確かに、朝からご機嫌な様子だった。
『電車も久しぶりだね』
野球を見に行きたい、という話は前からしていて。
「向こうでもなかなか乗らないしね」
実現することになった時点で、かなり喜んではいた。
『応援グッズ何があるかな』
準備をばっちり整えて、そわそわしながら部屋の中を跳ね回る。
「うーん、帽子とか?」
ドンホは立ち止まり、俺の顔を見た。
『ペンライトとかないよね』
コンサートじゃないのに?
「ナイトゲームだけど、客席も明るいと思うよ」
そう答えたところで、マネージャ兄から、出るぞ、と声がかかる。
『はーい』
元気よく返事をして、ドンホは真っ先に玄関を飛び出していく。
鍵をかけるマネージャ兄をおいて、俺は早足でその後に続く。
すぐに追いついて、歩みを緩めた俺の左手の中に、ドンホの右手が滑り込んできた。
俺はその手をしっかり握りながら、自分の頬が緩むのを感じた。