漂流教室を読み直す⑥ | 生きてる缶詰

生きてる缶詰

イラスト描いたり サボテン育てたりの記録ブログ

楳図かずお著 「漂流教室」(1972年~1974年)
大友に大苦戦中ww
 
イメージ 1
 
 

本作のファンでも、大友の不可解さには納得いかないのだ。特にラスト。
 
 
大和小学校が未来の砂漠に飛んだ直後も、大それた事をしたはずの当の大友はその他大勢の一人として描かれてる。せいぜい直情的で攻撃性があるぐらいの色付けか。
最終シークェンスにて大友は、いつも一番でいろとの周囲からのプレッシャーに耐えられなかったと涙で告白するのだが。
しかし若原先生から「大友は学級委員長なんだからクラスをまとめなさい」とか叱咤されるような場面等もなかったし、クラスメートからせっつかれる事も無かった。
爆破工作するほどの抑圧状況が一切描かれてないのはどうかと。

とりあえず破壊動機をそこに設定した場合、大友をどう描けばよかったんだろうか。
最初に読者にだけ犯人は大友だとバラしてしまう展開があったかもしれない。
以下は原作には描かれてない事だけど、たわむれに一つの案として書いてみた。
 
●そもそも一つの学校が爆発して消失する事件があったとすれば、警察の捜索ぐらいで済む話じゃあるまい。当時なら過激派の残党が威力誇示のためにやったとかの見解も出るだろうし、当然公安の出番だ。
過激派はもとより、此処の教職員、出入り業者、生徒の親、親族なども捜査対象になろう。
大友は手製のダイナマイトを2本は作っていた。ならばニトログリセリンが必要だ。
入手先は何処か?彼の大学生の兄が工学部とかだった場合、その線も有りうるのか?
どうあろうが公安捜査にかかれば、企業・研究機関などからの爆発物関連材の遺失など簡単に突き止められそうだし、大友や兄が前日まで工作してた痕跡なども発見できたろう。
犯人は特定され、そこから未来世界に視点を移す。
未来のサバク世界に飛んだ大和小学校内にて爆破の痕跡が発見される。
これがタイムスリップの原因ではないか、その犯人を捜して吊し上げろとの声も上がろう。それに震え上がる大友。
「漂流教室」には過去に秘密を持つ人物は出てこない。この役どころはむしろ魅力だ。
翔との間で確執が大きくなる度に、翔に罪を被せようとする密かな企みもスリル感が出そうだ。それを隠す為の反動でつい翔につらく当たる切迫心理を各場面で描けるから、隠しておくよりむしろドラマチックになろう。

また怪虫騒動では最高の見せ場が描ける。
校舎3階にまで怪虫が迫った時、大友の中では「僕のもう1本のダイナマイトで怪虫を吹っ飛ばせるかも!」「しかし犯人だとばれたら何をされるか!」と凄まじい葛藤が起きる。結局言い出せず、池垣くんはズタズタにされるわけで。
 
最終章。多数の生徒たちが翔へ怒りを向ける。大友ひとりでは抑えられないほどの暴動になったため、とりあえず表面上は煽るものの翔にとどめを刺せない。
とうとう最後に皆を蹴散らし白状。地に伏して翔に謝る。
、、、、これでどうでしょうを;^^
 
 
 
 
 
 
■怪虫事件の最中は、翔と大友の間に次第に確執が生じる描写が多い。
ここでは大友の言い分の方が説得力が有るくらいなんだが、翔は穏便に事を進めたいがゆえに決定権が自分にあると主張する。表向きには一応納得してみせる大友。
この後の無表情な和解と冷たい握手、、、この描写は見事だ。ゾワワっとくる。
この確執がいづれ絶望的な内ゲバにつながり多数の犠牲者を出すからだ。
最終回直前の本当の和解での熱過ぎる握手と対にしてるのか。さすがです。
■ちなみに若原先生がサイコに変質する際に「だから縛ってくれと言ったのに、、、」とつぶやく場面があったのを想い出そう。自身の変貌に対してえらく客観的だ。
ということはセンセは以前から何人かヤッてたんだろうか。
公安捜査にてセンセの自宅から何が発見されることやら。
 
 
                続く