「やめてよ」
俺の手を振り払って、ケビンは立ち上がる。
キソプの隣へ移動して、甘えるように肩に寄りかかる。
手中のタブレットに集中しているキソプの反応は今ひとつだが、気にならないらしい。
ケビンはイヤフォンをつけて、目を閉じた。
「懲りないね」
突然かけられた声に、俺は隣を見る。
ケビンとは反対側に座っていたフンは、俺ではなくキソプとケビンの方を向いていた。
「何の話?」
「ケビン。というか、ジェソプ」
二人を見るように、遠くを見るように視線を投げている。
「時々、本気で苛立ってるように見えるよ」
少し声を小さくしてフンは言う。
「それでいいんだ」
答えると、フンはやっと俺を見た。
「苛立つほうが正しい」
怪訝そうなフンに、俺は言い足す。
「苛立たせるのは正しいの?」
非難というよりは、純粋に疑問を抱いた様子でフンは言った。
「もちろん」
俺は頷いて、口角を上げた。
*
笑顔は、横顔ばかりだった。
近付けば巧妙に逃げられ、たまに話をする機会があっても態度はそっけないものだった。
数人の中の一人なら、他の誰かに笑いかけるところを見ることはあったが。
だから、目で追うようになったのは、自分のせいじゃない、と思う。
そして気付いたのは、あまりにも笑顔が多いことだった。
俺に対して笑顔がないことへの不満なんかではなく。
もちろん嫉妬でもなく。
いつも、見る度に、その横顔は笑みを浮かべていたから。
――― たまには、機嫌が悪くてもいいんじゃねえの。
実際、機嫌が悪いときはあった。
常に最悪な寝起きを除いても、空気が尖っていると感じることは。
それでも、あからさまに態度に出すことはなかったし、他のメンバーに比べて頻度も少なかった。
笑顔の天使?
同じ人間なのに?
ファンの前で態度が違うのはプロとしての努力で、それについては何も言うことはない。
気に入らないのは、それがメンバーに対しても通ると思っている節があることだ。
*
「今日、ケビン調子悪いね」
控え室のソファで眠るケビンを見て、キソプが呟く。
本当は、眠っているのではなく、目を閉じているだけに見えた。
「昨日、遅かったから」
「そうだけど」
日付が変わってから開放されることは珍しくないが、世間的には充分に「遅い」時間だろう。
心配そうに見つめるキソプに、ケビンは気付いているだろう。
しかし、もし口に出して尋ねれば、大丈夫だ、と笑うのだ。
「まあ、本当にダメだったら言うだろ」
少なくともイライか、スヒョン兄には。
でなくては困る。
体調不良に愛想の良さは通用しないのだから。
「そうだよね」
キソプが納得したように答え、待っていたようにケビンが目を開ける。
身体を起こし、何度か瞬きしてキソプを見る。
「起きた? 何か飲む?」
メイクが終わっているから、目を擦るわけにはいかない。
残念。でも眠そうな演技は完璧だ。
「ん、いいや。ありがとう」
笑みを見せつつキソプの問いに答え、大きく伸びをする。
ソファに座りなおすと、部屋の反対側で盛り上がるスヒョン兄たちに視線を向ける。
少し虚ろ気な表情は変わらないが、きっと安心したのだろう。
その中に混ざる、イライの姿を見て。
「やっぱり何か貰おうかな」
俺たちが座る机に近付き、ケビンは置いてあったペットボトルに手を伸ばした。
「喉渇いちゃった」
キャップを空けて飲み始めたところで、控え室のドアが開いた。
ドンホが戻ってきたのだ。
「僕の撮影は終わり。次はキソプ兄だって」
ドンホはそう言って、キソプを見た。
「オーケー」
キソプは返事をして立ち上がり、部屋を後にする。
戻ったドンホは机からまた別のペットボトルを手に取り、スヒョン兄の輪に加わった。
俺と二人で残されたケビンは、ドンホを目で追って、そのまま視線を釘付けにする。
さて、どうしたものか。
こうしてケビンを独占できるのは珍しい。
ケビン自身は面倒だと思っているかもしれない。
音楽でも聴いて、無視を決め込むか。
また俺に絡まれる前に。
ケビンはドンホを見つめたまま、イヤフォンが肩にかかっていることを確認した。
それから、わざとらしくあくびをする。
そうか、ソファに寝に戻る気か。
俺は席を立とうとするケビンの手首を掴んだ。
「何?」
注意深く警戒心を消した顔と、裏腹に硬くなった声。
不意打ちには成功したらしい。
そうやって表情を作って、それが通じると思ってるの。
表情を作らなければいけないと、どうして思ってるの。
