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前回の話

 

莉多子は言い放った。

 

「あなたが貴子さんよね?」

 

えっ!?

M田はますます混乱した。

 

今、ここにいるのは和歌子ではなくて貴子!?

確かに和歌子と貴子は見た目がそっくりで、区別がつかない。

亡くなっていたのは和歌子さんということなのか。

しかし、なぜ・・・!?

 

「私は和歌子ですよ。事件のショックですっかり忘れていたけど、確かに私、昨日撮影後にSNSに写真をアップしました。莉多子さん、私のSNSを見たんですね。でも、まさかそれを見て私のことを貴子と思い込むなんてビックリ・・・・・・」

 

その言葉を聞いて、M田はホッと安心した。

貴子が和歌子になりすましているわけがない。

 

しかし、莉多子は動じない。

 

「あなたが貴子さんだと確信した理由はもうひとつあるの。さっき、あなた私に言ったわ。貴子さんの歴代の彼氏は全員、いつも和歌子さんのことを好きになるって。顔は一緒なのになぜ?って不思議そうだった。でも、和歌子さんはなぜ貴子さんの彼氏に言い寄られるのか、理由を知っていたのよ。でも、そのことを貴子さんに言えずにいた」

 

その言葉にサッと顔色が変わった。

 

「えっ、なんで・・・?」

 

「和歌子さんはね、SNSのフォロワー数を増やそうと必死だったの。それで貴子さんの彼氏にも、SNSをフォローするようにお願いしていたのよ。和歌子さんのフォロワーの8割は男性で、SNSには男性ウケするコスプレをたくさん載せていたの。貴子さんの彼氏は、セクシーなコスプレが似合う和歌子さんに惹かれていった。貴子さんは私に出会うまで、ファッションに全く無頓着だったでしょ。私がアドバイスするようになって、デートでワンピースを着るようになったけど、肌を露出する格好は絶対しないわよね」

 

莉多子の問いかけに頷いた。

 

「ええ。最近は和歌子と婚活服をシェアしたりもしてたけど、あたしは和歌子のコスプレ癖についてはどうしても理解できなかった。下着同然の格好でポーズを決めて、全世界に向けて発信しているなんて、いい年してみっともないし恥ずかしかったわ。でも、あたしがどうしても許せなかったのは、彼を自宅に連れてきた時、あたしに隠れて彼とこそこそ連絡先を交換していたことよ。人の彼を盗ろうとするなんて、最低!」

 

「でも、それは連絡先交換ではなくて、和歌子さんのSNSをフォローしてもらっただけよ。和歌子さんは貴子さんの彼と個人的にやり取りしていなかった。でも、フォロワーになった貴子さんの彼から熱烈なDMが届くようになって困っていたの」

 

「それでも、あたしの彼を誘惑したことに変わりないわ。今の彼もそうだけど、昔の婚約者だって本当は和歌子のことが好きだったのよ。ねぇ、あいつの口癖知ってる? いつだって『貴子は男の趣味が悪いんだから。私だったら絶対に相手にしないもの』って、馬鹿にして。人の男を誘惑しておいて、言い寄られても相手にせずに、わざわざあたしに『あんな男やめなよ』って忠告してくるのよ。ほんと、腹立つ!」

 

M田は背筋がゾッとした。

今まで和歌子だと思っていた女性は、実は貴子だった。

実の姉に対して激しい憎しみを抱いていたことに戦慄した。

 

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