[續姿三四郎] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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黒澤明監督・脚本。富田恒雄原作。伊藤武夫撮影。鈴木静一音楽。45年、映画配給社配給。

スカパー日本映画専門チャンネルの録画にて再観。黒澤のデビュー作でヒットした[姿三四郎]の続編で、その後の三四郎の格闘遍歴を描いた作品。

いやー久しぶりに観たが実につまらん。黒澤自身、[あまり上出来にはいかなかった]と述懐しているが、前作[姿三四郎]が良かったのは暴れ者だった三四郎が師匠矢野正五郎(大河内傳次郎)と出会い、修行により、柔道、戦いの本質に目覚めていく伝達、成長の物語と絡めて、ライバルだった村井半四郎の娘小夜(轟夕起子)の仄かな恋物語を描き込んでいたからなのだが、本作はまず修行中の三四郎が自分に敗れ落ち目になった柔術家が、見せ物である拳闘家の外人と他流試合をする様に、闘いの厳しい現実をを知り、戻ってきた修道館の矢野正五郎に成長がないと指摘を受ける。道場には前作で倒した檜垣源之助の弟で空手家の鉄心(月形龍之介)と弟源三郎(河野秋武)が復讐のために殴り込んでくる。また小夜と再会、想いを伝えきれない三四郎を和尚(高堂国典)は叱る。小夜の励ましを胸に雪山で兄弟との対決を迎える…,
   前作のように蓮の開花で三四郎が悟りを得るとか、映像的に見せる部分が本作には何もない。原作はどうなのか読んでないのでわからないが、ただ物語を構成して、それを映像にしただけ。戦時下なので恋物語というわけにはいかないのかもしれないが小夜との恋愛も発展がない。
 そして肝心の決闘、前作、暴風を稲穂や雲で表現した黒澤の才能を疑いたくなるくらいに迫力もなければ、見せ場にすらなってない。少し揉み合い、一閃して鉄心は雪山を転がり落ち、三四郎は手当てをしてやる。それを見た弟は鉈を持ち出すが彼が小夜を想う笑顔に打てないのだ。捻りもなく恥ずかしくなるほど下手な脚本。黒澤とは思えない。前作がヒットしたことによる依頼だから、致し方なかったのだろうが作品は残ってしまうわけで、これは唯一と言っていい駄作。フィルモグラフィーから削除したい映画だ。