俺の苛立ちは、うまく隠せただろうか。
それとも見抜かれているのだろうか。
ケビンのように。
小さく息を吸って、俺は言った。
「どうして俺のこと避けるの」
部屋のドアに貼られた手紙は、ジェジュン兄の筆跡だった。
『帰ったら、ヒョンの部屋の方に来て』
オレは手紙を剥がして、ヒョンの部屋に向かう。
何か食べるものあったら嬉しい。
久しぶりに、ジェジュン兄の作ったものが。
合鍵は持っていたが、使ったことは何度もない。
同じ形のはずなのに、何故か少し重く感じて、ゆっくりとドアを開けた。
「ヒョン、入りますよ」
靴を脱いで、廊下を進む。
灯りの落とされたリビングでは、ソファで誰かが寝ていた。
「ジェジュン兄?」
アームレストに乗せられた頭には、大きなヘッドフォンがついている。
「お帰り。遅かったね」
振り向いて返された言葉に、ドキリとした。
「ユチョン」
ユチョンは起き上がって、ヘッドフォンを外した。
「ジェジュン兄は?」
「出かけた。じゃ、お前の部屋に行こうか」
「なんだ、せっかく手料理が食べられるかと思ったのに」
呟いた言葉に、ユチョンは笑う。
「俺じゃ不満なのかよ」
言ってることと顔が合ってないよ。
「手紙、ヒョンの字だったから」
頭をかきながらオレが答えると、ユチョンは大きく伸びをした。
「行きがけに貼ってって貰ったんだ。ジュンスが来ないと、俺帰れなかったから、よかった」
「ここの合鍵、渡されてないの?」
「うん」
ソファの横に置かれたバックを取って立ち上がり、廊下へ向かう。
「ヒョンは俺の部屋の鍵持ってるけど」
「変なの」
言ってみたものの、自分の部屋の鍵は、ジェジュン兄に渡していなかった。
オレがいない時にヒョンだけが入る理由がないからだ。
といっても、ヒョンがいない時にオレが入る理由もないのだが。
今日だって、居ると思って鍵を開けた。
「ねえ、ジュンスの部屋の合鍵ちょうだい」
靴を履きながら、ユチョンが言う。
「どうして」
「今みたいなときに、ジュンスの部屋で待てるように」
ジェジュン兄を煩わせずに。
その方がいいかもしれない。
こんな夜は、きっと滅多にないけど。
「うん、いいよ」
靴を履き終わって身体を起こすと、ユチョンが言った。
「電気消すよ」
玄関の照明が消えて、フットライトが微かに辺りを照らす。
ドアを開けようとすると、その手をユチョンが押さえた。
「待って」
そのまま手を引き寄せられ、抱きしめられる。
強く抱き返すと、小さな声が囁いた。
「会いたかった」
お互いに忙しくて、それは確かに素晴らしいことで。
仕事ができるのは本当に有難いことで。
でも、こうして二人になれるのも、本当に久しぶりだった。
「オレもだよ」
答えて身体を離すと、オレたちはどちらからともなくキスをした。
『帰ったら、ヒョンの部屋の方に来て』
オレは手紙を剥がして、ヒョンの部屋に向かう。
何か食べるものあったら嬉しい。
久しぶりに、ジェジュン兄の作ったものが。
合鍵は持っていたが、使ったことは何度もない。
同じ形のはずなのに、何故か少し重く感じて、ゆっくりとドアを開けた。
「ヒョン、入りますよ」
靴を脱いで、廊下を進む。
灯りの落とされたリビングでは、ソファで誰かが寝ていた。
「ジェジュン兄?」
アームレストに乗せられた頭には、大きなヘッドフォンがついている。
「お帰り。遅かったね」
振り向いて返された言葉に、ドキリとした。
「ユチョン」
ユチョンは起き上がって、ヘッドフォンを外した。
「ジェジュン兄は?」
「出かけた。じゃ、お前の部屋に行こうか」
「なんだ、せっかく手料理が食べられるかと思ったのに」
呟いた言葉に、ユチョンは笑う。
「俺じゃ不満なのかよ」
言ってることと顔が合ってないよ。
「手紙、ヒョンの字だったから」
頭をかきながらオレが答えると、ユチョンは大きく伸びをした。
「行きがけに貼ってって貰ったんだ。ジュンスが来ないと、俺帰れなかったから、よかった」
「ここの合鍵、渡されてないの?」
「うん」
ソファの横に置かれたバックを取って立ち上がり、廊下へ向かう。
「ヒョンは俺の部屋の鍵持ってるけど」
「変なの」
言ってみたものの、自分の部屋の鍵は、ジェジュン兄に渡していなかった。
オレがいない時にヒョンだけが入る理由がないからだ。
といっても、ヒョンがいない時にオレが入る理由もないのだが。
今日だって、居ると思って鍵を開けた。
「ねえ、ジュンスの部屋の合鍵ちょうだい」
