バンッと音を立て 勢いよくドアが開いた。

 

『おう!智 来てやったぞ。相変わらずゴチャゴチャしたとこに棲んでんなぁ~。

で? 人生最高傑作ってのはどこにあんのよ?』

 

 

『マサ兄!来てくれたんだ!待ってて、今お茶を出すよ。』

サトシが椅子を勧め 何やら奥に目配せする。


程なく 奥から 透けるように白い肌の青年がお茶を運んできた。

 

『どうぞ。』

 

 

一見可愛らしい童顔が、目を伏せ視線を流すと 薄い唇の端がとクッと上がり、ゾッとするほど妖艶になる。

 

『…ゴーレムか。

マサヒ王が呟いた。

 

『あ、分かっちゃった?和也っていうの。よろしくね。』

お茶を啜りながらサトシが答えた。

 

『驚いたな。確かに最高傑作だ。おまけに…』

――3/4、魂まで入ってやがる。

 

すげーな。と、王は笑った。

でしょ!? もっと褒めて と、サトシも笑った。

 

 

 

‹(´ω` )/››‹‹(  ´)/›‹‹( ´ω`)/‹‹(  ´)/›‹‹(´ω` )/›y

 

 

 

『マサ兄、漸く時間ができたんだね。』

 

『あぁ、ウダナを大人しくさせるのに手間取っちまったからな。』

 

 

シュロウと不可侵条約を結んだウダナは、災害で国力の落ちているミント・アナカを攻めるため、兵を国境沿いに集めていた。

 

無論その他の護りは手薄になる。特にシュロウ側の国境の街、ジェヴァの護りは大幅に削がれた。

 

そこへ ヴェーマからナツツバキの道を辿って 侵入した諜報員やら工作員が 入り込み、内部からジワジワと侵食していった。

 

そうして ほぼ無血でジェヴァ砦を陥落させた。

 

『ジェヴァに潜ったうちの小僧たちを支援してたのはシュロウだけどな。あそこには ウダナとの不可侵条約の年季が明けたら ジェヴァをくれてやる約束をしている。

ウダナは怒りの抗議文を送ったらしいが、シュロウの狸爺は ‟ミント・アナカへの物資供給は公式な交易の一環に過ぎず、ウダナへの侵略行為は一切行っていない!”の、一点張りだとよ。

まぁ、ジェヴァの民には申し訳ないが、戦狂いよりは 狸爺の方がましなんじゃねぇの?』

 

『今回 随分慎重だったね。お気に入りの雅紀や潤、翔にも内緒だったんでしょ。』

 

『ふん。謀りゴトってのはな、うまく行けば ハマるんだよ、スパッとな。でも失敗すりゃ反逆者だ。』

 

『へぇ、自分のお気に入りを護ったってこと?』

 

『んな訳あるか。バカ。適材適所って知ってるか?』

マサヒ王は鼻で笑った。

そうして、サトシを見据え

『翔は…アイツぁ 頭はめちゃくちゃ切れる。でもな、謀りゴトするには…』

―― ちっと正義感が強すぎる。

雅紀は優しすぎる。潤は情に厚すぎる…。

アイツらみんな陰謀にぁ向いてねぇよ。

 

 

マサヒ王の瞳に 憐みの色が浮かんだ。

 

『智、すまんねぇ。 

 

オレに 売れるような魂なんて残っちゃいねぇの。

だから、胸の穴とか感じねぇ。穴を感じるための魂がないんだから。

 

だけど。。。その和也のために 魂のやり取りをするなんてぇのは、神の領域に手を出しちまってる。

超えちゃいけねぇ人の則を超えちまったって そりゃお前、』

 

 

 

お前が魂 売っちまってんだよ。

 

 

 

 

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最初は、すごく上手くできたオートマタをマサ兄に自慢したいだけだった。

でも、なかなか来てくれなくて、人形に和也って名前を付けて話しかけていた。

 

時間が経つにつれ、和也が人だったら、なんて言うだろう?何を思うだろう?って興味が湧いてきた。

 

キスをしたら、どんな顔をするんだろう?

真っ白な頬を薄紅色に染めて 恥じらうのだろうか?

 

抱かせてくれるかな?

どんな声で啼くのかな? 

 

 

あぁ おいら…和也に恋しちゃったんだ。

 

 

 肉体が魂の入れ物なら 和也に魂を入れればいい。

 

 

おいらにはもうかずにあげられる魂なんてないんだと思ってた。だから最後の魂の欠片は マサ兄だと思ってたけど。

そっか。おいらの魂をあげられるんだ。

 

今 胸に空いた穴に風が抜けた。

 

 

 

『おいらの魂、おいらが買うよ。』

 

 

 

その瞬間、虚ろだったカズナリの瞳に光が宿った。

 

サトシは カズナリの温かな頬を両の手で挟み、その艶やかな瞳に映る自分の顔を見た。そして薄い唇に深く深く口づけた。

 

 

意思をもった和也の舌がそれに応える。

 

 

ばっちん!!ムカムカ

 

 

突然の凄まじい衝撃にサトシは目を白黒させ 右頬を押さえて蹲った。

 

 

『痛ってぇ~スター なにすんだよ!? かず!』

 

『王様のいらっしゃる御前で、破廉恥な行為をするからです。ちょっとは 慎みなさいよ。』

 

『え?え? かずだってその気になってたんじゃないのかよ!? 』

そう言いたいのに上手く言葉にできず、サトシは口をパクパクさせてマサヒ王を振り返った。

 

 

『あっはっはは。なかなかしっかりした奴じゃねぇか。

良いコンビだよ、お前ぇらは。

 

それに、今更人様の些末な違反をどうこう言う資格ぁオレにはねぇしな。』

 

 

 

ごちそうさん。茶ぁ、美味かったぜ。

 

 

 

そう言い残し、マサヒ王は帝都へ帰って行った。

 

 

 

 

 

 

おしまい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【CAST】

サトシ…大野くん

和也…にのちゃん

マサキ…まーくん

シ・ヨウ…しょさん

ジュウン…潤くん

 

タツキ…タッキー

マサヒ王…松兄

 

 

 

お粗末さまでした~<m(__)m>