『一絃の琴』宮尾登美子 著(講談社)
やっと読み終わりました。
南国土佐の地を舞台に、幕末から明治、戦争を経て昭和まで、一絃琴に魅了された女性2人の生涯を描いています。
物語は幼い沢村苗が、旅絵師である亀岡さんの一絃琴の演奏に心を動かされる場面から始まります。沢村家は代々続く土佐藩士。苗は病弱な母にかわり祖母の袖に育てられます。
亀岡さんから一絃琴を教わり、琴の魅力にのめり込みます。その後、師匠は亀岡さんから門田宇平、そして有伯へと変わり、有伯の死、自身の結婚、夫との死別と再婚、と紆余曲折あり一絃琴の塾を立ち上げ、門下生の蘭子と雅美と出会うまでが怒涛のように書かれ・・・
後半は苗から蘭子の視点で物語が進みます。
税務署長を父に持ち、裕福な家庭で育った蘭子。幼いながらも凛とした賢さを漂わせている。ある日母と、苗の一絃琴の塾を訪ね、門下生となる。やがて蘭子は免状を取るまでに上達する。
蘭子の入門から数年後、貧しい身なりの娘雅美がやって来る。雅美はみるみる琴の腕を上達させていく。「先生は雅美をひいきしている」「私を嫌っている」・・・蘭子の疑念がふくらむ。
どこでどうなったのか、女2人(苗と蘭子)の憎しみ?恨み情念?みたいなものがスゴい。2人が直接罵り合ったりする場面は全くありません。それなのに、何十年も苗への思い(塾の後継者に選ばれなかった)を抱え続ける。
苗が亡くなり、やがて蘭子にも死が訪れ物語は終わりました。
いやはや、女ってすごいよね、と。読みごたえありました。
読み終えて思いますが、苗や蘭子のような人っているなぁ、と。自分はどうだろうか・・・
願わくば貧しくも心の美しかった雅美のようにありたい。