靴を履きながら、ユチョンが言う。
「どうして」
「今みたいなときに、ジュンスの部屋で待てるように」
ジェジュン兄を煩わせずに。
その方がいいかもしれない。
こんな夜は、きっと滅多にないけど。
「うん、いいよ」
靴を履き終わって身体を起こすと、ユチョンが言った。
「電気消すよ」
玄関の照明が消えて、フットライトが微かに辺りを照らす。
ドアを開けようとすると、その手をユチョンが押さえた。
「待って」
そのまま手を引き寄せられ、抱きしめられる。
強く抱き返すと、小さな声が囁いた。
「会いたかった」
お互いに忙しくて、それは確かに素晴らしいことで。
仕事ができるのは本当に有難いことで。
でも、こうして二人になれるのも、本当に久しぶりだった。
「オレもだよ」
答えて身体を離すと、オレたちはどちらからともなくキスをした。
後ろからハグするならスンリ。
向かい合って抱き合うならテソン。
隣に立って同じものを見るならテヤン。
でも、背中を預けられるのは―――。
*
鞄を投げ捨ててリビングに入り、ソファに座る背中に後ろから抱きついて首許に顔を埋めた。
ため息をつくと、大きな手が頭を撫でる。
「もう動けない」
「うん」
「疲れた」
「うん」
顔を上げると、視線はテレビ画面に向けられたまま。
撫でる手は止まらないが、心はこちらにはない。
「タプ兄」
「うん」
反応のなさに仕方なく立ち上がり、ソファを乗り越えた。
隣に座って肩に寄りかかる。
テレビには映っていたのは、次のアルバムのMVだった。
正確には、MVになる予定の映像だが。
「ラッシュ、見てたんだ」
身体を起こしてあぐらをかき、俺は頬杖をついた。
「うん」
「これ、音、消してるんじゃないよね」
「もともと入ってない。まだ長さが合ってないから」
コンテはカットごとに切られているが、個人ショットは編集次第だ。
数分の映像のために、延べ数百時間を費やす。
贅沢だとは思わないが、ここまで来れたことには感謝したくなる。
「いつ届いたの?」
「ついさっき。ジヨンが帰ってくるちょっと前」
曲よりも長い映像を見終わって、タプ兄はテレビを消した。
「疲れたの?」
「今の見たら、吹き飛んじゃった」
仕事人間だ、と自分でも思う。
今夜はスイッチを切るつもりだったのに。
実際、さっきまでは切れていたのに。
「吹き飛んだんじゃなくて、スイッチ入っただけだろ」
別に、隠せるとは、思ってなかったけど。
「まあね」
片眉を上げて見せ、タプ兄の前に回って膝に乗った。
「タプ兄が切ってよ」
腕が腰に回され、俺は両肩に手をかける。
「切るの?」
忍び笑いを抑えきれず、俺はタプ兄と額を合わせる。
別のスイッチを入れるとも言うけどね。
上目遣いで見つめ合い、数秒の後、俺たちは唇を合わせた。
*
前言撤回。
後ろからハグするのも、
向かい合って抱き合うのも、
隣に立って同じものを見るのも、
もちろん、背中を預けるのも。
やっぱり、あなたがいいや。
向かい合って抱き合うならテソン。
隣に立って同じものを見るならテヤン。
でも、背中を預けられるのは―――。
*
鞄を投げ捨ててリビングに入り、ソファに座る背中に後ろから抱きついて首許に顔を埋めた。
ため息をつくと、大きな手が頭を撫でる。
「もう動けない」
「うん」
「疲れた」
「うん」
顔を上げると、視線はテレビ画面に向けられたまま。
撫でる手は止まらないが、心はこちらにはない。
「タプ兄」
「うん」
反応のなさに仕方なく立ち上がり、ソファを乗り越えた。
隣に座って肩に寄りかかる。
テレビには映っていたのは、次のアルバムのMVだった。
正確には、MVになる予定の映像だが。
「ラッシュ、見てたんだ」
身体を起こしてあぐらをかき、俺は頬杖をついた。
「うん」
「これ、音、消してるんじゃないよね」
「もともと入ってない。まだ長さが合ってないから」
コンテはカットごとに切られているが、個人ショットは編集次第だ。
数分の映像のために、延べ数百時間を費やす。
贅沢だとは思わないが、ここまで来れたことには感謝したくなる。
「いつ届いたの?」
「ついさっき。ジヨンが帰ってくるちょっと前」
曲よりも長い映像を見終わって、タプ兄はテレビを消した。
「疲れたの?」
「今の見たら、吹き飛んじゃった」
仕事人間だ、と自分でも思う。
今夜はスイッチを切るつもりだったのに。
実際、さっきまでは切れていたのに。
「吹き飛んだんじゃなくて、スイッチ入っただけだろ」
