[ホワイト・ドッグ] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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サミュエル・フラー監督・脚本。ロマン・ガリ原作。カーティス・ハンソン脚本。ブルース・サーティーズ撮影。エンニオ・モリコーネ音楽。81年、アメリカ映画。


スカパー、ザ・シネマの録画にて鑑賞。これは犬を題材にしたサスペンス映画であり、アメリカ社会に今も根強く残る人種差別に対する痛烈な社会批判を内包させており、{ザ・シャーク]など動物を題材にした作品も撮っているサミュエル・フラーならではの動物パニック映画に仕上がっている。


大部屋女優ジュリー(クリスティ・マクニコル)はある晩、大きな白い犬を轢いてしまう。病院で犬を治療、家に連れ帰ったジュリーは飼い主を探し始めるが、1人暮らしの彼女の家に侵入した強盗をその犬が撃退、ジュリーは犬と一緒に暮らす決心をする。が、ある日犬は突然姿を消したかと思うと数日後血まみれの姿で帰ってきた。そして数日後今度はジュリーの共演者が襲われる。その犬は、実は調教された攻撃犬だったのだ。安楽死を主張するジュリーの恋人に対して彼女は強く反対し、犬を正常に戻すため動物の調教場を経営するカラザス(バール・アイヴス)のもとを訪れる。犬は黒人の使用人を見た途端襲いかかり、それを見た自らも黒人の調教師キーズ(ポール・ウィンフィールド)はその犬はただの攻撃犬ではなく人種差別主義者によって黒人だけを襲うよう調教されたホワイト・ドッグだと言う。キーズは差別主義者の卑劣な行為を繰り返させないため、犬と一対一の決死の矯正に挑むが…,。


『ホワイト・ドッグ』の意味が説明されるとこの映画の真の怖さが浮き彫りになってくる。何人もの殺人を犯している犬を更生させようと考えること自体は矛盾があるが。


主演のクリスティ・マクニコルは『リトル・ダーリング』で当時人気だったテイタム・オニールを食ってしまう演技をして、この当時一躍スターダムにのし上がって若手女優で、主役に抜擢された数少ない貴重な作品だ。また、スタッフに注目して欲しい、何と脚本はカーティス・ハンソン『L.Aコンフィデンシャル』の名監督。襲ってくる犬の恐怖を隈なく伝えるキャメラのブルース・サーティーズはアメリカの代表的なキャメラマンだし、音楽はあのエンニオ・モリコーネ、一流のスタッフが集結した作品だけに、よく出来ているはずだ。


ラストの不条理とも言える結末が、また何とも言えない余韻を残す。


サミュエル・フラー。『最前線物語』。