[アメリカン・フィクション] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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コード・ジェファーソン監督・脚本。パーシヴァル・エヴェレット原作。クリスティナ・ダンラップ撮影。ローラ・カープマン音楽。23年、アメリカ映画。

Amazon primeにて鑑賞。第48回トロント国際映画祭観客賞受賞。第96回アカデミー賞脚色賞受賞の風刺コメディ。

黒人らしさが足りないと酷評された作家セロニアス・モンク(ジェフリー・ライト)が母親の介護など資金的な面から、苦肉の策で書いたステレオタイプの黒人小説が絶賛され映画化までされるというアイロニカルな物語で出版、映画、そして黒人小説の扱われ方を風刺したコメディ映画。

コード・ジェファーソン監督の映画的な構造が秀逸。冒頭、大学で文学を教えるモンク、(ジャズ界の巨人から命名しているあたりがもう皮肉なのだが)小説の中に出てくる黒人差別用語を使ってクビになるところから始まる。批判するのは白人の女子、モンクは黒人は弱者だから守られるべきという風潮に嫌気が刺していることで提示されるが、実際にはタクシーの乗車拒否など差別は現実にあるのだが、モンクは前半無視している。久しぶりに帰った実家で母アルツハイマーになり、施設の費用の問題が出てくる。母の面倒を見ていた中絶医の姉リサ(トレーシー・エリス・ロス)は突然、倒れて亡くなり、弟のクリフ(スターリング・K・ブラウン)はゲイでその不倫が元で離婚、ドラッグに頼り自由奔放に生きている。まさに世間が求めるリアリティのある生き方をしているのだ。

そこでモンクは開き直り、“スタッグ・R・リー”の名前でステレオタイプの黒人が登場する小説をでっちあげ、それを代理人も出版社に送り、それが契約に繋がってしまう。この流れの面白さ、物語の転がし方の巧みさ、主人公の悪ノリぶりと一度はそれを否定しようとしながら、恋人になったコララインとこの小説が元で揉めてしまう。モンクは小説の審査員もしており、自分の書いた否定すべき作品は賞に選出されてしまう。

さて、ここからがこの映画のさらなる面白さであり、実は映画制作の段階でこの作品が二重構造であることがわかってくるのだ。辛辣なブラック・コメディではあるが映画的な手法は絶妙に構成されていた。

Amazon prime独占配信なので、契約されてる方、お勧めの一作です。