それから数日たったある日、

 

 

雅紀は読んでいた漫画から顔を上げ ソファの対極にいる智と和也を見た。

 

大ちゃん!まだ和ちゃんと仲直りしてないの?

アイコンタクトで智に訴える。

それに気づいた智も、

 

だって、LINEしても未読スルーだし、電話にも出ないんだよ!

 

サインを返した。

 

早く仲直りしたいくせに、和ちゃんたらまた大ちゃんを試してる汗

 

和也はちょくちょく人を試す。

大切に思う人にわざと悪態をついて、相手がそんな自分を見放さずに赦すこと、受け入れてくれることに安心したいのだ。

 

付き合いの長い雅紀は慣れたもので、対応も心得ている。

しかしややこしいことが苦手な智にはなかなかの試練だ。

 

自信なんてないくせに、和ちゃんは大事な人ほど頻回にしつこく試すもんなぁ。

もしもの時は 傷つくのは自分なのに。

 

ー自信がないからこそ試すのか…

 

しかも だんだんひねくれ度も増していくから、全く悪い癖だよ凝視

 

雅紀はため息をつき、ポケットからスマホを取り出した。

 

 

 

‹(´ω` )/››‹‹(  ´)/›‹‹( ´ω`)/‹‹(  ´)/›‹‹(´ω` )/›y

 

 

 

『オレ、今日風間ぽんとメシ行く約束してるから 先帰るわ!』

 

 

収録が終わるやいなや、 雅紀は足早に楽屋を後にした。

 

『オレもこの後 すぐ取材があるからお先に。』

 

『次のツアーの打ち合わせがあるから。。。』

 

いつもは楽屋で人心地ついていく翔と潤も、競うように出て行った。

 

 

潤が 楽屋を出る間際、智にウインクをしたから

 

智はポケットの中の

 

 

薬の小瓶をキュッと握りしめた。

『あれ…オレの帽子、どこ置いたっけ?』

 

和也は被って来たはずのキャップを探している。

 

 

 

 

『かず。』

『な、なに?ハッハッ

 

和也はビクッとして振り返った。

 

『メシ。。。行かね?』

 

                                         『…』

 

 

『なに? なんでジト目?』

 

和也は呆れ顔で ドサッとソファに腰を下ろした。

 

『相葉さんになんか言われたんでしょ?

 

相葉さん、翔ちゃんとJにも 今日早く楽屋出るように 連絡してたんだな。』

 

『なんだよ。 かずだって 前から“メシ行こう”ってしつこかったじゃん。』

 

『そこ!!それよ!

オレが100万回誘っても ウン って言わなかったのにさ、相葉さんが言ったらホイホイメシに誘うわけ?』

 

『…むかっ

 

『あ!!今、めんどくせぇヤツだって思っただろ!?

オレはお前の心読めるんだからな! だてに智専用メンタリスト名乗ってねーんだよ!なめんな!!

 

『…あのなぁ、かず。』

 

智は和也の隣に腰を下ろした。

 

『じゃぁ分かんだろ? オレ、かずとケンカみたくなってんのイヤなんだよ。で?かずはなんで怒ってんの?オレがまるに怒鳴ったことか?』

 

『智が…

 

丸がオレを好きって言ったの、気持ち悪いって言ったから。』

 

『は?』

 

『だって、オレだって男なんだよ? 智だってそうだよ?

もしオレが智を好きって言ったら気持ち悪いのかよ?

じゃぁ、智が オレと最期は一緒に居たい。ってのは気持ち悪いことじゃないの?

そもそも智の好きってなんなの?

 

オレの好きも。。。

 

なんか分かんなくなっちゃった… 』

 

 

『あ…なんか、ごめん。

オレも、“好き”ってのがよく分かんねぇんだよ。好きってのは好きってことなのに、優劣とか種類とか。。。深く考えたことないから。

自分の“好き”だって分かんないのに、丸の。。。他人(ひと)のなんてさっぱり分からないよ。

自分のことはまぁいいや。って思えるんだけど、丸がかずを好きって言うからこんがらがった。

 

丸は かずにチュゥしたいのか?とか、手を繋ぎたいのか?って。』

 

『ん?えっと…それは、気持ち悪いとなんか関係が?』

 

『だって、あそこで “かずを取らないでよ!丸のバカ!!”って、言える? ってかアイツ、なぁ~んかモジモジして気持ち悪かったじゃん!だいたいかずもすげぇ嬉しそうにするから…』

 

『そりゃするでしょうよ!好きって言ってもらったんだから。 悔しかったら オジサンも“好き”くらい言ってみなさいよ!』

 

『かずが好き!』

 

『!!』

 

 

 

『好き!マジで。』

 

『…タラー

 

 

 

『…はぁ~。相葉さんの言う通りだな。』

難しく考える次元がオレらとは違うって言うか、ズレてる…って言うか。。。

 

和也はがっくりと肩を落とした。

 

『ムッ、なんでそこで相葉ちゃんが出てくんだよ?』

 

『とは言え、オジサンも“好き”で迷ってんでしょ?

オレのことは好きとして、で?どうしたいのさ?』

 

『それは…

 

…かずはズルい。

なんでオレばっかなん?

かずこそどうなんだよ!?

 

 

智と和也は バチバチと睨み合い、

 

 

同時に吹き出した。ひとしきり笑った後、一息置いて和也が言った。

 

『オレは、ちょっとだけ勇気と覚悟が足りないんだと思う。たぶんね。…ん゛っ?

 

言い終わらないうちに 、和也はいきなり鼻をつままれ混乱した。そして息をするために口を開けると…

 

はっ!…グッ!?

開けた口に、何か粒状のモノが飛び込んできた。咄嗟に吐き出すこともできず、和也をそれをきっかり飲み込んでしまった。

 

『さ、智? こ、これ何???』

 

智は 小瓶の錠剤を手のひらに出しながら

『これ?松潤にもらった。。。媚薬っての?』

そう言って、自らも錠剤を飲み込んだ。

『媚薬??なにお前も飲んでんだよ!?えぇ!?

 まさか心中?心中しようとしてるの??

も、やだー!!』

 

『ふふ。オレも一緒だと思う。あとちょっと勇気と覚悟が足りない。これでお互い勢いつけられるんじゃない?

 

ねぇ、和也。なんかちょっとフワフワしない?』

 

―― そう言えば 、気持ちよくなってる気がしなくもない。

   目の奥の奥が熱い。

 

『あ、ほら見て』

 

――あの道は…

 

楽屋の壁に、あの合わせ鏡の道が拓いていた。

 

 

『行こう。』

 

――2人そろって同じ幻覚見てるなんて、

   もうキメちゃってんじゃん汗

   J、なんちゅうヤバいもん智に渡してんのよガーン汗

 

躊躇する和也に智が言った。

 

『大丈夫。オレ、この道を知ってるから』

 

 

智が走り出す。和也も智を追って走り出した。

 

 

 

つづく。