Shudder Log -17ページ目

Shudder Log

* このブログの内容はすべてフィクションであり、実在の人物や団体とは一切関係ありません。

KSは大学3年生。大学の近くのコンビニでバイト中。
最近、写真サークルに新入生DHが入ってきた。
DHは家が近所で、コンビニの常連客でもあった。
KSはDHの参加を喜び、サークルの外でも交流を深めていくが…。
 
部屋とかじゃなくても、会話を録音されてたら結構アレだよね、というワンアイデア。
写真は本人の許可を得て撮るギャップ。
DH視点で、今回はKSの一人称が俺です。
 
 * ストーカーネタ注意。
 
 
 ***
 
 
広い中庭の真ん中には、大きな木が立っている。
その下のベンチに、彼が座っているのが見えた。
僕はバッグパックのポケットを探って、レコーダーのスイッチを入れた。
 
近付いていくと、彼は僕に気付いて手を振った。
 
「ドンホ!」
 
花が咲くような笑顔に、自分の胸が強く打つのが分かる。
名前だけで呼んでくれるようになったのは、もう1ヶ月も前のことなのに。
 
「キソプ兄さん、これから講義ですか?」
「うん。ドンホも?」
 
兄さん、と呼ぶようになってからも一月は経つ。
けれどまだ、口にするたびに心臓が飛び出るようだった。
 
「教授がお休みで空いちゃったんです。だから、この間の写真を確認しようかなって」
 
僕が肩を竦めると、彼は口角をさらに上げた。
 
「そっか。じゃあ部室にいるね? 迎えに行くよ。お昼は外で食べよう」
「わかりました」
「次の講義、ケビンも一緒だから」
 
最後の一言に、背筋がすっと寒くなる。
彼は立ち上がり、鞄を手に持って大きく伸びをした。
 
「じゃ、また後で」
「はい」
 
講義へ向かう彼の背中が建物の中に消えるのを待って、僕はバックパックに手を突っ込む。
レコーダーを手探りで止めて、ショルダーベルトの見えない位置につけたマイクも念のため確認した。
よし、問題ない。
部室へ行ったら、一応聞きなおそう。
そしたらデータを家のサーバーに送ってしまって、端末をクリーンにする。
ケビン先輩の名前が出たのは気に入らないけど、笑顔は極上だった。
今日は13日。
僕が彼に恋をした記念日だ。
 
家の近くの公園で初めて見て、そして翌週コンビニで再会を果たした―――あの5月から、もうすぐ2年。
撮りためた写真も、録りためた会話も、多いようで、まだまだ足りない。
コンビニに通い、同じ大学に進み、同じサークルに入って、彼が僕を「弟」と呼んでくれるようになっても。
近付けば近付くほど、深みには落ちていくようだ。
 
僕は歩き始め、空を見上げる。
芽吹き始めた木々から、陽の光が零れていた。
何か理由をつけて、後で写真を撮ろう。
彼はどの季節だって似合うけど、春は光がいい。
せっかくの月記念日だけど、まあ3人でも構わない。
ケビン先輩は最近、僕のことを警戒しているようだから…。
意味もなく頭を振って、僕はバックパックを背負いなおす。
それから深呼吸して、部室のある棟を目指した。

左が2012年、右が2008年。
couples 
撮影時期にものすごく差があって、たぶんこれを作った人は、左を見て右を頑張って探したんだろうなあ、と。
 
 

HVSnSJL 
 2人ならだいたいあるけど、3人ってなかなか難しいね。
 
 hoonvinseop 
 
Hoonvinseopはともかく、Soojaeliだけってのが少ないので。
 soojaeli
 
 
グループ違いの2人も大変だっただろうな。

初めから少ないのではなくて。
聞こえるはずの声が聞こえてこないというのは、やっぱり、なんだか。
 
 *
 
運転席に乗り込んで助手席に鞄を置くと、中に光が見えた。
さっきは確認したときには何もなかったはずなのに。
僕はドアを閉めてから、光の元であるスマートフォンを鞄から出す。
つい数分前に電話の着信。
歩いていて気付かなかったらしい。
発信元は ―――。
 
