[男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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山田洋次監督・原作・脚本。朝間義隆脚本。高羽哲夫撮影。山本直純音楽。84年、松竹配給。


スカパー衛星劇場の録画にて鑑賞。北海道出身の歌手中原理恵をマドンナに北海道、東北にロケを張ったシリーズ第33作。


まず冒頭の夢オチから、東映のヤクザ映画を思わせる作りで、登場するゲストの渡瀬恒彦はまさにその雰囲気を再現しているのだが、この映画、シリーズの中では超変則バージョン。まずシナリオ的に破綻している。例えば、トニー(渡瀬恒彦)と寅次郎の絡みは前半ではないのに、北海道でお世話になったと言って、とらやをトニーが訪ねる場面など。このシリーズ併映作品があるために時間的な制約があるので、割愛したのだろうが映画的に繋がっていない。山田監督にしては、珍しい凡ミス。さらに寅次郎が風子(中原理恵)に惚れられ、一緒に旅したいと言うのを諭すのだが、その前に第10作の『男はつらいよ 寅次郎夢枕』以来、久しぶりに登場する寅次郎の舎弟登(秋野太作)を怒るシーンが繋がり、登のようなことを言い出す風子を説得する。


盛岡にいる寅次郎(渥美清)から満男(吉岡秀隆)の中学入学祝が送られて来た。彼は、盛岡で昔の舎弟分・登(秋野太作)に再会した。登は堅気になり世帯を持って小さな食堂の主になっていた。寅次郎は精一杯、自分を歓待しようとする登を諭し北海道へ渡った。釧路で寅次郎はフーテンの風子こと木暮風子(中原理恵)と知り合い、意気投合する。風子は理容師の免状を持っていて、床屋に勤めるのだがどこでも長続きしない。その夜、寅次郎と風子は、女房に逃げられたという福田栄作(佐藤B作)と相部屋になり、その縁で、彼の女房探しを手助けする羽目になる。霧多布まで寅次郎と風子は栄作に付添って行ったが、新しい夫との生活する妻の姿に声もかけられず去る。栄作と別れた二人は、風子の伯母の住む根室へ。祭りに賑わう常盤公園の見世物小屋にオートバイショウがかかっている。一座の花形トニー(渡瀬恒彦)はオートバイを巧みに乗りこなし、目にとまった風子を小屋に誘った。伯父の世話で風子の就職が決まった。寅の旅立ちの日が迫り、風子は寅次郎と一緒に勝手気侭な旅をしたいと言い出した。寅次郎は、そんな風子を心を鬼にして伯母のいるこの根室で真面目に働いて、いい男を見つけて世帯を持てと説得する。別れの日、風子は寅さんがもう少し若かったら、私、寅さんと結婚するのにと告げた。タコ社長(太宰久雄)の娘あけみ(美保純)の結婚式が行なわれた日の午後、寅次郎が“とらや”へ帰ってきた。丁度、栄作が訪ねて来ていた。彼は東京で風子に会い、借金を申し込まれ断ったという。寅次郎は怒って栄作を罵倒し追い返してしまう。しかし、風子の居所が分らないので、新聞の尋ね人欄に広告を出した。そんなとき、トニーが風子が寝込んでしまい、寅次郎に会いたいという言伝てを持ってきた。寅次郎は風子を博の運転する車に乗せ“とらや”に連れ帰った。数日後、風子は元気を取り戻し、寅次郎はトニーを呼び出して風子と別れることを約束させるが…。


タコ社長の娘あけみ(美保純)が初登場、以後のシリーズで活躍する。とにかく、様々なことを作品に盛り込み過ぎて、全体的に纏まりがない。寅次郎は説教臭くなり、後半のシリーズの悪い部分が強調されている。佐藤B作のエピソードは自作『幸福の黄色いハンカチ』のオマージュ。トニーとの絡みがあり、最後は北海道で風子の結婚式にまつわる、大騒動。このシリーズの持ち味がまったく出せていない、異色作ではあるがあまり成功しているとは言えない一作。


山田洋次。『故郷』など。