[猫は逃げた] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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今泉力哉監督・脚本、城定秀夫脚本。平見優子撮影。LIGHTERS主題歌。22年、SPOTTEDPRODUCTION配給。

スカパー日本映画専門チャンネルにて鑑賞。今泉、城定のコンビは今の日本映画において、一番安定して面白い映画を生み出している。

離婚寸前の夫婦漫画家の亜子(山本奈衣留)と週刊記者の広重(毎熊克也)、ふたりを結び付けるきっかけになった猫のカンタ。それぞれに編集者の松山(井之脇海)と、広重は同僚真美子(手島実優)と不倫、肉体関係まで結んでいるが、夫婦はカンタの引き取りで揉めて、離婚話がまとまらないという設定。まず、アイディアが抜群に面白い。人間のままならない関係を準えるように活躍する猫のカンタ。観る側は一気一憂させられながら、映画の中盤で、ええとその裏側を明かされる。いつもの今泉作品と比較すると物語性は高いが、
冒頭で、それぞれの不倫相手との肉体関係を見せて、何だよこいつらと思わせておきながら、フラッシュ・バックでふたりが結婚の決め手になる猫のカンタを拾う場面に飛び、現在進行と合わせて、そこに至る過程を描いていく。

そして、カンタがいなくなったあたりから、夫婦が徐々に互いにの良さに気づいていく流れが実に上手い。亜子は足がツル癖があり、これを松山は対応できないのに、広重は治せる。こうした何気ない設定が実に秀逸。そして、その裏側を明かされた後、まさかの四人による話し合いに、その険悪な雰囲気をやっばり救うのは猫のカンタの存在。観ていて、少しハッピーな気分にしてくれる今泉力哉。彼の存在は日本映画の希望といっていい。今回も秀作だ!