稲垣浩監督・脚本。若尾徳平脚本。55、東宝。
前回紹介した、東宝版[宮本武蔵]の続編です。
二作目は難しい。武蔵が吉岡道場の面々と対決する表題の[一乗寺の戦い]がメインを始め、殺陣を見せる場面に魅力が感じられない。
稲垣監督は今回より、登場する佐々木小次郎(鶴田浩二)の人物描写に力を入れ過ぎ、武蔵のドラマが薄い。逆に、吉岡清十郎(平田昭彦)と強引に結び付けられ、小次郎にも身を委せる朱美(岡田茉莉子)とお通(八千草薫)との女の葛藤の方がよく描けている。
物語。修行中の武蔵(三船敏郎)は鎖鎌の宍戸梅軒に勝つが、見ていた老僧・日観(高堂国典)から、強すぎて心の余裕がないと指摘される。
京の三條大橋の袂で働き、武蔵を待ったお通は武蔵と再会するが、また旅立ってしまう。武蔵を慕う朱美は、お通を見て自分の思いを彼女にぶつけるが、母お甲(水戸光子)と吉岡道場の藤次(加藤大介)の策略で、若・清十郎に結び付けられてしまう。
武蔵は、清十郎留守の道場を蹂躪する。刀を研ぎに出した先で、そして[物干竿]を見せられ、小次郎の存在を知る。
武蔵を危険視した吉岡道場の連中は彼を襲うが、それを見ていた小次郎は格の違いを藤次に指摘した。
一方、お甲に囲われていた又八(堺左千夫)は、武蔵に間違われ、吉岡の刺客に斬られた男から小次郎への巻物を託される。
武蔵は先に、吉岡伝七郎(藤木悠)を倒し、遂に一乗寺での決斗へ…。
東宝で作っているから、仕方ないが、藤木悠とか田島義文とか、どんな作品でも同じ俳優という辺りにも問題はある。そして、小次郎に力が入るためか、又八は三國連太郎が降りてしまい。端役になり下がってしまった。役者のスケジュールを三部作分、押さえないというのも絵が繋がらないから、違和感を感じる。
冒頭の梅軒との戦いで、つかみを作るのはいいとして、その後の老僧の苦言というのも、まったく繋がりがない。稲垣監督ともあろう人がとも思うが、惰性もあるのかも知れない。このシリーズは内田監督と比較されるためか、キネ旬では一作も評が入っておらず、その原因もこのあたりに理由があるのだろう。少からず残念!