疲れた。
二千字とか書いた事なかった…。

ん-難し。
今回はこれで一旦。
次で最後だけどまた今度。
先楽しみにしてたらすまん。
いや、いないな。


んじゃまたいつか
アデュー
青年は自分の体の事ばかりでよく周りを見ていなかったが、ここはどうやら洞窟らしい。

薄暗く、石で構成された天井。
そこからぶら下がっている明かりは点滅を繰り返して不気味さを醸し出している。
広場のようなその場所は
完全に見渡す事はできず
暗闇から一体何かが飛び出してくるかもしれない。
そんな不安を煽る。


青年が降りてきた未来的な建物から、
一昔前のように寂れた古びた場所となった。


降りて来れるってことはここも何かの実験場か?

そんな事を思案する青年だが、彼にそんな暇などない。
いかんいかんと、
再び拳を握り直し構える。


「対象目視できる距離に到達まで、10・9・8・7・6・5…さらに加速しました!
来ます!!」


青年は三九の声を遠く感じた。
実際遠いわけではない。
無線は耳元でうるさいくらい響いている。
遠いのは青年の意識だった。

驚かないと決意したのに。
その決意を粉々にあっさりと砕かれてしまった。
目の前一杯に広がる巨体によって。


まず見た目から人間などではなく異形の存在だというのは理解できた。

全身に覆う紫の鱗。
下地の肌の色さえ不快な緑色をしている。
頭部は鰐のようで
凍り付くような目つきと開けられた口から覗く鋭い牙が恐怖心を自然と抱かせる。

それが二本足で立ち、
青年を見下ろしていた。
そして大きさが完全に規格外なのだ。
青年の目の前に現れたこの異形はそのまま青年の視界を覆った。
推測するなら4メートルはあるだろうか。
その鰐は、
すぐにでも喰らってやると不敵に笑っているようにも見える。


有り得ない。
青年の覚悟は踏みにじられた。
しかしその巨体を見て、すぐに余裕を逃げるために作り出す。

…こんなにデカイんだ、動きも鈍いに決まってる!
何かされる前にぶっ殺す!!


しかし彼は間違った判断をしていた。
この鰐は、「急速」に青年の前まで接近してきたのだ。
なぜ、これ程の巨体が急速に動けたのか。
それは対象自身が種を明かす事となる。


先手必勝と即座に走り出す青年。
X01の人工筋肉と自らの筋肉の活性により凄まじい脚力で地面を蹴って進む。
蹴られた地面は無残にえぐれ青年の足跡を派手に残す。


巨体の真後ろに素早く回り、
青年は拳を振り上げて巨体を殴り飛ばそうとした。
もし巨体が鈍かったのなら反撃もされず、
その拳は綺麗に決まり鰐の体に何らかのダメージがあったであろう。

しかしその拳はあっさりと受け止められる。
手によって。

鰐の体から腕が生えた。
と言ったらあきらかに異様過ぎるが、さらに背中からと付け足したらもっと異様だろう。

そう、鰐の背中から腕が生えたのである。
立ち上がっている後ろ足や前方の前足とは全く異なったものが。

その腕には鱗といったものが存在せず、
気持ち悪いくらいに人間の腕であった。


そして鰐は背後の青年を見て笑う。
今度こそ口の端を吊り上げて。


「なっ…!!!」

青年は鰐の予期せぬ変化に驚きつつも、即座に拳を引っ込め体勢を整えようとするががっちりと握られた拳は、びくとしない。
されるがまま鰐の腕によって体ごと投げ飛ばされた。
宙を舞い数秒起たぬうちに石の壁へと激突する青年。

……いってえ!!!

