ナイロビ・ギャラリー | Que sais-je? ク・セ・ジュ――われ何を知る

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エルサルバドルに単身赴任中。
気候が良く日本より健康的な生活を送っています。
ドライブ旅行をぼちぼちしていますが、
この国で最も注意すべきは交通事故。
今や治安以上に大きなリスクです。

なおヘッダーは2020年に新潟県長岡市にて撮影。

前回の記事にも書いたように、ケニアではコロナ第3波到来により、私の職場は3月22日より在宅勤務。国の措置としても、ナイロビを含む5郡をまたぐ往来は原則禁止、夜間外出禁止令もそれまで午後10以降禁止だったのが午後8時以降に繰り上がり、先日の発表では、この措置はとりあえず5月29日まで続けるとのことでした(日本と同様、コロナの状況次第では期間が短縮されたり延長されたりするでしょうが)。バーは全面禁止、レストランも店内での食事は禁止です。

「巣ごもり」モードになって1か月です。その間、外出は平均して3日に1度でした。5日間連続でコンパウンドの中にこもっていた時もありました。

さすがに、不要不急ではあっても、たまには市内観光をして気分転換を図らねば。

「不要不急の外出を控える」というのは私の派遣機関からの指示で、完全に禁止というわけではありませんし、文化施設は開館・開園していますから、ケニア政府の規制としてもOKということです。

そこで4月24日の土曜日には、ナイロビ博物館の次に訪れたいと思っていたナイロビ・ギャラリー (Nairobi Gallery) に行くことにしました。下にお見せするように、アフリカの現代芸術作品や工芸品、民俗資料(装飾品など)が展示されています。ナイロビ博物館やカレン・ブリクセン博物館と同じく、ケニア国立博物館 (National Museums of Kenya) が運営しています。つまり国営です。

ナイロビの中心街とも言える「セントラル・ビジネス・ディストリクト (Central Business District, CBD)」の一角にあります。閑静な住宅地であるカレン地区から来た私としては、街の騒々しさにやや圧倒されます。

 

 

このギャラリーははじめ、1913年に住民登録などを行う役所として、いわば市役所の市民課として建てられたとのこと。歴史を感じます。

入館料は市民(citizens、恐らくケニア国籍または永住権の所有者のこと)が大人150シリング(1シリングはほぼ1円)、子供(16歳以下)100シリング、東アフリカ居住者が大人600シリング、子供400シリング、非居住者が大人1,000シリング、子供500シリングです。

私は、つい先日入手した「現在労働許可証申請中」のレターのコピーとパスポートのコピー(現物は現在外務省に預けてあります)を受付で見せたら、問題なく居住者料金で入館できました。

なお現金は受け付けていないので、私は電子マネーの M-PESA で支払いましたし、それを持っていない人は、クレジットカードで払うことになります。

では、以下に展示品の中から私の注意を引いたものをお見せしましょう。それほど広くない施設ですが(というか、狭いと言うべきかもしれません)、販売されている美術品が展示されている一室を除いてすべて撮影可能とのことでしたので、たくさん撮らせていただきました。

 

 

これが中央ホール(と言っても直径数メートルの狭さ)。

 

 

その中央にはマグダレン・オドゥンド (Magdalene Odundo) 作の壺。

 

 

入口を入って左手の部屋には絵画が陳列されています。しかし画家名やタイトル、作成年などの情報が全く表示されておらず、ただ絵だけが並べてあるだけです。展示室というより倉庫です。

 

 

次に入口右手の部屋から反時計回りに展示室を回りました。カンバ (Kamba) 族のビーズ工芸品が幾つか展示されているうち、私の目には、このバッグが最も立派な作品に見えました。

なおウィキペディアによると、カンバ族はケニアで5番目に人口の多い民族で、2009年の国勢調査では400万人弱だそうです。

 

 

真鍮(しんちゅう)の作品群。これらの作品は「ロストワックス (lost wax)」という技法で作られたとのこと。この技法についてはウィキペディアにも説明があります。

 

 

この象さんの形はロストワックスで作られたとしても、文様は後で施されたものでしょうか。

 

 

水入り瑪瑙(めのう)(water agate) で作られた首飾り。この石は日本でもパワーストーンとして知られているようです。何百年も前の、現在のベナンにいた(今もいますが)ヨルバ (Yoruba) 族で重宝されたようで、これは「シャンゴ (Shango)」(←ウィキペディアにも説明あり)と呼ばれる雷神を祭る司祭が身に着けていたと説明板にあります。

そのような超自然的なパワーがあるかどうかは分かりませんが、少なくともこの大きさですから、頸の筋肉は鍛えられそうです。あるいは血行が悪くなってかえってダメか。

このように、この美術博物館にはケニアや東アフリカの民族資料だけでなく、アフリカ中の物品が展示されています(ちなみにベナンは西アフリカの国)。

 

 

こちらはハラール装飾 (Harrar ornament) と呼ばれる装飾で作られた結婚式用の首飾り。これもかなり重そうですね。

ハラールとはエチオピアの地名で、高原地帯でコーヒーの産地でもあるそうです。世界遺産にも登録されている場所です。いやあ~~、行ってみたい!

