[パワーズエンド] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

力道の映画ブログ&小説・シナリオ

映画ブログです。特に70年代の映画をテーマで特集しています。また自作の小説、シナリオもアップしています。

ジェームズ・アイヴァリー監督。ルース・ブラ
ワー・ジャブァーラ脚本。E・M・フォースター原作。トニー・ピアース=ロバーツ撮影。リチャード・ロビンス音楽。92年、英日合作。

スカパー、ザ・シネマにて鑑賞。アイヴァリー監督のE・M・フォースター原作、[眺めのいい部屋][モーリス]に続く3作目の映画化。4Kデジタルリマスターでの放送。第65回アカデミー賞でエマ・トンプソンが主演女優賞を受賞している。

知的中産階級で理想主義的なシュレーゲル家と、現実的な実業家のウィルコックス(アンソニー・ホプキンス)家は旅行中に親しくなり、シュレーゲルの次女ヘレン(ヘレナ・ボナム・カーター)はウィルコックスの別荘ハワーズ・エンドに招かれる。美しい田園風景の中、当家の次男ポールに一目惚れしたヘレンは、姉マーガレット(エマ・トンプソン)に婚約の意志を書き送る。それを読んで、すわ結婚と早とちりした叔母が飛んでくるが、ポールにそのつもりはなく......。

20世紀初頭のイギリスを舞台に、知的で情緒豊かな中産階級の家族と、現実的な資産家の家族、2つの家族がパワーズ・エンドという別邸を巡り繰り広げる人間ドラマであり、その数奇な運命を感じさせる映画だ。月夜のヘレンの恋心をきっかけとして、展開していく物語の深さ、二つの家族の考え方や人間性の違いが丁寧に描かれていき、その世界観に引き込まれる。
 シュレーゲル家の隣に越してきたウィルコックス家。その中で唯一芸術に関心を示すルース夫人(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)と仲良くなるシュレーゲルの長女マーガレット。ルース夫人は遺言に別邸[パワーズエンド]を彼女にと書き残すがウィルコックス家は無視。だが当主ヘンリー(アンソニー・ホプキンス)はマーガレットを気に入り後妻に迎える。一方、ヘレンが傘を間違えたレナード・バスト(サミュエル・ウェエスト)はヘンリーの助言で転職するが人員整理されてしまい、そのことをヘレンは恨みに思い、いつしかレナードと結ばれてしまう。だがレナードにはかつてヘンリーの愛人だったジャッキー(ニコラ・ダフィっト)がおり…。

キャスティングされた役者たちの抜群の演技力が微妙に行き違う人間模様を巧みに紡ぎ出しており、アイヴォリー監督ならではの重厚感を感じさせる映画。時代を再現する美術、セット、衣装どれも見事であり、この映画の格調の高さを構成する重要な要素になっていた。