三ノ峠山山麓ハイキング | Que sais-je? ク・セ・ジュ――われ何を知る

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エルサルバドルに単身赴任中。
気候がいいので日本よりよほど健康的な生活を送っています。
ドライブ旅行をぼちぼちしていますが、
この国で最も注意しなければならないのは交通事故。
今や治安以上に大きなリスクです。

なおヘッダーは2020年に新潟県長岡市にて撮影。

4月24日(日)。天気予報の良い週末(実際には雨は降らなかったものの一日中曇り空でした)。これは地元の春をまた堪能しなければ、と思いました。

どうせ行くなら、2年前、ケニアに行く前に巡った里山の中で、同じ時期には行ってない所に行って、どんな花が咲いているのかを見てみようと思いました。先週末の悠久山は自宅から近いのでハイキングと見做(みな)さなければ、帰国して最初のハイキングになります。なのでいきなりタフな所に行くのは止めて、選んだのが三ノ峠山。

低い山なので、朝から出発しなくても時間は十分と、家を出たのが12時半。

確かに、山に登って下りるだけなら夕方には帰宅することができました。しかし、私の主目的は登頂することではありません。自然、特に山野草の観察と写真撮影です。

結論から言うと、山の麓(ふもと)からいきなり自然観察にトラップされ、登山口に着いたのが既に3時半でした。なので山頂へは行かず、東山ふれあい農業公園から登山口を入って200メートルくらい進んだところで折り返してきました。そこで今回の記事の表題を単に「三ノ峠山」とせずに、「山麓」の語を付けたわけです。

いつも冒頭にどうでもいい言い訳をする私です。

では、ハイキングの中身へ。今回の記事では、見た景色と動物をお見せします。主目的とも言える植物は、次回から3回に亘ってお見せします。

 

 

長岡高専脇を歩いていると、近くから美しい囀(さえず)りが聞こえてきました。妻(今回は2人で歩いています。出不精の娘はステイホーム)が「そこの家のアンテナにいる」と言うその方向に目を遣ると、鳴いていたのはホオジロでした。

 

 

道を挟んで反対側から「ジーー」という声が交互に聞こえてきます。2羽で呼応しているようです。カワラヒワでした。

 

 

高専脇を過ぎると田んぼになり、眺めが良くなります。写真の峰の右端のピークが、これから登る(とその時は思っていた)三ノ峠山

 

 

空は曇っていてやや暗いですが、風は穏やか。パラモーターをしている人がいました。一つ上の写真で峰の左端、長岡市営スキー場の上から離陸します。

 

 

こちらは頭部が枝に隠れてしまっていますが、コムクドリですね。当地でよく見かける鳥の一つです。

 

 

と、私たちの行く手の方向から「ケーン!」と。キジです。栖吉川近辺に、どれだけの個体数が生息しているのでしょうか。こちらもよく見かける鳥の一つです。

鳴き声を上げた場所は盛り土の隅で、キジにとって見渡しのいい位置です。

 

 

さて、このあたりから道路の左手すなわち山側には、キクザキイチゲや二、三種類のスミレ、それにトキワイカリソウが見られ始めます。三ノ峠山に車で来る人は、この先の東山ふれあい農業公園駐車場から登山道に入るのが普通ですが、私たちは徒歩ですし、第一の目的は植物観察ですので、せせらぎがあって水辺の草花が多い「野鳥の森」から入ることにします。

 

 

その野鳥の森をしばらく歩いていくと、早速野鳥が!

やや小型の猛禽類(もうきんるい)が飛んで来て、背の高い針葉樹のてっぺんに留まりました。トビなどとは異なり、私の初めて聞く一風変わった鳴き声です。

留まっている時にはこちらを向いてくれず、シャッターチャンスは飛び立つ瞬間に訪れました。

帰宅して写真をトリミング、更に逆光補正を施して何とかここまで持っていけました。これを鳥類同定アプリの Merlin にかけるとサシバ (Grey-faced Buzzard) と出て来ました。最初見た時には、その大きさからしてハヤブサの一種かと思っていましたが、タカの一種でした。しかし、上の画像のままではまだハイタカかサシバか、断定できません。eBird など、幾つかのサイトや何人かの方のブログを見て同定を試みます。

 

 

 

頭部を拡大して更に強烈な補正をかけました。ここまで来るとかなり不鮮明で、やや不自然にすらなります。同定のためだけの画像です。これでサシバらしいということが分かりました。決め手は嘴(くちばし)の色。ハイタカは鼻のあたりだけが黄色(あるいは全体が灰色)なのに対し、サシバは付け根の部分全体が黄色いです。

また、サシバは白い顎(あご)の中央に太く黒い筋のあるのが特徴的です。この画像でははっきりとは確認できませんが、そのように見えなくもありません。

渡り鳥で、ウィキペディアによると、「中国北部、朝鮮半島、日本で繁殖し、秋には南西諸島を経由して東南アジアやニューギニアで冬を越す。一部は南西諸島で冬を越す。日本では4月頃夏鳥として本州、四国、九州に渡来し、標高1,000m以下の山地の林で繁殖する」とのことです。時期も場所も該当します。