別に、隠せるとは、思ってなかったけど。
「まあね」
片眉を上げて見せ、タプ兄の前に回って膝に乗った。
「タプ兄が切ってよ」
腕が腰に回され、俺は両肩に手をかける。
「切るの?」
忍び笑いを抑えきれず、俺はタプ兄と額を合わせる。
別のスイッチを入れるとも言うけどね。
上目遣いで見つめ合い、数秒の後、俺たちは唇を合わせた。
*
前言撤回。
後ろからハグするのも、
向かい合って抱き合うのも、
隣に立って同じものを見るのも、
もちろん、背中を預けるのも。
やっぱり、あなたがいいや。
思わず目を開けて、唇を離した。
「どうして」
尋ねた声が掠れる。
ヒチョルはまっすぐ俺を見た。
「どっちにしたって行くしかないんだ。オレが先だっていいだろ」
「そりゃ、そうだけど」
俺が一番上だといっても、数日しか違わない。
同時にグループを離れるわけにはいかないのも、もちろん分かってはいる。
でも。
「ギリギリまで働けよ、仕事中毒者」
余裕の笑みを浮かべて、再び口付けが始まる。
目を閉じたヒチョルの顔に、違和感を覚える。
どうして。
「ちゃんと答えて」
身体を離して、頬に触れる。
その瞬間、ヒチョルの肩が震えた。
「冷てぇ手」
顔をしかめて、ため息を吐く。
「どうして?」
時間が許す限り仕事をしていたい。
やり残すことがないように。
余裕を持って入隊すれば、あれもできた、これもできた、時間はあったのに、なんて思い返すのは目に見えている。
それにしたって。
全部やって行ったところで、思い悩むのも目に見えているのに。
「だって、見送りたくねえから」
うんざりしたように言って、ヒチョルは唇を近付ける。
「俺を残してくのはいいわけ?」
キスの合間を縫って尋ねる。
「オレは出てくわけじゃない」
じゃあ、結局見送ることになるんじゃないか。
俺と。
イェソンを。
カンインを見送ったように。
「変な気、回すなよ」
「変な気って何の気だよ」
答えの代わりに、舌が絡められて。
分かってるよ。
すぐ戻ってくる、なんて言わない。
そんな、分りきったこと。
「回すなって言ってんのに」
口に出さなくても、お見通しらしい。
思わず口角を上げると、ヒチョルの声が尖った。
「何笑ってんだ」
「感心したんだよ」
今度は自分から舌を舐めた。
願わくは。
応えるヒチョルの腕を掴み、引き寄せる。
願わくは、この部屋で彼が孤独にならないように。
取り残された仔猫のように、独り啼くことがないように。
うん、弟達がいるし、大丈夫だね?
きっと。
今は、もう。
「どうして」
尋ねた声が掠れる。
ヒチョルはまっすぐ俺を見た。
「どっちにしたって行くしかないんだ。オレが先だっていいだろ」
「そりゃ、そうだけど」
俺が一番上だといっても、数日しか違わない。
同時にグループを離れるわけにはいかないのも、もちろん分かってはいる。
でも。
「ギリギリまで働けよ、仕事中毒者」
余裕の笑みを浮かべて、再び口付けが始まる。
目を閉じたヒチョルの顔に、違和感を覚える。
どうして。
「ちゃんと答えて」
身体を離して、頬に触れる。
その瞬間、ヒチョルの肩が震えた。
「冷てぇ手」
顔をしかめて、ため息を吐く。
「どうして?」
時間が許す限り仕事をしていたい。
やり残すことがないように。
余裕を持って入隊すれば、あれもできた、これもできた、時間はあったのに、なんて思い返すのは目に見えている。
それにしたって。
全部やって行ったところで、思い悩むのも目に見えているのに。
「だって、見送りたくねえから」
うんざりしたように言って、ヒチョルは唇を近付ける。
「俺を残してくのはいいわけ?」
キスの合間を縫って尋ねる。
「オレは出てくわけじゃない」
じゃあ、結局見送ることになるんじゃないか。
俺と。
イェソンを。
カンインを見送ったように。
「変な気、回すなよ」
「変な気って何の気だよ」
答えの代わりに、舌が絡められて。
分かってるよ。
すぐ戻ってくる、なんて言わない。
そんな、分りきったこと。
「回すなって言ってんのに」
口に出さなくても、お見通しらしい。
思わず口角を上げると、ヒチョルの声が尖った。
「何笑ってんだ」
「感心したんだよ」
今度は自分から舌を舐めた。
願わくは。
応えるヒチョルの腕を掴み、引き寄せる。
願わくは、この部屋で彼が孤独にならないように。
取り残された仔猫のように、独り啼くことがないように。
うん、弟達がいるし、大丈夫だね?
