[暗殺] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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   篠田正浩監督。司馬遼太郎原作。山田信夫脚本。小出正雄撮影。武満徹音楽。64、松竹。

  本日は久しぶりに日本映画。以前よ~よ~さんが御覧になりたいと言われていた篠田正浩監督の作品。 ただならぬ殺気と幕末の喧騒を再現した映画だ。
 原作は司馬遼太郎の秀作短編集[幕末]より[奇妙な八郎]。攘夷論者でありながら、人を斬り幕府に終われた清河八郎(丹波哲郎)が、浪士組を結成幕府に反対する同一思想の者達を斬ることで大赦を受けるが佐々木唯三郎(木村功)という刺客が送られる。

  篠田は影で暗躍する松平主税介(岡田英次)のナレーションと佐々木等のフラッシュ・バックを巧みに利用しながら、北辰一刀流の名手であり、策士でもあった清河が暗殺される過程を描いていく。

   文久三年。浪士取扱松平主税介は老中板倉周防守(小沢栄太郎)に図り、目明し嘉助を斬った罪で追われていた出羽浪人清河八郎を大赦する。
  その一方で風心流の名手佐々木唯三郎を刺客として清河を斬る準備を始める。 元々清河は熱烈なる攘夷論者であり、浪士組を結成し幕府に反対する京都に潜伏する勤王の志士達を斬る準備を始めたことから大赦を受けた訳だが、幕府の募集する人数等を無視、大人数を雇い入れる清河の策士ぶりを懸念しての策だった。だが清河は先回り、北辰一刀流大目録皆伝の腕を発揮、佐々木を打ちのめしてしまったのだ。
以来佐々木は清河の過去を探り、暗殺の機会を待つ……。

 清河の妾だったお蓮(岩下志麻)の日記に目を通し、清河の人となりを探る武士の対面を傷つけられた佐々木が暗殺への自信を深めていく。激動の時代、刻々と変わる社会情勢の中、初めて人を斬った清河の動揺ぶり、身の保全のための変わり身、暗殺者になる佐々木の目を通じ、その生きざまをアイロニカルに見つめている。
  武満徹の尺八をベースにした重厚感を感じさせる音楽。モノクロによる撮影が殺伐とした時代感をよく再現している。どこか人間臭い奇妙な男清河を演じる丹波のクールな演技と葛藤する佐々木を演じる木村功が秀逸。
 DVDは発売あり、レンタルは微妙。

  篠田正浩。[心中天網島][少年時代]等。