それと、環境省のレッドリストでは「危急 (Vulnerable)」に記載されています。(日本における)絶滅危惧種です。

野鳥の森で大物をゲットできました。

 

 

野鳥の森の奥、「瞑想の池」の先にこの看板が立っていて、その前にて昼食です。行きがけに途中のコンビニでおにぎりを買っていて、最初にベンチか腰掛を見つけたらそこで食事を取ろうと思っていたのですが、様々な野花や上のように野鳥にトラップされ、更にはここまで腰を下ろす所が見つからなかったため、かなり遅い昼食になってしまいました。時刻は既に午後3時。立ち止まらずにひたすら歩けばここまで1時間余りのところ、実に2時間半もかかってしまいました。

この時点で登頂は諦め(このペースで歩いていたら山頂に付く前に日没です)、その先の東山ふれあい農業公園から登山道を少し入ったあたりで引き返すことにしました。

それにしてもこの絵地図、確かにトポロジー的には合っているのでしょう。つまり、どの道がどこに繋がっているのかは正しいのでしょう。しかし、距離も方向もかなりいい加減で、私の頭の中にあるコンパスは、却って狂わされてしまいます。

 

 

農業公園への短い上り坂にニホンカナヘビ――というより、慣れ親しんだ呼び名で呼びましょうか、カナチョロ――がいました。しばらくじっとしていたので、余裕でしっかりと撮影することができました。

 

 

写真を撮ってその場を去ると、すぐまた別のがいました。先のよりやや若いようです。

ここはカナチョロ多発地点です。

そこを上ると農業公園の、八重桜の咲く芝地に出ました。

すると一人のおじさんがカメラと三脚を持って立っていて、「そこにアナグマがいるんですよ。静かに近づけば逃げないでしょうから」と。

ブッシュのどのあたりにいるんだろうと、彼の指し示す方向に目を遣ると……。

 

 

いた。ニホンアナグマが、ブッシュではなく、芝地のど真ん中にいて、盛んに地面をもごもごやっています。草を食べているのでしょうか、地面にいる虫を食べているのでしょうか。

そっと近づくと、全く逃げる気配を見せずに、一心に地面をもごもごしています。

 

 

この芝地から眺めた長岡市街。うららかな春の陽気にこの景色で、気分は快適です。

写真からは外れていますが、左手に柏崎の頸城三山(くびきさんざん)と呼ばれる米山、八石山(はちこくさん)、黒姫山が見えます。しかし春霞(はるがすみ)にやや朧(おぼ)ろげです。

 

 

アナグマはひたすらもごもご。

 

 

この位置から三ノ峠山の山頂を見上げます。山桜が何か所かで咲いています。上まで行かなければ見られない花も色々あろうかと思いますが、もはや登っている時間はありません。

男の子が上の方からやって来ました。私はすかさず「あそこにアナグマがいるよ!」と自慢げに言って指さします。

彼、「えっ」と言って目を遣ると、「犬かと思った」。確かに、遠目には犬のように見えます。

すると彼の後を追って、お母さんと思しき女性と、もっと幼い子が下りて来ました。私たちのいる前に来ると、女性が「○○~!」(←何て言っていたか忘れた)と叫ぶので、私はマスクをした口に人さし指を立てて、「アナグマがいるんですよ」と言うと、彼女、「あっ」と言って慌てて黙って、静かにアナグマと、それを見ている男の子に近づきます。

しかし幼い方の子が大声で「××!」(←忘れた)と言うと、初めてブッシュの方に逃げ去るアナグマ。女性、ちょっと残念そうに、子供たちを連れて立ち去ります。ただ、幼い子にはブッシュの中に隠れたアナグマが見えていたようで、「どうぶつ、そこにいるよお!」と言いますが、女性はとっとと下りて行ってしまうのでした。

 

 

するとアナグマは元の場所に戻って、それまでしていた行動を続けます。よほどこの場所が好きなようです。

最初に書いたように、私たちは、そこから登山道を200メートルほど進んだところで折り返してきましたが、その区間の道の両側には、見事なほどにナガハシスミレとトキワイカリソウが咲き乱れていました。

写真を何枚か撮りましたが、いずれも道中で見てきたので「本日見た花」のポイントゲットにはなりません。

 

 

下の芝地で見たホオジロ。覆面レスラーのような顔をしていますが、囀りは可憐です。

 

 

ここにも絵地図が立っていますが、こちらの方が、先ほどのと比べて、位置関係が実際に近いです。

 

 

行きは高専脇のルートを通りましたが、帰りは悠久山を挟んで反対側の長岡大学脇のルートを。そのの長岡大学の近くに、またホオジロが。

 

 

街中に戻ってきたらだいぶ暗くなってきました。栖吉川の、写真右に見える市民体育館そばに来たところで日没。6時半近くです。

動物はアナグマやサシバという収獲があった本日のハイキング。植物も大いなる収穫です。この前の週末の悠久山では見なかった花もたくさんありましたし、見たのと同じ花については更に様々な写真を撮るができました。