[青春の門 筑豊篇] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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浦山桐郎監督・脚本。五木寛之原作。早坂暁脚本。村井博撮影。真鍋理一郎音楽。75年、東宝配給。



スカパー日本映画専門チャンネルの録画にて鑑賞。


原作は五木寛之が69年から週間現代に断続的に連載した尾崎士郎の[人生劇場]に倣った大河小説で、特に本作の筑豊篇は吉川英治文学賞を受賞している。77年にも[自立篇]も映画化され、後に東映での映画化も含めた最初の映像化作品。


前半は主人公伊吹信介(田中健)の幼少期から青年期への成長に大きな影響を与えた炭鉱夫の父親重蔵(仲代達矢)と波乱の人生を歩んだ母親タエ(吉永小百合)の物語から始まり、朝鮮戦争をきっかけに変わっていく日本を見つめ、様々な人物を介して、信介の性の目覚め、人間としての成長を描き出す。本作はキネマ旬報13位、[自立篇]の方が高い評価を得ている。



大正七年。北九州・田川市の筑豊炭田。米騒動の嵐が筑豊に波及した時、ダイナマイトをふりかざして軍隊に抵抗し男を上げた伊吹重蔵(仲代達矢)は、坑夫たちの信望を集め、炭鉱の頭領になっていく。一人息子の幼ない信介を残して妻が他界、重蔵は、天草生まれの女給タエ(吉永小百合)に激しい恋をした。ある日、重蔵は店に乗り込み、強引にタエを連れ出したが、重蔵と同じようにタエに惚れている新興ヤクザ・塙竜五郎(小林旭)が駈けつけ、激しい対決となった。新しい母を迎えた信介の幸福は長くは続かなかった。炭鉱で水没事故が起こり、重蔵は坑内に閉じ込められた朝鮮人徴用工を救出しようと自ら爆死を遂げてしまったのだ、その心意気にうたれた、かつての仇敵、竜五郎が、今度はドスをふるって重蔵の行動を救けた。太平洋戦争・昭和二十年。小学校四年になった信介が、ある日仲間たちと一人の朝鮮人少年をいじめている時、来合せたタエは怒った。タエは信介を父親のような男らしい男に育て上げようと、炭鉱労働をして頑張っていたのだ。この喧嘩をきっかけに、あの水没事故の時に重蔵に命を救われた朝鮮人、金朱烈(河原崎長一郎)がタエのもとに出入りするようになる。この事は当然、炭鉱内の噂になるがタエは気にしない。しかし、信介は金に好意を感じる一方、美しい義母を取られるような恐れも芽生えた。だが、その金も出征、そしてまもなく日本の敗戦。男たちが戦場から帰って来る。かつて重蔵の配下だった平吉、そして竜五郎、金。重蔵にタエ母子の事の面倒を見る、と約束していた竜五郎は、今では運送業をやり波にのりつつあるため、タエ、信介を自宅に引き取ろうとするが、金は猛烈に反対し、自分と共に朝鮮へ行こう、と言う。気丈なタエはこの二人の申し出を断わるが、その心の隙をつかれ、人のいない坑道内で平吉の愛撫を許した。その直後、落盤事故が起こり、平吉は死亡、タエは辛うじて救出された。朝鮮動乱勃発。信介は中学三年。竜五郎の有無を言わさぬ説得で、めっきりやつれたタエと信介は、動乱の特需景気に湧く飯塚に引っ越す。信介の幼なじみの牧織江(大竹しのぶ)涙ながらに見送っていた。竜五郎の家に着いてすぐ肺を病んでいたタエは喀血、入院した。やがて、信介には次々と新しい体験が訪れる。性のめざめ、喧嘩、高校進学、野球部生活……。その中で、音楽の女教師、梓旗江(関根恵子)の魅力は強烈だったが…。


義母の男性体験を見てしまう信介はマザコン気味であり、面倒を見てくれた竜五郎やタエから自立することを決意していく。実写フィルムを随所に織り交ぜ、日本激動の時代を再現しており、竜五郎と金の争いを巡り、朝鮮戦争にもメスを入れている。時代ごとのエピソードを無駄なくまとめ、休憩を挟む三時間を飽きさせずに、見せきる。脚本と浦山監督の演出の上手さを感じさせる。キャスティングでは、五木と浦山監督で意見が合わなかったようだが、日活時代の浦山組のメンバーに加え、仲代、小林、などの豪華なキャストが揃い、特に主役の信介は子役三人を経て、公開当時[俺たちの旅]で人気爆発した青春スター、田中健が抜擢され、[水色の時]でブレイクした大竹しのぶとのコンビは、この後、TVや映画で度々起用されることになる。


吉永小百合の大胆な濡れ場は、少し驚かされ、前半はまさに独壇場の感じがあるが、後半は外人記者との恋に燃える[神田川]や[太陽にほえろ]で人気を博した関根恵子もかなりの熱演だった。


DVDはあります。


浦山桐郎。[キューポラのある街]など。