ただ寂しいだけなのに・・・ | マーさんのブログ

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日々の臨床について色々書きます

私の患者さんで転倒による頭部外傷のおばあちゃんがいます。

その方はほとんど運動麻痺がありません。

ただ今回の入院により認知症が進んでしまったようです。

入院時は意識障害もあったのですが、徐々に意識も晴れて
来ました。

意識が晴れてくると不穏が強くなり、大声、奇声を上げるように
なってきました。

また、このおばあちゃん最初のころはひたすら脱衣行為を続けていました。

その後、不穏が強まり大声、奇声を上げ始めてきたのです。

病棟では「うるさい」「静かに」「服脱ぐな」といわれていました。

しかし、一向に変化なく、徐々にその状態が悪化していきました。

で・・・よくある薬物治療です。

効かなければより強い薬・・・

という具合です。

その結果、とある病院の精神科への転院となりました・・・・

私は知っています。

このおばあちゃん、慣れない病院という空間に馴染めず
不安がっていました。

家族がいない状況が不安で寂しがっていました。

リハをしている間は比較的落ち着いています。

誰かに相手してもらっていると笑顔になり、冗談が言えます。

ただただ寂しくて不安なのです。

脱衣を繰り返すのも、大声、奇声を発するのも周りの人間にかまって
ほしいから。

赤ちゃんが泣くことでしか自己表現ができないように、
このおばあちゃんは脱衣、大声、奇声でしか自己表現できない
のでした。

思い通りにいかないから叫ぶのです。

家に帰れないから叫ぶのです。

家族に会えないから叫ぶのです。

家族さんの介護量を考えると安易に在宅という選択肢は提示
できないですが、もっと他の道があったのではないのでしょうか?

自分自身もっと何か出来たのではなかったか。

不穏が強く、薬物コントロールできないから精神科へ・・・

なんともやるせない結末です。