[心の旅路] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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マーヴィン・ルロイ監督。クローディン・ウェスト、ジョージ・フローシェル、アーサー・ウィンペリス脚本。ジェームズ・ヒルトン原作。ジョセフ・ルッテンバーグ撮影。ハーバート・ストサート音楽。42年、アメリカ映画。

Amazon Primeにて鑑賞。りょうこさん書かれていたので観てみた。マーヴィン・ルロイ、凄いハマりそう。後にヴィットリオ・デ・シーカ監督の[ひまわり]で戦争と記憶喪失をテーマにした作品は撮られたが、これはその原点のような映画だ。また邦題がいい、まさに[心の旅路]、このタイトルがピタリとハマる。

ジェームズ・ヒルトン原作の映画化なのだが、第一次大戦の後遺症で記憶を失った、仮の名をスミスという男(ロナルド・コーマン)、彼は入院先を逃げ出してさまよっているところを、踊り子ポーラ(クリア・ガースン)に助けられた。二人は結婚し田舎での生活の生活で子供ももうけ安穏と暮らすが、出張先で転倒したスミスは、チャールズ・レイナーという実業家の息子であった喪失以前の記憶を取り戻してしまい…。
 まず二重の記憶喪失という仕掛けに驚かされるのだが、チャールズになったスミシーは三年の間で有名な実業家となり、諦めきれないポーラは何とマーガレットという名前で彼の秘書になるのだ。何も知らない彼は、キティという親戚の娘に求婚。ポーラの心の孤独が浮き彫りになっていく。ルロイ監督はいくつかのチャールズが記憶を取り戻しそうなきっかけを作りながら、取り戻せない。観る側はそれで、物語に完全にハマっていき、キティに去られたチャールズはこともあろうに議員となり、マーガレットに何かを感じつつも仕事の合併のような結婚を求めるのだ。考えてみれば、これほど残酷な設定はない。どう展開するのか、まさに観る側はポーラの心に同調しながら、果てしなき旅路を映画時間の中で体感するのだ。この構成は秀逸。
 マーガレットを南米に送ろうとした時、労働者のストライキが起こり、舞台はオープニングに戻ってくる。このラストの高揚感、まさに全盛期のハリウッド映画の素晴らしさを体感できる作品。

お推めです。AmazonPrimeにありますので是非。