派手な音を立て、岩肌に減り込んでいるというのに彼はそれくらいの衝撃しか伴わないようだ。
引力の法則に従い壁から地面へと落ちる青年。

そこに少し怒った調子の三九の声がマイクから響き渡る。


「何やってるんですか!!
スーツは確かに丈夫にできてはいますが無敵ではありません。
攻撃を避けつつ相手を倒して下さい。さあ起き上がって!」

「は、はい!!」

また鬼の怒声を聞くのは嫌らしく、即座に立ち上がって身構える青年。
鰐のようなものを睨みつけ三九の言った事を体に実行させようとする。

しかしどうやら、
そんなに簡単にはいかないようであった。
驚きも引っ込んで飽きれが彼の頭を埋める。
入りきらないものは彼の口から。
そして目一杯の溜息とともに青年は独り言を呟いた。


「これ全部…、どうやって避けんだよ。」


気が付けば、
鰐の全身から無数の腕、足が生え、気持ち悪く蠢いていた。
恐らくこれが高速で移動できる理由だ。
一本一本腕や足を使い
百足のように移動する。


青年はその様を想像して吐き気がしたが、
諦めたように鰐と向かいあった。
今度は背後からなどという卑怯な事をせず。
真っ正面から相手を倒す事にする。

なぜなら、


「どこからやっても同じだろうからな。」


青年はまた独り言を吐くと真っ正面から異形に突っ込んでいった。


「ぼっーとしてる場合じゃないですよ。
起動は確認しました。
次は神経接続を行いますよ。
こっちでやるんで少し待ってて下さい。」


三九の声がどこかに行きそうになっていた彼の頭は正気を取り戻させた。
青年は彼女の言う通り待つ事にした。

神経接続。
その響きに青年は何か嫌なものを感じていた。
神経を接続…?
それがまさに的中するのだが。

再びマイクから三九の声が響く。

「準備できました。
じゃあ接続しますからね。3、2、1、0「いってええええ!!!!!!!!!!!!」

三九のカウント0を言うが早いか青年は間抜けな叫び声を上げる。

理由としては、
神経接続。つまりそのままだが、神経を接続するというわけである。
青年の体を覆うスーツにある神経管を体に直接刺して体とスーツを一体化させたのだ。
そうすることによってX01の機能をすべて使う事が初めてできるようになる。

しかし刺さる瞬間は無痛というわけではなく、
全身に針が刺さる痛みを味わう事になる。
それが彼に間抜けな叫びを上げさせた。

その叫びを無視しつつ三九の声が次の手順を説明する。

「じゃあ次は、体がちゃんと動くか試してみて下さい。本来、もう対象が襲ってきてもおかしくないんですよ?」


「いや待って、マジで痛いいい!!!!!!!!!…あれ…?」

気が付けば青年の体から針の痛みはなくなっていた。
代わりに体が一回り大きくなったような…、
そんな錯覚が青年に起きる。
青年は不思議に思いつつも三九に言われた通り動作を確認してみることにした。
すると、石の様な体が驚くほど簡単に動く。
機械によって二回り程大きくなった青年の体が、
青年の思う通りにまるで機械ですら自分の体のように動いた。

「問題なく動きます。というかなんですかこれ。体が大きくなったような気が…」

「まあ、簡単に言いますとX01内の人工筋肉があなたと繋がったんですよ。
さて、問答してる暇はないようです。」

三九の声色に若干の真剣味が宿る。
しかしどこか楽しそうに。

「暇がないって…?
近くまで来てるんですか!?」

「そのようです。
熱反応急速に接近!
最後に頭部シールド着けて下さいね!
また音声入力です!」

三九の声に段々と余裕がなくなっていくのを感じ、
青年は急いで頭部シールドを展開する。

「頭部シールド…えっと!装着!」

「ショウニン。頭部シールド展開。」

また無機質な声が何処からか聞こえると青年の背後の機械が組み変わり、
頭部を包む見た目は西洋鎧の兜のような物が一瞬で出来上がった。
それは機械音を発した後、完全に青年の頭部を覆い尽くす。

青年は何が起こったのかわからなかったが、
真っ暗になった視界が徐々に明るくなっていき目の前に画面のようなものが表示される。

そこに写し出されているのは意味のわからないパーセンテージと、さっきまで青年が見ていたものと全く同じ光景だった。

もう驚かない。
青年はそう決意し、
オペレーターに確認を取る。

「展開できました。
対象は何処ですか。」

「シールド展開確認。
対象は真っ直ぐこちらに向かってきています。
速やかに迎撃の準備をしてください。」

「了解。」

青年は自分の拳を力いっぱい握って身構えた。
それに呼応して鉄の拳が鈍い金属音を鳴らす。

これから迎える敵に失礼のないようにと少しばかりの礼儀と、
相手を叩き潰すという闘争心を胸に秘めて。