きっと。
今は、もう。
投票のお願いをしたEat Your Kimchi Awards 2012の結果報告です。
ネタバレになりますが、U-KISSが無事Best Male Kpop Group 2012をとることができました。
ご協力ありがとうございました。
下記プレイリストのPart 2でご覧になれます。
Eat Your Kimchi Awards 2012
BrohohoとかPlotまで含めて女性アーティストだったのはBest Female GroupだけというあたりにEYK視聴者層の偏りを感じたり感じなかったり。
* 追記
けびたんには発表前に知らせてあったようです。(参照→)
ネタバレになりますが、U-KISSが無事Best Male Kpop Group 2012をとることができました。
ご協力ありがとうございました。
下記プレイリストのPart 2でご覧になれます。
Eat Your Kimchi Awards 2012
BrohohoとかPlotまで含めて女性アーティストだったのはBest Female GroupだけというあたりにEYK視聴者層の偏りを感じたり感じなかったり。
* 追記
けびたんには発表前に知らせてあったようです。(参照→)
「チェジュ島のイベント、参加するか分からないんだ」
小さな画面から顔を上げずに、キソプが呟いた。
「まだ調整中みたいだね」
「ジェソプのファンの子がかわいそうじゃない?」
僕の方は見ずに言う。
「来ると思って参加して来なかったら?」
「そう思ってる子もそうだし」
「そう思ってない子も?」
キソプはやっと目を合わせる。
「来ないんだ、って自分に言い聞かせながら、それでも参加してくれる子もきっといる」
視線がどうにも真剣で、僕は少し戸惑った。
そういうファンの細かい心理を想像するタイプではないと思ったのに。
「5ヶ月って言ったのに、ちゃんと待ったのに、約束の期間が過ぎたら、また待ってって言われるのは」
言葉を止めて、顔を伏せる。
「辛いよ」
ああ、きっと辛いだろう。
キソプがそうであるように。
みんなAJに会いたがってる。
「もし参加しなかったらさ」
ふと思いついて、僕は言ってみる。
「たくさんオレンジ買ってさ、ジェソプの写真貼って、みんなで投げつけようよ。なんで居ないんだ!って」
キソプは眉をひそめて僕を見る。
「オレンジがもったいない」
「もちろん持って帰るんだよ。凍らせて? ジェソプのお土産に」
おかしくなって笑い出す僕に、キソプは首を傾げる。
「ぜんぶ食べてもらおう。舌がオレンジなるまで」
ファンの想いの分、キソプの想いの分もぜんぶ。
みんなの想いがAJを染めてしまうまで。
「冷凍オレンジじゃ、お腹壊しそうだね」
まだ怪訝そうなキソプには、受けなかったらしい。
大量の冷凍オレンジを目の前にし、びっくりするAJを想像して、僕はまた笑った。
小さな画面から顔を上げずに、キソプが呟いた。
「まだ調整中みたいだね」
「ジェソプのファンの子がかわいそうじゃない?」
僕の方は見ずに言う。
「来ると思って参加して来なかったら?」
「そう思ってる子もそうだし」
「そう思ってない子も?」
キソプはやっと目を合わせる。
「来ないんだ、って自分に言い聞かせながら、それでも参加してくれる子もきっといる」
視線がどうにも真剣で、僕は少し戸惑った。
そういうファンの細かい心理を想像するタイプではないと思ったのに。
「5ヶ月って言ったのに、ちゃんと待ったのに、約束の期間が過ぎたら、また待ってって言われるのは」
言葉を止めて、顔を伏せる。
「辛いよ」
ああ、きっと辛いだろう。
キソプがそうであるように。
みんなAJに会いたがってる。
「もし参加しなかったらさ」
ふと思いついて、僕は言ってみる。
「たくさんオレンジ買ってさ、ジェソプの写真貼って、みんなで投げつけようよ。なんで居ないんだ!って」
キソプは眉をひそめて僕を見る。
「オレンジがもったいない」
「もちろん持って帰るんだよ。凍らせて? ジェソプのお土産に」