僕は一呼吸置いて、発信ボタンを叩いた。
 
『もしもし』
「もしもし、ジェソプ?」
『フンミン?』
 
少しだけ怪訝そうな声。
 
「今、平気? ごめん、さっき出れなくて」
『別に、大した用じゃないし』
 
後ろに聞こえるのは、車の走る音。
外にいるのだろうか。
 
「お帰り。ジャカルタはどうだった?」
『なんか、話がうまく通ってなくて』
「いろいろあったみたいだね。楽しめた?」
 
疲れているように思えて、努めて気軽に尋ねれば。
 
『良いパフォーマンスはできたと思う』
 
真剣な言葉が返ってきた。
 
「僕の分までありがとう」
 
丁寧に言ったら、やっと力の抜けた声が返された。
 
『あー本当だよ。ソロある曲はやれないし、Somedayだって』
 
大きく息を吐く音。
きっと呆れたような困ったような顔をしてる。
まあ、お互い見られているわけじゃないし。
僕が笑顔になってるのも、きっとAJは気づいてる。
 
「ジェソプがいない間は僕が頑張ったんだよ」
『うん、感謝してる』
「ならいいけどさ」
 
拗ねた振りをしたって、装えるのは言葉だけだ。
 
『そっちはどうだったの?』
「うん。今日もなんとか」
『なんとか?』
 
今度は明らかに怪訝そうな声。
 
「やっぱり演技は難しいね。感情を作るのも、それを他の人とのやりとりでやるのも。舞台だと、やり直しもできないし」
 
肩を竦めながら、素直に答える。
もっとも、ジェスチャーはAJには伝わっていないだろう。
 
『そっか』
「うん。でも、それが楽しいんだ」
『そう』
「うん」
 
会話が途切れて、電話の向こうで考え込むAJの姿が見えた気がした。
 
『今、どこにいるの?』
「劇場の駐車場。ちょうど帰るところだったんだ」
 
沈黙の中に逡巡する気配。
 
 
――― これから会えない?
 
予想した言葉は聞こえてこなかった。
 
『そう。気をつけて帰って』
「うん、ジェソプもね」
『え、俺?』
 
AJはちょっとだけ慌てたようだった。
 
「外にいると思ったんだけど、違った?」
『あー、そうだね、まあ一応』
 
歯切れの悪い反応に、僕は尋ねる。
 
「今、どこにいるの?」
 
また逡巡。
僕が促すと、やっと答える。
 
「ジェソプ?」
『千戸大橋』
「え? すぐ近くじゃない」
 
黙り込んだAJはきっと、うまい返し方を考えてる。
僕は笑いそうになるのをこらえた。
 
「橋の上じゃないよね。東側の公園?」
『ああ、そうだけど』
「すぐ着くよ。待ってて」
 
AJはまた黙ってしまって、僕は、後で、と言って電話を切った。
シートベルトを締めて、エンジンをかける。
 
今日の公演は悪くなかった。
ジャカルタのショーケースは、まあ、万事順調とはいかないこともある。
それでも、できることをするしかない。
 
車はすっかり暗くなった道を滑り出す。
 
悪くない。
橋を渡ったら、車を止めて。
そうだな、広津橋でも少し歩いて。
ああ、でもその前に抱きしめて、不在を補ってくれたことを労わなきゃ。
 
 *
 
スマートフォンをしまって、俺は車にもたれた。
忙しければ、気にならなかっただろうけど。
妙に早く解放されて、時間を潰して、気を紛らわせようとしてみても、気がつけば。
 
まあ、悪くない、かな。
思い通りにならないこともあるけど、できることをやっていれば、きっと。
でも今日は、長い間の穴を埋めてくれたことを改めて感謝しよう。
 
暗い空の下で流れる車のライトを眺めながら、見分けられるはずもないフンの車を見つけたくなって、俺は目を凝らした。
受け取ったRWの顔が引きつったのは言うまでもなく。
帰国後にSMの方が埋め合わせする羽目になったりとか。
Wonmin←KHかKH→Wonmin前提だったりするといいかも。
あるいはRW→Wonmin←KHか。
Wonmin←KH←RWか?
続きは無い。
 
 ***
 
 
送信者:ソンミン
本文:
このメッセージはシウォンが書いています。
ソンミン兄さんは少し疲れているみたいで、もう休むそうです。
俺もこっちに残るので、みんなで楽しんでください。
明日にでも話を聞かせてね。
 
それから、キュヒョンとヒョクチェを少しだけ引き止めてくれると嬉しいです。
 
愛するリョウクへ
Have a good time, and good night!
シウォンより

玄関のドアが開く音がして目が覚めた。
ダイニングの電気はついたままで、ソンミンは思わず手をかざした。
何度か瞬きして、椅子から立ち上がり玄関へ向かう。
枕にしていた腕が少し痛い。
 
