[遠すぎた橋] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

力道の映画ブログ&小説・シナリオ

映画ブログです。特に70年代の映画をテーマで特集しています。また自作の小説、シナリオもアップしています。

リチャード・アッテンボロー監督。コーネリアス・ライアン原作。ウイリアム・ゴールドマン脚本。ジェフリー・アントワース撮影。ジョン・アディソン音楽。77年、イギリス・アメリカ合作。


スカパー、ムービー・プラスの録画にて再観。製作費98億。14大スターを投入して撮られた戦争映画。ノルマンディー上陸後、ドイツ本国に迫ろうとする連合軍の空陸共同によるマーケット・ガーデン作戦を題材にしている。劇場公開前、とにかく豪華なキャストは話題になり、自分も待ち切れずに観た口だが、案外面白くなく落胆させられた作品だったが、改めてじっくりと鑑賞すると様々な人間の思惑、駆け引きなどが作品内に盛り込まれ、アッテンボローは単なる戦争アクション映画に終わらせていないことがわかる。


オープニングからして、実写フィルムを使用、連合軍がこのオランダ・ベルギー国境付近の三つの橋を抑える無謀な作戦に至るまでの過程を克明に説明、モントゴメリー元帥とパットンの対立。モントゴメリーの名誉と意地を誇示した作戦だったことが説明される。こうした背景を元にイギリスのブラウニング中将(ダーク・ボガート)がレジスタンスからの報告で、戦車の存在を確認したにも関わらず、この作戦を実施する背景がわかってくる。この映画、興収はたった19億。映画としては大失敗作品なのだが、アッテンボローは連合側の負け戦を選択することで、こうした人間の見栄と浅はかな意地が多大なる犠牲者を生み、壮絶な悲劇を生むことを描きたかったことがわかる。興収だけを考えるなら、連合国側の勝利する映画を描いた方が当たるに決まっているわけで、あえて本作のような敗戦を選択するあたりがアッテンボローの真面目さと言っていいかもしれない。


1944年9月5日。連合軍のノルマンディ上陸作戦から3ヵ月、ドイツ軍はオランダよりの異様な速さで撤退を開始した。9月10日、ロンドンのブラウニング中将(ダーク・ボガード)の司令室に、連合軍司令官達が集められる。オランダのアーンエム付近に、空からのマーケット、陸からのガーデン両作戦を遂行し、ネーデル・ライン河からベルリンへ進撃路を開くためのマーケット・ガーデン作戦の説明がなされた。マーケット作戦の総司令官ブラウニングは、大作戦統率経験はない。アメリカ陸軍准将ギャビン(ライアン・オニール)のアメリカ第82空挺師団は中央ナイメーヘン橋付近へ、ロイ・アーカート少将(ショーン・コネリー)のイギリス第1空挺師団は最奥のアーンエム橋へ、ポーランドのソサボフスキー少将(ジーン・ハックマン)の師団はアーカートに協力を、と命令が下った。だが、ソサボフスキーは、アーンエムの地形の悪さに難色を示した。そのころ、ドイツ司令部はビットリッヒ中将(マクシミリアン・シェル)の第2SS機甲軍団をパットンとの対決に備えて温存するためアーンエム付近に置いた。レジスタンスの情報があり、この兵力を偵察したイギリス情報部は、作戦の危険を説いたが、ブラウニングは黙殺する。一方、ベルギーのレオポルズブールでは、ガーデン作戦総司令官のイギリスのホロックス中将(エドワード・フォックス)が、バンドルール中佐(マイケル・ケイン)の近衛機甲師団に進撃を命じていた。9月17日、日曜日。マーケット・ガーデン作戦が決行される。輸送機の大編隊が空をおおい、ドイツ軍の砲撃の中、パラシュート部隊は無数に降下する。ベルギーからは大戦車隊が進撃し、待ちうけていたドイツ軍の攻撃を受け、炎に包まれた戦車に行く手を阻まれていた。ソン橋近くに降下したスタウト大佐(エリオット・グールド)の隊は、ドイツ軍に橋を爆破され、進路をたたれる。一方、アーカートは、同師団のフロスト中佐(アンソニー・ホプキンス)と連絡をとるべくジープを走らせたが、砲弾の中に孤立。作戦開始後2日目の19日、第2次輸送隊は濃霧のためイギリス出発延期。一方、アイントホーフェンの町にバンドルールとスタウトの部隊が合流した。そして、少し北ではドーハン軍曹(ジェームズ・カーン)が、瀕死の上司をジープで運んでいた。暗くなった頃、スタウトは、今はないソン橋の近くに橋を仮設するが、進撃は36時間の遅れ。ようやく友軍の攻撃で孤立から脱したアーカートが仮の司令部にたどり着いた時、死傷者を重ね、ホルスト夫人(リヴ・ウルマン)の邸宅はアーンエムの近くで、ここをオランダ人医師スパンダー(ローレンス・オリヴィエ)が野戦病院に用いだした。膠着状態のアーンエム橋では、ドイツ軍のビットリッヒが、フロストに降伏を勧告するが、フロストは拒否。かくてドイツ軍の猛攻撃に、フロスト隊は壊滅状態だった。そのころ、ギャビンの師団はナイメーヘン橋突破のため、クック少佐(ロバート・レッドフォード)にボートで渡河作戦をとらせ、戦車隊は激戦の後、橋を占領。一方、イギリスではソサボフスキーの隊は霧のため未だ出発できない。そして、フロスト隊は全滅した。捕虜と化した彼は、ビットリッヒのさしだすイギリスのチョコレートを黙ってかじる。ようやく着いたソサボフスキーの隊も、ドイツ軍の攻撃に前進はまったく不可能。残骸と死体だけの町アーンエム、スパンダーはドイツ軍のルドウィック将軍(ハーディー・クリューガー)に戦闘中止を訴えた。今や生死の問題なのだ。負傷兵の交換は始まるが…。


