離婚して行く当てがなかった私を引き受けてくれた3歳年上男性のYさん。
彼を見た時、亡くなった父に良く似ていた。嬉しくて仕方なかった。
車はシルバーの軽自動車。車内は汚い。煙草でシートに焦げがあった。
それが、なんかホットした。
デリヘルの仕事や援交で、ほとんどの男性が高級車で来る。
元夫も私の貯金で新車を3年毎に買い換えてきた
高い車には嫌気がさしていた。瞳が澄んでて、真っ直ぐな人。字も綺麗。嘘も付かない代わりに、出来ないことは決して口にしない人。
ひとりの女を好きになったら一筋。
口の悪さは最悪だけど。
私をババアと呼んでくれた。
自己破産した人。
自分の生活がギリギリなのに、私を住まわせてくれた唯一の人。よほど覚悟したと聞いた。
離婚直後の私は、疲れきっていた。
「俺がいるから心配するな。」
そう言って、家の中でも付いて回って心配してくれた。彼には既婚のセフレさんがいた。
最初から聞いていたが、彼女のシャンプーやリンス、洗顔料を使わせたくないからと、私専用の物を買ってくれた。
1年間、彼女の物を見ながらの生活になるとは思わなかったけれど。
私がいるのだから、当然、彼女を今まで通りアパートに呼べない。
彼女から何度もお誘いのメールが来ていたが、言い訳けのメールを返して凌いでいた。
しかし、女は勘がいい。
「絶対女がいる!」結局、彼女に恨まれながら別れさせてしまった。
最初の頃は、仕事で遅くなるからとたまに逢瀬を重ねていたようだけれど。
最初は遠慮して住まわせてもらったものの、私の為にタンスを買ってくれたりソファーを持って来たり。
一緒にいるうちに夫婦のような錯覚をするようになった。
私の事を愛おしく思ってくれていた。
「好きな女を他の男に抱かせる馬鹿どこにいるんだ!」
外に出掛けると男に会ってくるんじゃなかろうかと、気が気じゃなかったようだ。
「アパートにじっとしていろ!」
私は束縛が大嫌いだから反発ばっかりしていた。
実際、新しい街では仕事に恵まれず、デリヘルや援交もやらざるを得なかった
意見のぶつかり合いで度々、喧嘩をするようになった。
並べてある布団を彼のアパートの空き部屋に移移動して、何度、立てこもり部屋にしたことか。
ある夜、台所に綺麗な字で書いてある手紙が置いてあった。
「○○さんへ
貴女は俺がいくら愛しても、縄で縛ってもスルリと抜けて自由気ままに好きなところへ行ってしまう。
毎日、安い材料でご飯を作ってくれたり、洗濯も掃除もキチンとやってくれて感謝している。
俺の傍で破れた服を繕ったり、裁縫をしたり、家庭的な貴女は見ていて可愛い。
金はないから、何にも買ってあげられないけれど。
貴女は俺なんかから離れて、貴女らしく好きなように生きていって下さい。
きっと、世間の男はあなたをほうってはおかないでしょう。Y」
この後、彼を精神的に追い詰めたとして、アパートをいきなり出される事になったのだけれど。
私の大切な恩人だ。
今はもう、連絡する事も会う事もない。