[センチュリアン] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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  リチャード・フライシャー監督。ジョセフ・ウォンボー原作。スターリング・シリファント脚本。ラルフー・ウールジー撮影。クインシー・ジョーンズ音楽。72、アメリカ映画。

  ACDCさんのお薦めの刑事映画第三弾。これはロスアンゼルス警察巡査部長のジョセフ・ウォンボー書いたベストセラーの映画化であり、警官のリアルな日常が見事に描き出された秀作。タイトルの[センチュリアン]とは、ローマ帝国の治安部隊の名前から取られている。
 フライシャーという監督は、先日僕が紹介した本でも書かれているが、ロスという巨大な街で日夜起こる事件。事実を淡々と描き出す手法を選択している。刑事の家庭不和、様々な出来事を綴ることで、刑事の悲哀を確実に伝えてくる。

  ロスの街では様々な事件が起こる。警察学校で激しい訓練を受けたロイ・フェラー(ステイシー・キーチ)は最も事件の多発する地区に配属される。まだ法学生であり、判事を目指している。
  コンビを組むのは23年目のベテラン、アンディ・キンスキー(ジョージ・C・スコット)で、売春婦の保護、夫婦喧嘩の仲裁、幼児虐待、様々な事件に対応していた。
 同じベテラン・ホワイティと組むガス(スコット・ウィルソン)は黒人宅に入った強盗を追い、その父親を誤射。深い後悔の念にかられる。
  ロイは妻ドロシー(ジーン・アレクサンダー)と娘レベッカと三人暮らし。家計の苦しさ、目的を忘れたと妻に責められ、家庭不和。ある晩、車に潜んだ犯人に撃たれ瀕死の重症を追う。警察をやめることを望む妻とは、これをきっかけに別れることになる。
 一方、年金を取れるようになったキンスキーは娘と暮らすといきなり退職。警察を去った。だが現実は厳しく自分の居場所はなく、拳銃で自殺。
  この事件はロイに激しい動揺を与え、彼は酒に溺れるようになる……。そして。

 元巡査部長の原作だけに、リアリティがあり説得力がある。過酷で厳しい刑事達の現状をジョージ・C・スコット、スティシー・キーチが熱演。キンスキーの自殺場面には観ているこちらも衝撃を覚えた。ここには、ハリー・キャラハンやポパイ刑事のような強くてカッコの良い刑事像はどこにもない。ローマ警備隊に警察をなぞらえ、仕事を芸術にすら感じさせたキンスキーの自殺は、ロイの仕事に対する情熱や理想を奪い、精神を蝕む。ボロボロになっていく。後半は若い刑事三人の現状を捉えながら、人間にとって何が大切なことことかを悟らせた瞬間にロイを悲劇が襲う……。日本の刑事ドラマの物語と関係のない悲惨な結末は、案外、この映画なんかを参考にしてるのではと思わせる。

  DVDはオンデマンドのみ。 

 リチャード・フライシャー。[ミクロの決死圏][絞殺魔]等。