今、フランスはさすがにオリンピック開催まで1週間を切って、オリンピックにまつわる話題が続々と持ち上がっているし、同時に国民議会がどうにもしっくり落ち着かない話題などのニュースに湧いています。

 

 しかし、そんなニュースの中に見過ごせないニュースがあったので、様々なニュースに埋もれてしまわないように書いておくことにします。

 

 フランスにいて、おそらく「アベ・ピエール」という名前を知らない人は少ないと思いますが、彼のもともとのルーツはカトリックの司祭でその後、修道院長を経て、現在、フランスでの慈善活動の大きな柱の一つとなっているエマウスやアベ・ピエール財団を設立した人物です。

 

 彼は、すでに2007年に94歳で亡くなっていますが、この財団は今もフランスの慈善団体の代名詞のような存在で、現在でも、貧しい人々の司祭として多くの人々の共通の記憶に残っている、長い間フランス人に人気の人物であり、ホームレスや劣悪な住居の人々の擁護者という聖人・偉人に相当する人物でした。

 

 しかし、ここへきて、彼から性的暴行を受けていたという女性の証言が公になり、現在のアベ・ピエール財団の代表がこの事件について発表しています。

 

 ことの発端は、昨年2月、「ピエール修道院長による女性への性的暴行を報告する証言」の報告書が提出され、この事件を解明するために、暴力防止を専門とする独立系企業が内部調査を依頼されています。

 

 この調査により、現在7人の女性が証言しており、「1970年代末から2005年にかけてアベ・ピエールが犯した性的暴行またはセクハラ行為」を報告しています。本人がすでに他界していることから、本人からの事情聴取は不可能であることは言うまでもありませんが、この犠牲者たちや周囲の人々の証言から、報告書は、「年齢差、ピエール修道院長の地位、そして一種の「偶像崇拝」によって培われていた支配の一形態、彼と民衆との間の従属的な関係が存在していたこと」、「隠蔽されていた可能性」も指摘しています。

 

 どこか、日本のジャニーズ事件にも通ずるところがあるような気もするこの事件ですが、彼が貧しい人々、弱い立場の人を救う聖人のような存在であっただけに、その弱者に対して行っていた行為は、余計に許しがたいものです。

 

 現在のアベ・ピエール財団の代表がインタビューに応じ、沈痛な面持ちで彼に対する怒りと悲しみを語っていますが、独立系企業の内部調査によれば、この問題は、すでに財団の中では既知の事実で、1992年、告発者の一人が当時の指導者らに通報、「秘書たちがピエール修道院長に注意するよう警告されていた」と報告されており、また、この事実に関して、内部職員は、まったく動じず、アベ・ピエールは「年をとり、本能を抑えるのが難しくなった」と本人も認める発言をしていたと記されています。

 

 1970年代末から2005年にかけての長期間にわたる告発者が存在する以上、犠牲者は、今回証言している7人だけということは考え難く、結果的に周囲も本人に注意できずに、この犯罪が続いてしまっていたことを示しています。

 

 アベ・ピエールは亡くなる2年前、著書「神様…なぜ?」の中で「自分の人生を神に捧げても、欲望の強さは何も減りません。私はたまたま一時的に欲望の強さに負けてしまったことがある」と意味深な告白をしています。

 

 神に最も近い存在と思われ、ほぼほぼ絶対的な地位を確立したとき、やはり彼は神ではなく、最も卑劣な人間であったと言わざるを得ません。

 

 「私たちが特定した被害者たち、そしておそらく名乗り出るであろう被害者たちを全力で支援したい」と現エマウス代表は語っていますが、本当に真剣に彼女たちの支援に取り組んでほしいと思います。

 

 

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