たちに引きつけ、その間にアントゥンは先に国境を越えて、目印となる明かりを付けて欲しいと提案するおばちゃま。
それに続く場面です。(p.283)

そう言ってから、言わなければいけない言葉を言った。
「向こう側に渡ったら、残りのお金を支払います。それまではあなたの荷物もわたくしたちが持ちましょう」
万一彼が弱気になった場合に、と考えたのだ。

ここで捕まればアウト。
そんな極限状態で、情に流されずしっかりとお金の話を持ち出してアントゥンに釘をさした。
全員を救うために冷徹さを見せるのはさすがですキラキラ

そしてアントゥンもそんなおばちゃまの気持ちにちゃんとこたえるのがいいんです。

「ナアム。わかった」
と言う声が涙声だった。
「親切が身にしみる。決して裏切らない。約束する。おれの荷物を持っていってくれ。おれが向こうで新しい生活をはじめるためのすべてがこれに入っている」

そうして、国境にたどり着いた一行に最後の試練が待つのですが……
結末はご自身の目でどうぞウインク


さて、おばちゃまシリーズでは、生きづらさを抱える若者がおばちゃまとの交流を通じて生きる道を見出していく姿が多く描かれてきました。

本作の陰のヒロインともいえるアマンダは、シリーズを通じても特に心に深い傷を負った女性でした。

ひたすら存在を消し、没個性に無気力に生きているようなアマンダですが、おばちゃまたちとの逃亡劇の中で少しずつ心を開いていきます。

一体彼女に何があったのか…
徐々に明かされる事実が重く切ないですが、ちゃんと救いがあるのがこのシリーズのよいところ。
ジョー、グッジョブ!!👍



この作品は、ミセスポリファックスシリーズ最後の作品となりました。
作者のギルマンさんが亡くなったことで結果的に最後になってしまった、という感じですね。

もっとおばちゃまの活躍を見たかったなぁえーん
という気持ちもありますが、
あえて「最後」という感じがないままにしておくのも、おばちゃまらしくてよかったのかなとも思います。


こういう純粋にドキドキワクワクできて、痛快で、ほっこりもできる作品に出会えたことは、わたしにとって本当にラッキーだったと思っています。
もし現実に辛いことがあっても、本を開けばおばちゃまと一緒に痛快な冒険活劇を楽しむことができる、という安心感。

今回を含めて、シリーズから3作品をご紹介してきました。
本当に素敵でワクワクするお話なので、多くの方に知ってもらいたいと思っていますニコニコ

今後も、50の区切りになるかどうかはわかりませんが、紹介を続けていきたいシリーズですキラキラ
これこそいつかは原書チャレンジをやってみたい作品です。


【書誌情報】
『おばちゃまはシリアスパイ』
ドロシー・ギルマン
柳沢由実子訳
集英社文庫、2000
(現在は、新装版が出ています)


これまで紹介した作品はコチラ↓

シリーズ第1作『おばちゃまは飛び入りスパイ』


シリーズ第6作『おばちゃまはシルクロード』