幼い頃、母方の祖母に溺愛された。
祖母は祖父の後妻であり

血のつながりは全くない。
しかし5人いる孫のうち

なぜか私だけを溺愛した。

 

似ていると近所の人に言われて

すごくうれしそうにしていた。

飼っていたイヌを怖がったら

人に譲ろうとした。


泊まってるときにムカデが出てきて

ふすまに入り込んだからと

ふすまを外して庭で燃やした。


幼稚園に入るまですべて革靴で

運動靴を持っていなかった。


『ばい菌が入るから』という理由で

祖母の家では砂遊びをさせてもらえず

大むしろにぶちまけた1斗のコメ

遊ばされた。


祖母が知ったら激怒するからと

母もどろ遊びも水たまりに入ることも

させてくれなかった。

幼き頃の感覚は大きな爪痕を残す。
いわゆる潔癖症になってしまった。


人の前で下着姿になれない。
雨に濡れられない。
他人の箸の入った鍋は食べられない。
食べさし飲みさしなんてもってのほか。


嫌いな人間が貸してと

持っていった文房具は

たいていあげてしまった。

 

高価なシャーペンは返してもらったが

洗ってサビて故障した。

泥まみれで水たまりで騒ぐ子ども達を

革靴はいて遠くからさげすみながら

実はずっとずっと

うらやましくて仕方なかった。



転機は突然訪れた。
中2の時

付き合ってた女の子が亡くなった。


白血病…

 

入院してから迫られてw

付き合いだした。

 

哀れみからだったのかもしれない。

両親には内緒だった。(知ってたらしいが…)
 

毎日のように行っては

浴びるほど消毒させられて

笑わせてとりとめのない話をして帰った。


ある日病室に行ったらいなかった。


集中治療室でリカちゃん人形のように

プラスチック包装された彼女を見ながら

『握手すればよかった』漠然とそう思った。


2日後、彼女のママに促されて

握手をさせてもらった。
冷たくて、硬くて、リカちゃんみたいな手を

しっかりと握った。

病院を出たら、雨が降っていた。
一歩、二歩…踏み出していく。


髪の毛を突き抜けて雨が刺さって流れていく。
気が付いたらおいおい泣いていた。
気が付いたら好きになってたらしい。
そのまま、下着まで

びしゃびしゃになりながら帰った。

びしょ濡れの私に母は何も言わなかった。


その日を境に急に平気になった。
汚いとかあまり気にならなくなった。
『どうでもよくなった』と言うのがより近い。
そして今に至る。

人間は小さなことで変わってしまう。
でも、小さなことで変わることもできる。
そう今も言い聞かせている。

今日は彼女の誕生日… 
62のババアのはずなのに、14のまま…

ずるいわw