ショーウィンドには「銀 (SILVER)」とのプレートが掲示されていましたが、これも色からして真鍮ではないかしら。あるいは真鍮のメッキがしてあるのか、逆に真鍮に銀メッキがしてあったのが剥がれたのかもしれません。

 

 

アラワル (Alawaru)」と呼ばれるマサイ (Maasai) 族の頭飾りで、ライオンのたてがみで出来ているとのこと。

 

 

タンザニアおよびジンバブエの親指ピアノ。こういうのを見ると弾いてみたくなりますよね。でも展示品なのでさすがにそれはいけない、と思いつつほかの展示品を見たら、脇に「コロナ感染予防のため、触ってはいけません」との注意書きが。ということは、コロナでなければ触ってもいいということか?

 

 

「Ag MWASHA」のサインがある絵ですが、説明板が掲示されておらず、それ以上の情報はありませんでした。色遣い、それにどこかの民族の肖像というモチーフが気に入ったので撮影。幻想的な絵です。

 

ネットであれこれ調べたら、タンザニアの画家、アグリー・ムワシャ (Aggrey Mwasha) であることが分かりました。Nafasi Art Space のサイトで確認。2019年の展覧会のページなのですが、その絵をクリックすると「価格は要交渉 (Price upon request)」とあります。実際に幾らで買われたのかは分かりませんが、下に述べるムルンビ夫妻が亡くなった後の話なので、ケニア政府が購入したということですね。

 

民族は、首飾りの感じからしてマサイ族の可能性が高そうです(分かりませんが)。表題は「家族のアクリル (Family Acrylic)」。「アクリル」というのは、アクリル絵具で描いたということでしょうか。

 

 

 

こちらの作品のモチーフはだいぶ違います。ウガンダの芸術家、フランシス・ナッゲンダ (Francis Nnaggenda)(←誤って "N" を2回打ったわけではありません。本当に "Nn" で始まります)の作品で、コンピュータとグローバリゼーションがアフリカの文化を分断してしまったことを象徴しているのだそうです。中央部には電子部品――恐らくコンピュータの部品――の基板が貼り付けられています。

 

 

かつてのケニア副大統領、ジョゼフ・ムルンビ (Joseph Murumbi) と妻のシーラ・ムルンビ (Sheila Murumbi) が1963年から1977年までの間に住んでいたという豪邸の一室を模したコーナー。ナイロビ・ギャラリーの展示品の多くは彼らのコレクションです、というか、このギャラリーは彼らのコレクションや彼らがパトロンになった芸術家の作品をを展示するために創設されたようなものでしょう。

 

 

やはりウガンダの画家、ジャック・カタリカウェ (Jak Katarikawe)。シャガールを思わせるような幻想的な画風ですね。たぶん影響を受けているのだと思います。

それにしても、これは、牛が「ナニ」しているところですよねえ。そう思ってあらためて上に乗っかっている方の、恐らく牡牛の顔を見ると、確かに目つきがイヤらしい。しかし下の恐らく牝牛の顔も、まんざら嫌でもなさそうな様子です。

背後で顔を突き合わせている2頭。見て見ぬ振りか、あるいは、呆れているようにも見えるし、戸惑っているようにも見える。今まで牛の顔をまじまじと観察したことがない私としては、彼らの表情を解釈しかねます。

色遣いもモチーフもユニークで、夢幻のようでもあれば、生々しい現実感があるような。見れば見るほど不思議な絵です。

 

 

最後は西アフリカの幾つかの国にいるフラニ (Fulani) 族の「WEDDING CLOTH」。どうやら新婚夫婦に送られる毛布のようです。なかなか日本人には思いつかない柄です。

というわけで、ギャラリーの建物は小さく、館内にいたのは40分程度でしたが、アフリカ感が満載で、色々と興味深いものを見られた充実した時間でした。

なお、このギャラリーはネット上でバーチャル見学できます。

 

 

是非、探索なさってみてください。