「戻りました」
 
ソンミンは目を擦りながら、シウォンを迎える。
靴を脱いで部屋に入る紳士は、一人での仕事を終え、今日も最後の帰還となった。
 
「ソンミン兄さんだけですか?」
「うん」
「他の二人は?」
「ドンヘたちの部屋に行ってる」
 
ぼんやりと答えると、シウォンは笑顔になって言った。
 
「俺を待っててくれたんですか?」
 
そうだ、と答えてしまえば良いのだろうが。
残念ながらソンミンは感情を隠すことが得意ではない。
 
「あ、いや、別に」
 
気のない返事が照れ隠しでもなんでもないことは明らかだった。
シウォンは気にした様子もなく、軽く言葉を返す。
 
「なんだ、残念」
 
ダイニングに戻ると、ひとつだけ引かれた椅子に気付いたらしい。
 
「ここで寝てたんですか」
「ちょっとだけね」
 
ソンミンの答えに、シウォンは大げさに眉根を寄せた。
 
「うたた寝なんてしたら風邪を引きますよ」
「気をつけるよ」
 
言われてみれば、頭が重い気がした。
何気なく頬に手を当てると、大きな掌がソンミンの額を覆った。
 
「顔が赤いですよ」
 
覗き込むシウォンの真剣な眼差しに、かえって顔が熱くなる。
 
「寝てたせいかな」
 
顔を背けると、テーブルの上で着信を知らせる光が点滅していた。
シウォンから逃げるように身体を離して、ソンミンはスマートフォンを手に取る。
届いていたメッセージを確認すると、これも弟の一人からだった。
 
「リョウクからだ」
 
リョウクはソンミンも来ると思っていたらしい。
問うて曰く、来ないのか、体調が悪いのか、シウォンは帰ったか。
ついでに、ウニョクとキュヒョンは何も知らない、という愚痴。
 
「何て?」
「僕は来ないのかって」
 
シウォンはテーブルに鞄を置き、返信を作るソンミンを眺めている。
 
「シウォンは行ってきたら?」
「兄さんは?」
「僕は行かない」
 
素っ気無い態度に、シウォンは苦笑する。
 
「病人は置いていけませんよ」
「病人じゃないし」
 
ソンミンは無意識に唇を尖らせた。
結局、自分は行かないこと、シウォンが帰ってきたことだけを書いて、リョウクに送る。
 
「もう休みますか?」
 
気遣う言葉を、何故か素直に受け止められずに、ソンミンはシウォンを見る。
 
「もう休んでくださいね」
 
睨むような視線を受けたシウォンはしかし、余裕の笑顔だった。
ソンミンは目を逸らし、ため息をつく。
 
「休むって言ってくれないと、担いで連れて行きますよ」
 
数秒の沈黙の後、ソンミンは小さな声で答える。
 
「もう寝る」
「そうなさってください」
 
スマートフォンが光って、(おそらくリョウクからの返信の)着信を告げる。
ソンミンはそれをシウォンに差し出した。
 
「リョウクに返事しておいて」
 
受け取ったシウォンは、驚きながらスマートフォンとソンミンを交互に見た。
 
「分かりました」
 
ソンミンは自室へと足を向け、シウォンも後に続く。
部屋に入り、ソンミンは振り返ってドアに手をかける。
 
「俺も部屋にいますから、何かあったら呼んでください」
「分かった」
 
俯いて頷くと、ふと視界が暗くなる。
シウォンはソンミンを抱きしめて、吸い込まれるような声で囁いた。
 
「おやすみなさい」
 
何故か涙が出そうになるのを堪えて、ソンミンも挨拶を返す。
 
「おやすみ」
 
腕が緩められると、ソンミンはシウォンを見上げた。
潤んだ目を開いたままのソンミンに、シウォンはキスを与える。
再び強く抱きしめられながら、ソンミンは目を閉じて、瞼の裏に甘いキスを焼き付けた。

イヤフォンはつけていたが、プレイヤーが動いている気配なかった。
外に流れる景色に目を向けてはいるが、きっと眺めているわけでもないのだろう。
窓に映った顔は、強ばっているように見えた。
 
