[駅馬車] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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ジョン・フォード監督。アーネスト・ヘイコックス原作。ダドリー・ニコルズ脚本。バート・グレノン、レイ・ビンガー撮影。ボリス・モロース音楽。39年、アメリカ映画。

ジョン・フォード生誕120年記念でデジタル・リマスターがシネマート新宿で公開されたばかり、久しぶりにリマスターではないが鑑賞。それまでB級映画に出演していたジョン・ウェインは本作のリンゴ・キッド役で一躍トップスターとなり、後に西部劇の代名詞になっていく。

1885年頃、アリゾナのトントから今のニューメキシコのローズバーグ行きの駅馬車。大男のくせに臆病な馭者バック(アンディ・ディバイン)あやつる馬車が出発しようとしている。ルーシー・マロリー(ルイーズ・ブラット)軍隊にいる夫の許へ行くため、身重の体でヴァージニアから来た若い妻である。ウィスキー行商のピーコック(ドナルド・ピーク)はカンサスにいる妻子の許へ帰る途中だ。呑んだくれの医師ブーン(トーマス・ミッチェル)は宿屋から叩きだされたので、この馬車に乗込む。自ら紳士を以て任じている大賭博師のハットフィールド(ジョン・キャラダイン)は、ルーシーに心ひかれ、危険な道中を護衛しようと同乗する。もう1人の女ダラス(クレア・トレヴァー)は酒場女で、今日この町の矯風会のお婆さんたちから追立てられ、やむなくこの馬車に乗った。この一行を護衛するのは警察部長カーリー(.ジョージ・バンクロフト)で、彼は脱獄囚リンゴ・キッド(ジョン・ウェイン)を捕える目的をも持っている。途中はアパッチ族の反乱があって連絡の電信が切断されていた。トントの町はずれで、黒鞄を大事そうに抱えた銀行家ゲートウッド(バートン・チャーチル)が乗込んだが、ローズバーグから電報が来たので急行するという彼の言葉に、カーリーは疑いを抱いた。荒漠たる平原を進んでいる時、前方から馬車を止めたのはリンゴ・キッドだった。彼の父と弟を殺した上、彼に濡衣を着せて投獄したブラマー3兄弟を討つため、リンゴはローズバーグへ向かう途中だった。カーリーはともかく彼を馬車に乗せて同行させる。馬車はドライ・フォークの駅へ着いたが、迎えるはずのルーシーの夫は、インディアンの襲撃に逢って負傷しローズバーグへ運ばれていた。ダラスはルーシーやハットフィールドやゲートウッドにさげすまれたが、リンゴはやさしく彼女をいたわってくれた。馬車は護衛もなく夕刻アパッチ・ウエルスに着いた。その夜ルーシーが産気づいた。ブーン医師は酔をさまして大奮闘、そして無事に女の子が生れたが、ダラスの夜を徹した看護に、ルーシーは自分を恥じて感謝の涙を流した。その夜リンゴはダラスに結婚を申込んだ。世間の裏街へ追いこまれた同じ運命が、2人を堅く結びつけたのである。ダラスはうれしかったが、彼をカーリーの手から逃すため逃亡をすすめ、自分も後から行くと話すのだった。しかし次の朝、カーリーが逃亡を知って駆付けた時、リンゴはインディアン襲撃の信号を見てカーリーに知らせた。産婦の身を動かすのは危ないが、今は一刻も猶予できない。一行は直ちに馬車を走らせるが…。

見事だ。クライマックスのアパッチによる襲撃を冒頭で伏線として匂わせ、前半30分で主要登場人物8人を物語の流れの中で紹介する。そして、リンゴとダラス、ルーシーとハットフィールド二組の恋模様を織り込みつつ、それぞれの登場人物にドラマを作り、無駄がない。

モニュメント・バレーをバックにした最初のクライマックス、アパッチの襲撃シーン。移動撮影による駅馬車の疾走。クローズ・アップはバックにスクリーン・プロセスを使用、それを組み合わせることで、迫力満点スピード感溢れるアクション場面を作り出している。ヤキマ・カヌートのスタントによる馬上を飛び移る場面は秀逸。
他にもキャメラを馬の下から撮影するなど、アクション場面を見せる工夫に感心させられた。有名なイギリス民謡を生かしたテーマ曲も作品を繰り返し演奏され、作品を盛り上げる。

そしてラストのリンゴの決闘場面と粋な結末。ジョン・フォード作品の中でも3本の指に入れていい不滅の秀作だ。

DVDはレンタルにあります。

ジョン・フォード。[荒野の決闘][リバティ・バランスを射った男]等。