[パラレルマザーズ] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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ペドロ・アルモドバル監督・脚本。ホセ・ルイス・アルカイネ撮影。アルベルト・イグレシアス音楽。21年、スペイン映画。

スカパー、ムービープラスの録画にて鑑賞。22年度キネマ旬報外国映画第3位。ヴェネチア国際映画祭主演女優賞受賞。

[オール・アバウト・マイ・マザー]のアルモドバルらしい深みのある秀作だ。最初、新生児取り替え、今更大映ドラマみたいだなと感じたのだが、この映画、背景にスペインの内線による虐殺が内包されていて、そこが映画の味になっているのだ。元からストレートに映画を撮る監督ではないが、今回は秀逸な脚本で感心させられた。

シングルマザーになることを決意する写真家のジャニス(ペネロペ・クルス)。出産を控え入院した病院で、彼女はアナ(ミレナ・スミット)と出会い、彼女もひとりで出産すると知り仲良くなっていく。やがて2人は同じ日に女の子を出産し、再会を誓い合って退院するが…。

映画の冒頭でジャニスは自分の曽祖父について祖母から聞かされ法人類学者アルトゥロ(イスラエル・エレハルデ)にスペイン内線で亡くなった祖先の墓地の発掘を依頼、意気投合して彼の子を妊娠するが、彼には病の妻がいることを知り、相談も事後承諾でシングル・マザーになるのだ。ジャニスが十代で同じ境遇にあるアナと仲良くなり、共に出産するのだが、生まれた子供セシリアをアルトゥロに見せると似てないのでDNA鑑定を求められる。これが展開のきっかけになっていく。アナを演じるミレナ・スミットというスペイン女優がいい芝居をしており、役者として売り出したいかなり我の強い母親テレサ(ロッシ・デ・パルマ)との確執ふたりの女性の内情を巧みに描き込みながら、カフェで偶然に再会する。
 DNA鑑定でセシリアが自分の子供でないも知るジャニスの葛藤。おそらく自分の子であるアンの娘は突然死したことを知らされ、さらにセシリアの父親は輪姦により、誰かわからないことを知る。次々に明らかにされる衝撃の真実、ここからがジャニスを演じるペネロペの演技は熱演。アナと同性愛になってまで、セシリアの母であることを守ろうとする。
この異質な展開は実にアルモドバルらしいのだが、ラストは映画の冒頭が生かされてきて、本作に実に深味のある結末をもたらせていく。

毎回、秀作というわけにはいかないがアルモドバルはコンスタントに名作を残しているという印象を残した作品だ。