「緊張する?」
 
声をかけると、AJはほとんど表情を変えずに僕を見た。
 
「緊張してる」
 
いつもより固い声で、その言葉が本当だと分かる。
僕は笑顔を作って、明るく言った。
 
「大丈夫だよ。リハーサルもうまくいったじゃない」
「リハーサルでうまくやれてなかったら、この程度で済んでないよ」
 
少し息を吐いて、AJは目を逸らす。
 
「客層も全然違うし」
 
違うといったって、客席をノせなきゃいけないわけじゃない。
本業じゃないからやりにくいという部分も、もちろんあるけれど。
初めてランウェイに立つときに言われたことを、僕はふと思い出す。
 
「お客さんが見てるのは、服だから」
 
AJはやっと笑顔を見せる。
 
「確かに」
 
座席に深くもたれなおし、腕を組む。
僕はその腕に手を置いた。
 
「ジェソプはそのままで格好良いんだから、ただ歩けばいいんだよ」
 
そう言うと、AJが驚いたように眉をあげて僕を見る。
 
「キソプ」
「ん?」
 
組まれた腕が解かれて、僕の肩に回される。
引き寄せられた耳元に、AJが唇を寄せる。
 
「ありがとう。キソプもね」
 
運転席には見えない位置で、頬に口付ける音。
一度強く抱きしめられてから、身体が離される。
 
「ジェソプ」
「何?」
 
AJは涼しい顔で、やっとプレイヤーのスイッチを入れる。
僕の顔は、きっと赤くなってる。
 
「今のは、ズルいよ」
 
声を低くして抗議すると。
 
「どっちが」
 
いつものように口角をあげて、AJがニヤリと笑った。

ヒョクちゃんとジュンちゃんはエセム中学に通う幼馴染み。
ある日二人は、一学年上に転校してきたミンくんと仲良くなる。
優しく物静かながらも芯の強いミンくんに、ヒョクちゃんはだんだんと惹かれていき…。
 
タイトル落ちHyukminで学園パラレル。
SMはEHより練習期間が一年短いらしいので。
ヒョクちゃんとジュンちゃんは女子です。
気付くと、ドンホは助手席で眠っていた。
可愛い、と呼ぶにふさわしいその顔が、いつもより更に幼く見える。
ふらふらとその頭は揺れていて、ときどき窓にぶつかりそうになっている。
起こさないように、俺は穏やかな運転を心がける。
何度目かの信号で停車し、寝息が聞こえないかと耳をすませたとき、ゴン、と鈍い音がした。
 
頭をぶつけた末っ子は、開ききらない目をぱちくりとさせた。
 
「良く寝れた?」
 
信号が変わり、静かに車を発進させる。
 
「ごめん、寝てた」
「別にいいよ」
 
心なしか頬が上気しているように見えた。
 
「暑い?」
「暑くはないけど」
 
ドンホは髪をかき上げて、窓に額を押し当てた。
春とはいえ、夜の外気は充分に冷たい。
 
「もうすぐ着くから」
「うん。ありがとう」
 
しばらくして窓から離れると、ドンホの額には丸く跡がついていた。
俺が思わず笑うと、不思議そうに眉を寄せる。
 
「鏡、見てみて」
 
ドンホは身体を伸ばしたが、バックミラーには届かない。
 
「ダメだ」
「窓でも見えるんじゃない」
「そうか」
 
右を向き、窓に映った自分を見て、ドンホは声をあげる。
 
「うわぁ、かっこ悪い」
 
その言葉に、俺はまた笑顔になる。
格好は悪いが、可愛らしい。
額を擦って跡を消そうとする姿も。
すっかり目が覚めて、元気になった様子も。
 
「笑わないでよ」
「ごめん」
 
口ではそう言ったが、内心はお見通しだろう。
浮かぶ笑みは殺さずに、俺はハンドルを切る。
 
「危ないから前見て運転して」
「分かった」
 
クールな声でドンホは言う。
素直に返事をして、俺は頷く。
次の交差点は、交通量が多くてちょっと注意が必要だ。
そこを曲がってしまえば、ドンホの家まではもう5分もかからない。
 
「ヒョン」
「うん?」
「送ってくれてありがとう」
 
少し気の早いお礼に、かしこまって答える。
 
「どういたしまして」
 
言われた通りに前を向いたまま、ドンホは視界の端だけで捕らえる。
どうやら、俺が自分の方を 見ないことを確認したかったらしい。
 
シートベルトを外す音がした次の瞬間、頬にやわらかな唇が触れた。

 君じゃなきゃダメだと思った?
 君のためなら何だってすると思った?
 それとも愛じゃなかった?
 君しか愛せないと思ったの?
 