おかしくなって笑い出す僕に、キソプは首を傾げる。
「ぜんぶ食べてもらおう。舌がオレンジなるまで」
ファンの想いの分、キソプの想いの分もぜんぶ。
みんなの想いがAJを染めてしまうまで。
「冷凍オレンジじゃ、お腹壊しそうだね」
まだ怪訝そうなキソプには、受けなかったらしい。
大量の冷凍オレンジを目の前にし、びっくりするAJを想像して、僕はまた笑った。
きっかけはなんだったか、もう分からない。
ケビンに何かを注意したら、反応がいまいち鈍くて、それを突っ込んだら、黙ってそっぽを向かれた。
そこから先は、ひどいものだった。
「ちゃんと聞けよ」
「聞いてるよ」
「そんな投げ遣りな言い方で聞いてるわけないだろ」
「聞いてるって」
「態度悪いぞ」
「分かったよ。ごめん」
「謝れって言ってるんじゃない、ちゃんと聞けって――」
「だから聞いてるってば」
「おい!」
言葉を遮られ、思わず声を荒げたところで、フンとキソプが止めに入った。
「スヒョン兄、一旦待って」
フンに押し止められ、数歩下がる。
引き離されたケビンは、キソプと共に部屋の反対側へ下がる。
その姿を目で追って、ドンホが視界に入った。
イライに肩を抱かれながら、硬い表情でケビンを見ている。
「悪い」
自分の失態に思い至って、俺はため息を吐いた。
ケビンがきっかけだったとしても、上手く叱れなかったのは俺だ。
結果、空気を悪くしてしまった。
ドンホに心配をさせるほどに。
フンは肩を竦めて、俺の背中を叩いた。
「落ち着いた?」
「ああ」
「お疲れ様、リーダー」
笑顔を見せ、フンは視線をケビンへ向ける。
キソプが、今の態度はないよ、と諭している。
しかし、顔は伏せられたままで反応は薄い。
「二人で話してくるよ」
「二人で?」
俺が言うと、フンが不安気に聞き返す。
口角を上げて見せて、今度は俺がフンの背中を叩いた。
「大丈夫」
怒りは収まった。
本当はちょっとだけ燻っているけど、もう気にならない。
それより、この部屋からケビンを連れ出したかった。
「ケビン」
ケビンに近付いて声をかけると、キソプだけが振り返る。
キソプは俺を見てからフンの方を見て、ケビンから体を離した。
「出よう」
ケビンの返事は聞かずに背を向けた。
通り抜けざまにドンホの頭を撫でて、部屋を出る。
どこがいいか。
邪魔が入らないところ。
確か、フロアの奥に非常階段がある。
その前にスペースがあったはず。
後ろは見ずに廊下を進む。
静かについて来る足音に耳を澄ませて、ゆっくりと歩く。
非常階段に着くと、ひとつ深呼吸をしてから振り返った。
頭冷やせ、じゃなくって、なに考えてんだ、じゃなくて。
責める言葉ではなくて、叱る言葉でもなくて。
「何かあったのか?」
できるだけ穏やかな声を出して、真顔のケビンを見た。
虚ろだった目が僅かに細められて、探るような視線が向けられる。
「何もないよ」
きっぱりと返された言葉に、じゃあどうして、とは聞かなかった。
今ここでそれを始めたら、きっと長くなる。
それにケビンは頑固だから、言わないと決めたら口を割ることはないだろう。
代わりに、笑顔を作る。
「ならいいんだ。さっきは俺も言い過ぎた。仲直りしよう」
そう言って、ケビンの身体を引き寄せる。
抵抗するかと思ったが、あっさりと腕の中に収まった。
強くハグして、上半身だけ離し顔を見ると、変わらず怪訝そうなままだった。
「笑えよ」
「スヒョン兄こそ、何かあったの?」
「なんで」
「優しいなんて、珍しい」
ムッとして思わず顔をしかめると、ケビンが笑顔になった。
「人を怒らせて笑うなんて、悪趣味だぞ」
「ごめんなさい」
いつものようなキャッキャした笑い声に、胸を撫で下ろす。
他のメンバーだったら(それがドンホ以外なら)もっと厳しく言うところだ。
それでも、普段は手のかからないケビンの反抗には、心配が先に立った。
何もないとは信じられないが、差し当たって原状回復を優先すべきだろう。
俺は顔を傾けながら近付けた。
「仲直りのキス」
「やだ」
