ホテルに着くといつものように抱き上げられる翔。
今日は特に何も言わないし、逆に翔の方から渡海に抱きついている。
だから、姫抱きと言うよりも本当に子供にするような抱っこの状態で…
部屋に付けばソファに下ろされる。
ベッドルームに直行でも良かったが
「翔、お前あの歌歌ったのは久しぶりだったのか?」
渡海の言葉に頷き
「辞めて以来歌ってなくって…」
「カラオケボックスとかは?」
首を横に振る
それに、歌を唄うだけなら何も起こらなかったのかもしらない。それまでスイッチが入って歌っていた。
しかし、島津の言葉を聞いた途端当時のことを思い出し頭の中が真っ白になった。
事務所を辞めて以降だれ一人としてShoのことを翔に聞く者などいなかったから。
翔自身もARSのことを完全にシャットアウトし、普通に聞けるようになったのは大学を卒業してから。メンバーとだって始めは発作を起こした位で…
本当にあのままいたらまた、倒れていたかもしれない。咄嗟の起点で渡海が連れ出し適切な処置を施し大事には至らなかっただけ。
まあ、渡海と一緒なら事情を理解しているため直ぐに対応してくれるから安心できる所である。
あの時、佐伯や高階も何となくは気付いてはいたが行動に起こせたのは渡海だけ。それは日頃から翔のことを見て…見守っているからできること。
渡海としては佐伯への挨拶の時間すら惜しい一秒でも早く翔をあそこから連れ出したかった。
「そうか…まあ、きっとじーさんが事情を説明してあいつらが翔に何か聞いてくることはない」
そう言われても浮かない顔をし
ポタ、ポタ
「翔?」
「俺、もう大丈夫だって思ったのに…メンバーとだって…話せるようになったのに…なのに…」
なんで、こんなにも自分が弱いのか。
「別にお前は弱くねー。今回はたまたま運が悪かっただけだ。それにちゃんとメンバーのことだって克服しただろ。本当に弱かったらメンバーとの関係を克服できねーよ。まあ、俺はこうやって抱きついてくる翔は、それはそれで可愛いからいいけどよ?」
「えっ?」
「そう言うところ全部ひっくるめて翔だろ?それに、俺は翔が何事にも諦めずに向かって行ける心を持っていることを知っている。でも、たまにはそうやって泣いて俺に甘えろ」
言葉通りに翔を甘やかす。
翔を膝の上に抱き上げ
「今は、好きなだけ泣いていい。後で沢山啼かすから」
本当に渡海は翔を甘やかすのも泣かすのも啼かすのも上手い。こんなにも翔は自分は泣き虫だったか…と思う位
でも、それは渡海だから
渡海だから安心してできること
ひとしきり泣いた翔は
「征司郎さん、ありがとう」
「ああ」
「今度は…俺を啼かせて///」
「上等」
お前の望み通り啼かせて、忘れさせてやる
続く…
裏は今回省きます。
一応話数は取ってはおきますが、時間がないので時間があったら書きます。