映画のクライマックス、ライン河の渡河作戦に登場するクック少佐役にロバート・レッドフォードを起用したいがために、200万ドルを投入。当初はスティーブ・マックィーンに依頼、300万ドルを要求されて断念したらしいが、当時のレートだと約5億円近い金額であり、これにはショーン・コネリーらが激怒し、ストライキを起こしたという逸話がある。さらにリヴ・ウルマンが演じたホルスト夫人役は住まいが近いという理由でオードリー・ヘプバーンを予定したらしいがこれもギャラが折り合わず断念したらしい。とにかく、アメリカ人俳優が敵国側の人間を演じて、全部英語で撮ってしまう安易なハリウッド戦争映画が多い中、各国の俳優がそれぞれの国の人物を演じ、それぞれの国の言語を使用しているあたりが、本作をリアルに感じさせる理由だ。ただ、この作戦の失敗をブラウニングに限定したようなアッテンボローとゴールドマンの描き方は彼の夫人から相当な反発があり、演じたダーク・ボガートも彼と友人だったことから違和感を覚えた後にアッテンボロー作品に参加することはなかった。


実際の作戦が実施されたアーンエム付近の町並みに近い佇まいを残したデーフェンテルにロケを敢行、実際に登場する人物が監修にあたり、作戦の全体像を再現している。パラシュート部隊に関しては、実際より遥かに多くの人間を降下させることで、迫力ある場面を描き出している。


作中の軍事車両はオランダ軍の借用や個人コレクターのものなど様々だが、実際に残っていないドイツの車両などは大道具が改造製作して使用している。壮絶な戦闘場面が描かれ、リアルな負傷者の描写などは実に生々しい。自分が死なないと保証しろと上司に暗示をかけさせせられたジェームズ・カーン演じたドーハン軍曹が彼を乗せて適軍をジープで病院に駆け込む場面、サー・ローレンス・オリビエ演じるスパンダーが生死の問題を訴えてドイツ側に休戦を申し入れる場面など、アッテンボローは細部における戦場の人間ドラマを盛り込んで作品に厚みを加えていた。


また、本作の音楽を担当したジョン・アディソンのサントラが抜群に良く、自分も公開当時、即アルバムを購入したが、このテーマ曲は名作で作品にマッチしていた。


DVDはあります。


リチャード・アッテンボロー。[ガンジー]など。