首を振って身体を引くケビンに、頬を向ける。
「じゃあこっち」
えー、と不満気な声を出しながら、それでもケビンは唇を寄せる。
近付いてくるタイミングを見計らって、正面に顔を戻しキスをした。
チュっと音を立て、唇はほとんど触れなかったが。
顔を離すと、頬から耳まで赤くしたケビンが居た。
「やめてよ!」
声を裏返し、腕の中から逃げ出す。
とっさに片方の掌をを捕まえ、そのまま手を握った。
「もう戻るよ」
そう宣言して振り向かずに廊下を進むケビンは、しかし、手を振り解こうとはしない。
引っ張られて後ろを歩きながら、部屋に戻ったら、何があったのか勘ぐられるだろうな、と思った。
ケビンに何かを注意したら、反応がいまいち鈍くて、それを突っ込んだら、黙ってそっぽを向かれた。
そこから先は、ひどいものだった。
「ちゃんと聞けよ」
「聞いてるよ」
「そんな投げ遣りな言い方で聞いてるわけないだろ」
「聞いてるって」
「態度悪いぞ」
「分かったよ。ごめん」
「謝れって言ってるんじゃない、ちゃんと聞けって――」
「だから聞いてるってば」
「おい!」
言葉を遮られ、思わず声を荒げたところで、フンとキソプが止めに入った。
「スヒョン兄、一旦待って」
フンに押し止められ、数歩下がる。
引き離されたケビンは、キソプと共に部屋の反対側へ下がる。
その姿を目で追って、ドンホが視界に入った。
イライに肩を抱かれながら、硬い表情でケビンを見ている。
「悪い」
自分の失態に思い至って、俺はため息を吐いた。
ケビンがきっかけだったとしても、上手く叱れなかったのは俺だ。
結果、空気を悪くしてしまった。
ドンホに心配をさせるほどに。
フンは肩を竦めて、俺の背中を叩いた。
「落ち着いた?」
「ああ」
「お疲れ様、リーダー」
笑顔を見せ、フンは視線をケビンへ向ける。
キソプが、今の態度はないよ、と諭している。
しかし、顔は伏せられたままで反応は薄い。
「二人で話してくるよ」
「二人で?」
俺が言うと、フンが不安気に聞き返す。
口角を上げて見せて、今度は俺がフンの背中を叩いた。
「大丈夫」
怒りは収まった。
本当はちょっとだけ燻っているけど、もう気にならない。
それより、この部屋からケビンを連れ出したかった。
「ケビン」
ケビンに近付いて声をかけると、キソプだけが振り返る。
キソプは俺を見てからフンの方を見て、ケビンから体を離した。
「出よう」
ケビンの返事は聞かずに背を向けた。
通り抜けざまにドンホの頭を撫でて、部屋を出る。
どこがいいか。
邪魔が入らないところ。
確か、フロアの奥に非常階段がある。
その前にスペースがあったはず。
後ろは見ずに廊下を進む。
静かについて来る足音に耳を澄ませて、ゆっくりと歩く。
非常階段に着くと、ひとつ深呼吸をしてから振り返った。
頭冷やせ、じゃなくって、なに考えてんだ、じゃなくて。
責める言葉ではなくて、叱る言葉でもなくて。
「何かあったのか?」
できるだけ穏やかな声を出して、真顔のケビンを見た。
虚ろだった目が僅かに細められて、探るような視線が向けられる。
「何もないよ」
きっぱりと返された言葉に、じゃあどうして、とは聞かなかった。
今ここでそれを始めたら、きっと長くなる。
それにケビンは頑固だから、言わないと決めたら口を割ることはないだろう。
代わりに、笑顔を作る。
「ならいいんだ。さっきは俺も言い過ぎた。仲直りしよう」
そう言って、ケビンの身体を引き寄せる。
抵抗するかと思ったが、あっさりと腕の中に収まった。
強くハグして、上半身だけ離し顔を見ると、変わらず怪訝そうなままだった。
「笑えよ」
「スヒョン兄こそ、何かあったの?」
「なんで」
「優しいなんて、珍しい」
ムッとして思わず顔をしかめると、ケビンが笑顔になった。
「人を怒らせて笑うなんて、悪趣味だぞ」
「ごめんなさい」
いつものようなキャッキャした笑い声に、胸を撫で下ろす。
他のメンバーだったら(それがドンホ以外なら)もっと厳しく言うところだ。
それでも、普段は手のかからないケビンの反抗には、心配が先に立った。
