試験の最終日、終業の鐘が鳴ると同時に和也はダッシュで教室を出た。

 

――智さんってどんな人なんだろう?

文章を見る限り、結構年上なんじゃないかな?

走って汗かいたら、臭くなっちゃうかな?

 

 

走りながら 試験以上に脳をフル回転させていた。

 

公園についてベンチに座るけれど、ドキドキして居ても立っても居れず 立ち上がったり歩いたり座ったりを繰り返していた。

 

ところが、1時間待っても智さんは現れない。2時間を過ぎた辺りでメールした。

 

 

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拝啓 智さま

 

僕はもう公園に居ます。智さんはどこにいますか?

 

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ブブッスマホ笑い

 

返信はすぐに来た。

 

 

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ふふふ。

 

カズナリくん。実はね、僕も公園に居るんだよ。

そうかぁ。君もここに居るんだね。クローバー

 

 

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和也は辺りを見渡したが、数組の親子連れが遊んでいる以外は誰も居なかった。

 

――智さん、もしかしたら違う公園に行ったんじゃない?

 

 

 

ブブッスマホ笑い

 

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そろそろ日が傾いてきたかな?

君の座っているベンチにも時計台の影が伸びてきている?

僕はね、時計台の影の先っちょに立っているよ。ブルーハート

 

カズナリくんも立ってごらん。

夕日がきれいだよ。キラキラ

 

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いつの間にか 時計台の影はベンチに座る和也の足元にまで伸びてきていた。

 

そして、夕日はとても綺麗だった。

 

 

ブブッスマホ笑い

 

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僕は君と最後にこんなにも綺麗な夕日を見ることができて、本当に嬉しいよクローバー

こんなこと言うのもなんだけど、カズナリくんのこと大好きだよブルーハート。いつか必ず会えるから。

 

多分これが最後のメールになると思う。

 

安い言葉だけど、万感の思いを込めて。クローバー

 

 

ガンバレ!

 

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―― どういうこと? 智さん どこにいるの???

 

 

何度送っても メールは全てエラーとなって戻ってくる。

 

和也は泣いていた。きっと涙と鼻水でグチャグチャな顔だったろう。それでも嗚咽を漏らし もう二度と届かないメールを打ち続けた。

 

―― ねぇ、もう会いたいなんて言わないから、いつもみたいに "カズナリくん" ってメールしてよ。オレのこと好きなんでしょ?

 

 

 

――日が沈んじゃうよ。智さん!智さん!

 

 

『あのぅ。。。』

 

急に肩を叩かれ、和也は 驚いて振り返った。

そこには同じ制服を着た 小柄な少年が、心配そうに和也を見つめていた。

垂れた目尻とまるい頬のせいで幼く見えた。とても優し気な少年だった。

 

 

『大丈夫ですか?調子…悪そうだから。あ、オレ、高3の大野智っていいます。同じ高校…だよね?』

 

 

『…なんだよ!脅かしやがって!! ビックリしたじゃないか! 

それに、今まで散々人のことガキ扱いしやがって! 歳だって オレと大して変わんないじゃんか!!』

 

しゃくり上げながらも一気にまくしたてると、和也は智にしがみついた。

 

 

智は少し困って、もともと下がっている目じりを一層下げた。

 

 

 

それでも和也を突き放すことはせず、その柔らかい髪を優しく梳いていた。

 

 

 

 

‹(´ω` )/››‹‹(  ´)/›‹‹( ´ω`)/‹‹(  ´)/›‹‹(´ω` )/›y

 

 

 

結局、公園にいた智は通りかかっただけで、メールの主ではなかったのだが、あの一件が縁で 付き合いが始まった。

 

まーくんとも智さんとも 全然違うタイプだ。 

(いや、もしかしたら ちょっとまーくん寄りかな?)

 

智の 何もかもを包み込んでくれる優しさと しなやかな強さに和也は強く惹かれた。

智もまた 和也のいじらしくも面倒くさい愛情表現をたまらなく愛おしく感じていた。

 

今となっては、なにもかもが 智と会うための階段だったとさえ思える。

 

 

思い返せば、智さんの言う通り、子供の頃の自分は 大人達だけでなく、自分と同じ子供達のことも何も分かっていなかったと痛感する。

 

あの いじめっ子のガキ大将は、実は親からDVを受けていたし、侯ちゃんがヤングケアラーだったこともそうだ。みんな 何かを抱えて生きていた…あの頃の和也は そんな当たり前の可能性にも気づこうとしなかった。。

 

智さんが消えたあの日、この世の終わりみたいな顔をした 見ず知らずの和也に、智は声をかけてくれた。

そんな智だから、一緒に居るだけで 人の想いや苦しさに共感する大切さを教えてもらえたように思う。

 

 

その後和也は医大へ進み、研修医を経て医局へ入り5年間 母校の附属病院で働いたのち、二宮医院へ入ることとなった。

これで父は念願の訪問医に専念できるだろう。

 

そして今日は、智と暮らすための新居へ引っ越す日だった。

 

 

ブブッスマホ笑い

 

段ボールを運ぶ和也の尻ポケットのスマホが震えた。

 

――メール…?

 

差出人のAdに 見覚えがあった。

ずっと前…自分が高校生の頃に使っていた、 "kazunari" の文字が入ったアドレス。。。

 

『かずぅ、どした~?』

 

呑気な愛しい智の声が和也を呼んだ。

 

『なんでもない。すごく懐かしい人からメールが来たから嬉しくて。』

 

和也は滲んだ涙を手の甲で拭う。

 

智さんの最後の言葉を思い出した。

 

"必ず会えるから。”

 

―― 会えるって言うか?

 

笑いが込上げる。

 

流れ星に願いを託す悩める自分のために  言葉を文字にした。

 

 

『送信♡』

 

 

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あの…初めまして。

 

もしかしてカズナリくん?

 

 

えっと オレ、智っていいます

 

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おしまい。

 

 

【cast】

 

和也 智さん・・・にのちゃん

智・・・大野くん

雅紀・・・まーくん

潤・・・潤くん

櫻井先輩・・・翔さん

 

候ちゃん・・・よこ

雛子・・・ヒナ

おばあちゃん・・・ちょり

 

その他・・・劇団☆ちょり家

 

 

 

立て続けにお話を描いてみました。

 

感想いただけると嬉しいです。<m(__)m>