[火宅の人]4Kリマスター版 | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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深作欣二監督・脚本。神波史男脚本。檀一雄原作。木村大作撮影。井上堯之音楽。86年、東映配給。

スカパー東映チャンネルの録画にて再観。檀一雄、自らさの半生を描いた同名小説の映画化。日本アカデミー賞9部門を受賞した文芸作品の映画化。深作欣二はヤクザ映画やエンタテインメントだけでなく、様々な分野で名作を残しているがこれもその一本。檀ふみの父親で直木賞作家檀一雄の奔放な恋模様を赤裸々に描いた作品。

檀一雄だけに限らず、作家は女性を小説のネタのようにしながら、不倫、葛藤、恋愛に対してルーズな人間が多過ぎる。
男側から考えれば自由な文化人気取りなのだろうが、女側から見たら鬼畜でしかない。この映画を見れば、娘のふみが犬猿の仲になったのはわかる。

作家・桂一雄(緒形拳)は、先妻に先立たれ後妻としてヨリ子(いしだあゆみ)をもらう。ヨリ子は腹違いの一郎をはじめ、5人の子どもを育ててきた。しかし、子どもの1人二郎が日本脳炎にかかり重い障害が残ってしまうと、怪しげな宗教にすがるようになっていく。同じ頃、一雄は新劇女優・恵子(原田美枝子)の虜になり、やがて家を出て恵子と同棲を始める。彼女の妊娠堕胎を経て、大喧嘩の末、飛び出した一雄はホステスの葉子(松坂慶子)と目的のない旅に出るが…。

緒形拳はこういう役は抜群に上手いし、原田、松坂との濃厚なラブ・シーンも見所だか、結局、最終的に誰も幸福にはできていない。そうなることを心の中で感じ取りながらも、刹那の想いに身を任せてしまう男女のサガ。人間のエゴ、醜さ、欲望を一人の作家の人生の中で体現させられるような、人間ドラマだ。