キソプは目を逸らして、溜め息をついた。
「スヒョン兄のキス癖がフンミンにもうつったの?」
僕は少し驚いて聞き返す。
「嫌だった?」
視線を合わせずに、キソプは答える。
「びっくりした」
不満げなその様子に、不満を感じたのは僕。
「お祝いのキスだよ」
隣からその顔を覗きこむ。
「嫌だったなら、もうしないよ」
「嫌なわけじゃないけど」
やっとキソプは僕を見る。
「人前ですることないだろ」
唇を尖らせて、小さな声で呟く。
「だって、カップケーキ」
「本当にスヒョン兄みたい」
僕の言葉を遮って、キソプはまた溜め息をついた。
そりゃ、クリームを舐め取ったのはスヒョン兄の真似だけど。
「スヒョン兄の真似しておいたら間違いないから」
キソプの肩に腕を回して、僕は笑ってみせる。
「あのケーキ、美味しかったね」
「うん。ケーキは、美味しかった」
口を開こうとして、思いついた言葉を飲み込む。
「何?」
「なんでもない」
僕にとってはケーキより、なんて。
とても言えない。
キソプならきっと言えるのだろうけど。
「17日も美味しいケーキ食べたい」
やっと力を抜いたキソプに、僕はほっとして答える。
「期待しておいて」
唯一の1月生まれであるキソプの誕生日が、いつも1年の口火を切る。
旧正月はまだだけど、2014年は始まっている。
「いい年になりますように」
僕はキソプを抱きしめる。
「ありがとう」
抱き返す腕に耳が熱くなるのが分かる。
それから僕らは、クリームを挟まずにキスをした。