何もないとは信じられないが、差し当たって原状回復を優先すべきだろう。
俺は顔を傾けながら近付けた。
「仲直りのキス」
「やだ」
首を振って身体を引くケビンに、頬を向ける。
「じゃあこっち」
えー、と不満気な声を出しながら、それでもケビンは唇を寄せる。
近付いてくるタイミングを見計らって、正面に顔を戻しキスをした。
チュっと音を立て、唇はほとんど触れなかったが。
顔を離すと、頬から耳まで赤くしたケビンが居た。
「やめてよ!」
声を裏返し、腕の中から逃げ出す。
とっさに片方の掌をを捕まえ、そのまま手を握った。
「もう戻るよ」
そう宣言して振り向かずに廊下を進むケビンは、しかし、手を振り解こうとはしない。
引っ張られて後ろを歩きながら、部屋に戻ったら、何があったのか勘ぐられるだろうな、と思った。
頬へのキスをねだっておいて、相手が近付いてきたところで、自分が振り向いて唇にキスをする。
というのは、はじめから唇へのキスをねだってもしてくれない相手に使う手ですが。
SHがKEにやって怒られたらいいと思うの。
DHにはするなよ。
というのは、はじめから唇へのキスをねだってもしてくれない相手に使う手ですが。
SHがKEにやって怒られたらいいと思うの。
DHにはするなよ。
真正面から目を覆われそうになって、思わず身体を引いた。
「何?」
掌の横から覗き込むと、AJは驚いた顔をしていた。
といっても、眉を少し上げただけで、ばっと見では分からないだろう。
「何って」
分かるだろう、と言わんばかりにAJは僕を見る。
「何?」
僕が繰り返すと、AJは手を下ろして、目を伏せた。
「まあ、別にいいけど」
ポケットからスマホを取り出し、弄り始める。
下から顔を覗き込み、僕はまた尋ねる。
「何が?」
こういうしつこさは、どちらかというとAJの方が得意なのだけど。
「なんでもないよ」
「なんでもないはずないだろ」
AJはちらりと僕を見て、身体を背けた。
「ジェソプ」
僕はその背中に抱きついて食い下がる。
「もういいって」
だから、何がもういいのかって。
そこを聞いているのに。
ため息を吐くと、AJが肩越しに振り返った。
チュッ。
「え?」
突然触れた唇に、思わず声が出る。
「キスしようとしただけだよ」
目の前の、AJの大きな目が僕を見ていた。
そういえば、キスするときには、必ず目を閉じていた気がする。
今回もそのつもりだったのだろう。
「見られてたら、照れるだろ」
AJは正面を向いて(つまり僕から顔を背けて)言い足す。
僕はAJの身体をぎゅっと抱いて、その肩に顔を伏せた。
自分でも赤くなっているのが分かるくらいに、僕の耳は熱くなっていた。
「何?」
掌の横から覗き込むと、AJは驚いた顔をしていた。
といっても、眉を少し上げただけで、ばっと見では分からないだろう。
「何って」
分かるだろう、と言わんばかりにAJは僕を見る。
「何?」
僕が繰り返すと、AJは手を下ろして、目を伏せた。
「まあ、別にいいけど」
ポケットからスマホを取り出し、弄り始める。
下から顔を覗き込み、僕はまた尋ねる。
「何が?」
こういうしつこさは、どちらかというとAJの方が得意なのだけど。
「なんでもないよ」
「なんでもないはずないだろ」
AJはちらりと僕を見て、身体を背けた。
「ジェソプ」
僕はその背中に抱きついて食い下がる。
「もういいって」
だから、何がもういいのかって。
そこを聞いているのに。
ため息を吐くと、AJが肩越しに振り返った。
チュッ。
「え?」
突然触れた唇に、思わず声が出る。
「キスしようとしただけだよ」
目の前の、AJの大きな目が僕を見ていた。
そういえば、キスするときには、必ず目を閉じていた気がする。
今回もそのつもりだったのだろう。
「見られてたら、照れるだろ」
AJは正面を向いて(つまり僕から顔を背けて)言い足す。
僕はAJの身体をぎゅっと抱いて、その肩に顔を伏せた。
自分でも赤くなっているのが分かるくらいに、僕の耳は熱くなっていた。