 賢いのは知ってるけど思い上がらないで
 僕の気持ちなんて死んだってわからないくせに
 なに見てるんだよ 傲慢な君なんていらない
 情けない馬鹿はもう終わりにするんだ
 
 Okay, it's okay
 君がいなくたって大丈夫
 偉そうにしないで
 惨めな生き方はやめて
 Okay, it's okay, okay it's okay

 
O.Kは、彼女にフられて全然大丈夫じゃない男の子が強がってる歌だと思うのですが。
学園パラレルでKS→JSでどうか。
KSが外で遊ぶのを嫌がった(けど自分は遊んじゃう)JSとか。

「顔色悪いね」
 
メイクの終わった俺を見て、ドンホは気持ち悪そうに呟いた。
 
「精悍の間違いだろ?」
「不健康そう」
「酷い言い方だな」
 
苦笑いすると、ドンホも笑った。
 
「シェーディングのせいだね。男らしくてカッコいいよ」
 
とってつけたように言ってくれなくていいから。
とは口に出さず、俺はポーズを取る。
 
「だろ?」
「おーカッコイイ」
 
ドンホはドンホで、どちらかというと男らしく見える化粧をされている。
それでも笑えば可愛い末っ子、のはずなのだが。
 
「顔色悪いね」
「僕と同じこと言ってる」
 
ドンホは笑って見せて、肩をすくめた。
 
「調子どう?」
 
そう尋ねれば。
 
「大丈夫」
 
全然大丈夫そうじゃない顔で答える。
 
「ヒョンこそ、風邪大丈夫?」
「俺はただの風邪だから」
 
韓国で活動できることは嬉しい。
けれど、目に見えて負担のかかっているドンホの姿には、やっぱり少し胸が痛む。
 
「ドンホも一緒に身体鍛えようよ」
 
身体を動かして体力をつけて、少しでも体調を崩さずに済むように。
 
「キソプ兄たちと一緒に? やだよ」
「運動神経はあるんだからもったいないよ」
 
嫌そうな顔をして、あしらうように鼻で笑う。
 
「運動神経はあるから、見せるための筋肉はいりません」
 
俺が黙ると、ドンホは目だけでちらりとこちらを見た。
気まずそうに背を向け、パソコンの画面に向かう。
きっと心配の色を読み取ったのだろう。
 
「代われたらいいのに」
 
小さく呟いて、俺はため息を吐いた。
仕事を代われないなら、せめて体調だけでも。
肩代わりしてやれたらいいのに。
 
「僕でよかったよ」
「え?」
 
言葉が返されるとは思っていなかった俺は思わず聞き返す。
 
「調子悪くなったの、僕でよかったよ」
「どうして」
 
画面では、どうやらゲームが立ち上がっていて。
けれど、ドンホの手は動いていなかった。
 
「フンミン兄、風邪で辛そうだし」
「ドンホの比べたら大したことないよ」
「だったら、なおさら」
 
少しずつドンホの声が小さくなっていく。
 
「ヒョンが辛そうなの、見てるほうが辛い」
 
数秒の沈黙の後、ドンホは画面に向き直る。
手を止めた分の時間を取り戻すように、叩かれたキーが音を立てる。
 
「ありがとう」
 
お礼を返すのは、間違っている気がする。
でも、謝るのも違う気がした。
 
心配させてごめん。
 
そう言えば、その言葉はそのままドンホにも返ってしまう。
辛そうなドンホを見て、俺たちが心を痛めているのも当然知っているだろう。
 
「早くよくなってね」
 
自分に返ることが分かっている言葉を、それでもドンホは言ってくれる。
 
「わかった」
 
できるだけ明るく返事をして、俺は立ち上がりドンホに近付く。
後ろから抱きしめると、末っ子は腕を振りほどこうと肩をすくめた。
 
「今大事なところだからやめて」
 
気にせずに力を込めて、俺はドンホの髪にキスをした。
 
「愛してるよ」
「知ってるよ」
 
ぞんざいな返事の次にあがったのは、ゲームオーバーを告げる効果音だった。
 
「あーあ、ヒョンのせいで」
 
振り向いたドンホは俺を睨み、俺はドンホの赤くなった耳にもう一度キスをした。