駒形十吉記念美術館 | Que sais-je? ク・セ・ジュ――われ何を知る

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エルサルバドルに単身赴任中。
気候がいいので日本よりよほど健康的な生活を送っています。
ドライブ旅行をぼちぼちしていますが、
この国で最も注意しなければならないのは交通事故。
今や治安以上に大きなリスクです。

なおヘッダーは2020年に新潟県長岡市にて撮影。

長岡にある文化施設を今年も二、三訪れて、最近はだいぶ駄目潰しに近い状態になってきました。しかしまだ行き残しているところも幾つかありますし、ケニア赴任まで残す日もわずかになってきました。

行きたかったところの筆頭が、駒形十吉記念美術館。この駒形十吉という方、大光相互銀行の社長として同銀行を興隆させ(その後一度潰れかけましたが)、また新潟総合テレビ(NST)の社長も務めた地元の名士で、平べったく言うと、大金持ちの美術品コレクターということになります。本人は1999年に逝去されていますが、小さいけれども立派な美術館を遺されています。NST長岡支社が隣にあります。

実は自宅から結構近いところにあるのですが、なかなか行く機会がなかった。いや、機会なんてのは作ろうと思えばいつでも作れるのですが、いつでも作れると思っていたからこそ逆に今まで作らずにいたとも言えるでしょう。

 

 

まごまごしていたら、年末に近づきました。今年は12月13日(日)をもって休館になり、来年3月に再び開くとのこと(つまり本記事をアップした本日は既に休館中です)。若干慌て気味に、9日(水)、自宅で仕事を終えた後、閉館(17時)前にと思って16時過ぎに、駆け込んだに近い状態で入りました。

 

 

玄関前の植木にしか過ぎないのですが、気のせいかどことなく芸術的な形をしていますよねえ。

それと、周囲の植え込みに雪囲いが施されているのにも注目。冬の雪国ということです。さあ、いつでも来い、雪!(2020.12.15追記:気象庁のサイトによると、18時現在で長岡の積雪量は40センチ。ついに雪囲いが機能し始めているはずです)

展示作品数と美術館の規模からすると、入館料の500円というのは高く感じられる方もいるかと思いますが、私設美術館であること、それに作品の価値、贅沢で落ち着いた展示室の演出、これらすべてを総合すると、納得の金額です。

このような美術館なら当たり前ですが、私が受付で「やっぱり撮影禁止ですよね?」と聞くと、単純明快に「はい」と。普段の記事で、中途半端に綺麗な(と自分で思っている)画像と中途半端に巧い(と自分で思っている)文章と、単に自分の勉強の成果を見せびらかせて喜んでいるだけの蘊蓄との合わせ技で何とか記事のクオリティをごまかしている私としては、その一角である画像が貧弱なのは、非常に辛いところではありますが仕方がない。今回は言葉での表現に頼ることにします(もっとも、名画伯の作品をお見せしたところで「虎の威を借る狐」でしかなく、拙ブログの価値をなんら高めるものではないですが)。

さて、今回の企画展は「女・華 その美しきものたち」。表題の通り、女性や花を描いた作品を中心に展示してありました。

目を引いた画家の作品を2人。いずれも有名で、この美術館の目玉でもあるので、私のこのチョイスは余りに平凡ではありますが。

まず、平山郁夫。女性像の展示は3点。いずれも52.8cm×40.6cm前後のサイズですから、日本画の規格でいうところの10号あたりに相当するのでしょうか、それほど大きくはありません。しかし、実に訴えるものがある。吸い込まれて行きそうです。題材はガンダーラ、ウィグル、インドといったアジア諸国の女性の顔。素朴に見えて、見ていると、奥に秘めたものを感じてきます。凝った技法には見えず、奇抜さは全くない(彼の他の作品同様、日本画にしてこの画法・色遣いは奇抜と言えるかもしれませんが)。一見、素人でも巧く描けば描けそうにも思ってしまうのですが、この単純さから、この人間味、この情緒はなかなか出て来ないでしょう。女性たちの表情が豊か、というわけでもないんですよ。みな澄ましている。しかし単に澄ましているのではなく、単純に見えて、実に精緻、否、精緻なのではなく、繊細なのです。繊細の極みです。それが描かれた彼女たちの顔に表れている。

次に、加山又造。妖艶という言葉がまさにぴったりくるような裸婦像が4点。とにかく妖(あや)しくて艶(つや)やがあって、……って妖艶を訓読みにしただけか。銅版画、平版画の暗い線画であることが、ますます妖しさを増してくるのです。

 

 

地元の名士のコレクションである名画伯の作品は載せられませんので、せめて黄昏(たそがれ)の帰途に写した光景でもお見せしましょう。長岡高校グランドを仕切る立木のシルエットです。左上端と右上端から中央に向かって黒い斜線が見えますが、これらは防球ネットのワイヤーです。

こんなんでお茶を濁しているようでは、拙ブログも知れたものです。